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安田菜津紀の写真日記

2018年3月9日 安田菜津紀の写真日記

震災から7年 「明るい話題を」に思うこと

著者: 安田菜津紀

波を被りながらも、まだ生きていた頃の陸前高田、一本松。

 東日本大震災から間もなく7年という月日が経とうとしている。「東北の報道をするなら明るい話題を」「前向きなニュースを」という声は、月日を経るごとに増えていった。ただその”希望”は一体、誰のためのものなのかといつも考える。

 東日本大震災直後、かつて何万本もの立派な松林だった「高田松原」から、一本だけ波に耐え抜いた松を、私は「希望」として撮り、そして発表したことがある。ところがこの街で被災し、最愛の妻を喪った義理の父は、この一本松を“波の威力の象徴”だと悲しんだ。

 父の言葉からはたと気づいた。私が探していたのは、この地に生きる人々にとっての光ではなく、破壊されてしまった街を前にする、その苦しみから逃れたい自分にとっての希望だったのだ。

 その後も明るい話題を耳にする度に、「自分は復興に携われていない」「自分は前向きになれていない」と義父の心が追い詰められていくのが分かった。もちろん被災した人々の中にも、そんな未来を見据えるようなニュースに支えられる人たちはいるはずだ。ただそこに、“悼む”時間が欠落していることはないだろうか。そしてそれによって傷つく人々がいることに、どれほど自覚的になれるのかが、伝え手に問われる。もちろん、そのニュースの受け取り手にも。伝える仕事は本来、声をあげられずにいる人々を置き去りにしないことが役割のはずだからだ。

 今、伝えられている“希望”は、被害を受けた方々にとってのものなのか、それとも厳しい現状から目を背けたい、外に暮らしている私たち本意のものなのか。改めて見極めながら、この日を迎えたいと思う。

多くの人々が犠牲となった陸前高田市役所。解体前、祈りを込めて「川原祭組」が舞った。
君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

安田菜津紀

2016/04/22発売

シリアからの残酷な映像ばかりが注目される中、その陰に隠れて見過ごされている難民たちの日常を現地取材。彼らのささやかな声に耳を澄まし、「置き去りにされた悲しみ」に寄り添いながら、その苦悩と希望を撮り、綴って伝える渾身のルポ。

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考える人とはとは

何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

“Plain living, high thinking”(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長
松村 正樹

著者プロフィール

安田菜津紀

1987年神奈川県生まれ。Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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