
ひょんなことから家族の家に、猫ちゃんをお迎えする、という話が持ち上がった。小さな頃になりたかった将来の夢が「猫」だったほど大の猫好きを自負しながらも、一度も猫と一緒に暮らしたことがない自分にとって、願ってもないことだった。そんな新しい家族を迎えるなら保護猫ちゃんから、と思っていたところ、友人が「りんご猫ちゃん」専門の保護猫カフェがある、と教えてくれた。
りんご猫…? 耳慣れない言葉だったこともあり、調べてみると、保護猫カフェ「ネコリパブリック」が、FIV(ネコエイズウイルス)に感染した猫たちのことを、偏見をなくしたいとの思いからそう呼んでいることが分かった。
FIVはHIV(ヒトエイズウイルス)と同じ種類とはいえ、人にうつることはなく、必ず発症するわけでもない。けれどもエイズウイルスに対する誤解を含めた“イメージ”が、譲渡を難しくすることがあるのだという。
ネコリパブリックが運営するりんご猫ちゃんの専門店は、お邪魔してみると個性派ぞろいであっという間に時間が過ぎてしまった。ちょっと恐がりで最初は遠巻きに見ているものの、そろりそろりと近づいてくる子もいれば、最初からすりすりと寄ってきては、甘えた声で「遊んで遊んで!」と誘ってくれる子もいる。
後に私たちの家族に加わってくれることになる「ゆうくん」は、いわゆる“ひとり猫”タイプだった。猫といるよりも人間といることが好きなようで、のそりのそりと膝に乗ってきたかと思うと、そのままごろんと寝そべって動かず、他の猫たちが近づこうものなら強烈なパンチで追い返そうとする。何度も通ううちに入り口まで迎えにきてくれるようにもなり、家族皆で「一緒に暮らそう」とゆうくんにお願いすることにした。
新しい家族となって2週間ほどが経ったゆうくんは、早くも家の主のように堂々と歩きまわり、お気に入りの場所もできたようだ。安心しきった寝相や、夢中になっておもちゃで遊ぶ様子は、一緒に暮らさなければ見ることができなかった姿だった。
これまで東南アジアやアフリカでHIVの取材を続けてきたが、問題意識は同じなのかもしれない。大切なのは正しい知識を身に着けながら、落ち着いて、そして自然体で相手と向き合うことなのだろう。ゆうくんとの日々はまだ、始まったばかりだ。

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安田菜津紀
1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。
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とは
はじめまして。2026年7月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、松本太郎と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。
2002年7月4日、季刊誌「考える人」が創刊されました。
目次には当代随一の執筆陣がずらりと並び、B5判240ページの誌面の隅々から知の香りが立ちのぼってくるかのようでした。
当時、入社3か月の営業部員だった私は、見上げるような思いで手に取り、発売日には編集長の松家仁之さんと創刊のご挨拶のために書店にうかがいました。
まだ書店訪問にも慣れておらず、編集長ともほぼ初対面の中、次のお店の約束の時間に間に合うだろうかと時計ばかりが気になって、終始、そわそわしていました。そんな私に松家さんがやわらかな笑顔で接してくれたこと、そして、新雑誌の門出を祝うようなすっきりと晴れた一日だったことを覚えています。
あれから四半世紀が過ぎ、ウェブマガジンとして衣替えした今でも、創刊時に掲げられた「Plain living, high thinking(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という言葉は古びていません。AIに尋ねれば瞬時に答えが返ってくる時代だからこそ、それらしい言葉に飛びつくのではなく、自分の頭で考え、心の声に耳を澄ませることの大切さは増しているように感じます。
創刊号には、養老孟司さんのロングインタビューが掲載されています。養老さんはその中で、恩師である中井準之助先生の口癖だった「人の心がわかる心を教養という」という言葉を紹介しています。
読んだ瞬間に立ち止まり、さまざまな思いが湧き上がってくるような文章に、楽しみながら出会える場であり続けたいと思っています。
「考える人」編集長
松本太郎
著者プロフィール
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- 安田菜津紀
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1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。
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