みなさま、こんにちは!
日々野鮎美(27歳 会社員)です。
わたくし、”山ガール”ならぬ”単独登山女子”なんて名乗っていますが、要するに人見知りです……(?!)。
(私の詳しいプロフィールをもっと知りたい方はこちらを→リンク)
普段は会社員、週末になると山歩きばかりの生活を送っている私が、登山を始めてみたい人向けにアテンドするならこの山! ……という個人的にお気に入りのお山をご紹介します。
今回のお山は……「愛宕山」です!
千日詣で有名な愛宕山
山に囲まれた京都のなかでも標高がやや高めの山「愛宕山」は、山頂に全国に900社あるという愛宕神社の総本宮があり、京都に住む多くの人がお参りに訪れる信仰の山。火の神様を祀り、防火や鎮火のご利益があり、3歳までに参拝すると一生火事に遭わないと言われ、調理人など飲食系の火を扱う仕事をする人が日常的にお参りするそうです。
地元の人にはよく知られていますが、年に一度、7月31日の夜、日付が変わる時間帯にお参りをすると、千日分お参りしたのと同じご利益があるとのこと。これは「千日詣」と呼ばれています。
愛宕山の標高は924mで、さまざまなルートがありますが、今回の上りルートは清滝から表参道(男坂)を通って山頂へ行く一番メジャーなルート。下山は途中まで上りと同じ道を下り、途中からツツジ尾根を使って下山し、JR保津峡駅でゴール。月輪寺を通って、スタートと同じ清滝に戻るルートも人気ですよ。
それではスタート!
まずは京福電鉄嵐山駅から。駅に着いたら、道路の向かい側に清滝行きのバス停があります。
嵐山駅周辺のトイレ事情ですが、早朝は駅のトイレが使えないので注意。コンビニは駅を出て左に1〜2分進んだ先にありますが、トイレは使えません。
清滝バス停のロータリーを出てすぐに分岐がでてきます。写真の案内板のとおりに登山道に向かいましょう。この先の右手にきれいなトイレがあるのでそこを利用しておきましょう。
舗装路を道なりに進むと赤い欄干の橋が出てくるので、そのまま橋を渡り、見えてきた鳥居、「愛宕神社 二の鳥居」をくぐります。鳥居の先は両脇に民家が並ぶ、のどかな参道です。
しばらく歩くと、愛宕山の舗装路からじわじわと山道に。登山道らしくなってきます。
愛宕山の登山口は標高がまだ85m。
山頂との標高差は839m、しっかりと山歩きを堪能できますね。
今回のルートは神社への表参道でもあるので、足元も安定していて歩きやすく、初心者にうってつけです。
歩いていると、登山道の途中に史跡などの由緒が書かれた案内板が多いことに気がつきます。
実は愛宕山は歴史的にも逸話が多いんです。
例えば火の神様を祀る以外にも、愛宕山はお茶の文化でも重要な場所のひとつ。
茶の湯の文化は戦国時代から安土桃山時代にかけて千利休により確立されましたが、豊臣秀吉以降は将軍もお茶を愉しむように。江戸初期までは、江戸からわざわざ空の壺を持たせた使者を出して、まずは宇治へ行き、壺に茶葉を入れて、愛宕山の京都愛宕山白雲寺(現在の愛宕神社)へいったん預けてから、朝廷(天皇)へ高級茶として献上し、秋になったら江戸へ戻して新茶とする、という御茶壺道中がありました。
童謡の「ずいずいずっころばし」にも、御茶壺道中が庶民にとってどんなものかがでてきます。
♪ちゃつぼに おわれて トッピンシャン ぬけたら ドンドコショ~♪ っていうフレーズありますよね。これは、仰々しく御茶壺道中の使者がやって来ると、庶民は粗相があっては大変と家の中へ隠れて過ごし、いなくなってやれやれ、という歌詞なのでは!? という説があるそうです。
そんな周囲もピリピリムードの御茶壺道中ですが、登山道の途中に「壺割り坂」というのがありまして、将軍家へ献上する茶壺を人夫が落として割ってしまったという場所なのだそうです。
そこは折り返しが多い場所で、身体が揺れた人夫が手を滑らせ……割った時のことを考えると恐ろしすぎます!
気になるのは、上りで割ったのか、それとも下りで割ったのか……。などなどと、この表参道ルートはネタが尽きません。
さらに歩き進むと、ちょいちょい歴史的に重要な建造物もでてきます。
この写真は、火の神「火産霊命」を祀っていた、火燧権現跡。
火の神様「火産霊命を祀っていた社の跡で、現在は石碑のみ残っているそうですよ。山頂の愛宕神社も火の神様ですが、ここもやっぱり火の神様なのですねー。
やがて茶屋跡が休憩所となって現れます、疲れたらここで一休み。
先ほどの案内板のように歴史について触れている解説もあるので、古に思いを馳せながら歩くことができますよ。
古来から多くの人がお参りに歩いた道なんだな〜って思うと感慨深いな~。
整備されている道がほとんどですが、木の根で滑りやすい場所もあるので、しっかりグリップの効くシューズを履いていくのがおすすめです。
ひたすら階段を上り、到着したのが愛宕神社! 京都の人の家庭には台所に『火迺要慎』のお札が貼ってあることが多いそうですが、そのお札がここの神社のもの。火除けのお参りのほか、高校受験やなんらかの祈願があるとここにお参りすると聞きました。
はい。ここが愛宕山の山頂です!
愛宕神社のまわりを歩いてみてわかりましたが、この愛宕山、山頂からの景色は開けていません。
ということで、神社から少し下りて、月輪寺下山ルートに向かう入り口付近に、日当たりもよく眺望がいい場所を発見!
大木が転がっているので、座ることもできますよ。ここでランチしてもいいかも。今日は少し早い時間のスタートでしたし、神社ということでバーナーはNG、昼ごはんの調達が難しく、コンビニ軽食のみ。今回はせめてドリンクだけでも工夫したい! ということで、コミックス6巻67話に出てくる「ホッとマシュマロ in ココア」に決まり!
山専ボトル(山専用の保温性が高い水筒)を使い、温かいお湯でホットココアを一杯。ココアにマシュマロを浮かべて完成です。
あっ全然……絵にならない!笑
小粒のマシュマロも溶けるのが早くてヨシ!
下山のツツジ尾根、春先はツツジがいっぱい。街の桜の開花より少し早いか同じくらいのようです。
ツツジ尾根は足元の整った上りの表参道よりも、木の根が多く、急勾配です。滑らないように注意して下山します。
向こうにJR保津峡駅が見えてきました。
早朝から登って、下山は12時ほど。しっかり山歩きを堪能できますし、ルートも多く、一度だけではなく何度歩いても楽しめますね。
表参道はただただ歩いて行けば山頂の愛宕神社に到着するので、一人で歩いても安心です。
でも標高差があり、体力を使います。食べ物、飲み物は多めにもっていきましょう。
下山の保津峡駅には、自販機以外は特に見当たりませんでした。
お昼も登山の途中でとったほうがよいですよ。
あ〜こんな素敵な山が自宅のそばにあったらなあ〜!!
京都ほど歴史のネタが多くなくても、自分が住んでいる地域の低山も、面白い発見があるかもしれませんね。
今年の春は感染症の拡大で、しばらく登山は自粛することになりそうですが、これを機に自分の住んでいる地域の山や文化を調べてみたり、行った山や行ってみたい山の歴史を調べるなんていうのも楽しそうですね。
「日々野鮎美の山歩き日誌」の読者のみなさんへ、休載のお知らせ
今回の記事は、連載終了後に登山ガイドブックとして再編集する前提で、昨年取材したものです。現在、「緊急事態宣言」への対応のため、登山の自粛が求められています。もちろん登山そのものは運動不足の解消や気分転換にもなりますが、登山口までの交通機関や登山中の行為などに注意すべき点もあり、感染症の終息まで、この連載をお休みすることにしました。しばらくの間は、どうぞコミックス「山と食欲と私」と連載ガイド「日々野鮎美の山歩き日誌」のバックナンバーで、登山をお楽しみください。新たな山をご紹介できる日を楽しみにしています。
文・構成 井上綾乃
関連サイト
総本宮 京都 愛宕神社
くらげバンチ 山と食欲と私
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日々野鮎美
ひびの・あゆみ 27歳、会社員。漫画『山と食欲と私』の主人公。「山ガール」と呼ばれたくない自称「単独登山女子」。美味しい食材をリュックにつめて、今日も一人山を登ります(たまには友人や同僚と登ることもあるよ)。
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『山と食欲と私』公式 鮎美ちゃんとはじめる山登り―気軽に登れる全国名山27選ガイド―
2021/06/28発売
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イラスト・監修 信濃川日出雄
しなのがわ・ひでお 新潟県出身。北海道在住。2007年のデビュー以来、ジャンルを問わず多岐にわたって執筆し、『山と食欲と私』が累計100万部を突破、大人気シリーズとなる。現在もくらげバンチで同作を連載中。
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とは
はじめまして。2021年2月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、金寿煥と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただきありがとうございます。
「考える人」との縁は、2002年の雑誌創刊まで遡ります。その前年、入社以来所属していた写真週刊誌が休刊となり、社内における進路があやふやとなっていた私は、2002年1月に部署異動を命じられ、創刊スタッフとして「考える人」の編集に携わることになりました。とはいえ、まだまだ駆け出しの入社3年目。「考える」どころか、右も左もわかりません。慌ただしく立ち働く諸先輩方の邪魔にならぬよう、ただただ気配を殺していました。
どうして自分が「考える人」なんだろう――。
手持ち無沙汰であった以上に、居心地の悪さを感じたのは、「考える人」というその“屋号”です。口はばったいというか、柄じゃないというか。どう見ても「1勝9敗」で名前負け。そんな自分にはたして何ができるというのだろうか――手を動かす前に、そんなことばかり考えていたように記憶しています。
それから19年が経ち、何の因果か編集長に就任。それなりに経験を積んだとはいえ、まだまだ「考える人」という四文字に重みを感じる自分がいます。
それだけ大きな“屋号”なのでしょう。この19年でどれだけ時代が変化しても、創刊時に標榜した「"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という編集理念は色褪せないどころか、ますますその必要性を増しているように感じています。相手にとって不足なし。胸を借りるつもりで、その任にあたりたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
「考える人」編集長
金寿煥