Webマガジン「考える人」

シンプルな暮らし、自分の頭で考える力。
知の楽しみにあふれたWebマガジン。
 
 

安田菜津紀の写真日記

ISやその他の武装勢力による何重もの戦闘に巻き込まれていった北部、テルタマルの街。

 3月に続き、5月頭に渡航したシリア北部は今実質、クルドの人々が統制する自治区となっている。この国でクルドの人々がたどってきた歴史は熾烈なものだった。一部の人々は国籍を与えられず、教育や居住の自由に制限を受けたり、不当な逮捕や拘束におびえたりと、内戦前から厳しい環境に追いやられてきた。ISを支持した一部のアラブの人々への怒りが高まる一方、逆に自治を敷こうとするクルド人に対するアラブ人からの反発があるなど、戦闘が収まった地でも彼らの今後は先行きが見えない状態だ。

 ある夕方に、郊外の小さな村を訪れた。夕日の中、子どもたちのはしゃぐ声が響いている。ふと一人のお父さんが、彼ら、彼女たちを指さしながら誇らしげに声をかけてきた。「ご覧、あそこでクルドの子どもとアラブの子どもたちが一緒に遊んでいる」。

 シリア内戦がはじまってから7年という月日が経った。あまりに多くの勢力や国々の思惑が複雑に絡み合い、人々は分断されていった。望まずしてそんな戦闘に巻き込まれてきたからこそ、共に生きる道のりはなお険しいままだ。けれどもこうして同じ場を当たり前のように分かち合える子どもたちの姿に、明日への希望を託したくなる。そして改めて自身を振り返る。大人こそ手を取り合い、その背中を彼らに見せなければ、と。

雨上がりの夕暮れ、サッカーや追いかけっこをしながら、共に遊んでいた子どもたち。
君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

安田菜津紀

2016/04/22発売

シリアからの残酷な映像ばかりが注目される中、その陰に隠れて見過ごされている難民たちの日常を現地取材。彼らのささやかな声に耳を澄まし、「置き去りにされた悲しみ」に寄り添いながら、その苦悩と希望を撮り、綴って伝える渾身のルポ。

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考える人とはとは

何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

“Plain living, high thinking”(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長
松村 正樹

著者プロフィール

安田菜津紀

1987年神奈川県生まれ。Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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