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安田菜津紀の写真日記

2018年6月8日 安田菜津紀の写真日記

”りんご猫ちゃん”ってご存知ですか?

著者: 安田菜津紀

真っ青な目がチャームポイントのゆうくん。お家に来た最初の日の写真。

 ひょんなことから家族の家に、猫ちゃんをお迎えする、という話が持ち上がった。小さな頃になりたかった将来の夢が「猫」だったほど大の猫好きを自負しながらも、一度も猫と一緒に暮らしたことがない自分にとって、願ってもないことだった。そんな新しい家族を迎えるなら保護猫ちゃんから、と思っていたところ、友人が「りんご猫ちゃん」専門の保護猫カフェがある、と教えてくれた。
 りんご猫…? 耳慣れない言葉だったこともあり、調べてみると、保護猫カフェ「ネコリパブリック」が、FIV(ネコエイズウイルス)に感染した猫たちのことを、偏見をなくしたいとの思いからそう呼んでいることが分かった。
 FIVはHIV(ヒトエイズウイルス)と同じ種類とはいえ、人にうつることはなく、必ず発症するわけでもない。けれどもエイズウイルスに対する誤解を含めた“イメージ”が、譲渡を難しくすることがあるのだという。
 ネコリパブリックが運営するりんご猫ちゃんの専門店は、お邪魔してみると個性派ぞろいであっという間に時間が過ぎてしまった。ちょっと恐がりで最初は遠巻きに見ているものの、そろりそろりと近づいてくる子もいれば、最初からすりすりと寄ってきては、甘えた声で「遊んで遊んで!」と誘ってくれる子もいる。
 後に私たちの家族に加わってくれることになる「ゆうくん」は、いわゆる“ひとり猫”タイプだった。猫といるよりも人間といることが好きなようで、のそりのそりと膝に乗ってきたかと思うと、そのままごろんと寝そべって動かず、他の猫たちが近づこうものなら強烈なパンチで追い返そうとする。何度も通ううちに入り口まで迎えにきてくれるようにもなり、家族皆で「一緒に暮らそう」とゆうくんにお願いすることにした。
 新しい家族となって2週間ほどが経ったゆうくんは、早くも家の主のように堂々と歩きまわり、お気に入りの場所もできたようだ。安心しきった寝相や、夢中になっておもちゃで遊ぶ様子は、一緒に暮らさなければ見ることができなかった姿だった。
 これまで東南アジアやアフリカでHIVの取材を続けてきたが、問題意識は同じなのかもしれない。大切なのは正しい知識を身に着けながら、落ち着いて、そして自然体で相手と向き合うことなのだろう。ゆうくんとの日々はまだ、始まったばかりだ。

台所から音がすると、「ご飯の時間?」と聞き耳をたてる。
君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

安田菜津紀

2016/04/22発売

シリアからの残酷な映像ばかりが注目される中、その陰に隠れて見過ごされている難民たちの日常を現地取材。彼らのささやかな声に耳を澄まし、「置き去りにされた悲しみ」に寄り添いながら、その苦悩と希望を撮り、綴って伝える渾身のルポ。

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考える人とはとは

何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

“Plain living, high thinking”(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長
松村 正樹

著者プロフィール

安田菜津紀

1987年神奈川県生まれ。Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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