ネット上で「過労自殺は自己責任」という言葉が物議をかもしている。心がずきずきと痛んでいる人も少なくないはずだ。
私は大学生時代、あしなが育英会という団体でボランティアをしていたことがあった。自殺で親を亡くした同級生も少なくなく、彼ら彼女たちが少しずつ語ってくれる言葉をつなぎ合わせていくと、経済的に困窮したことや人間関係、切っても切り離せない元々の生い立ちなど、自殺に至るまでにいくつもの要因が複雑に絡み合っていることが分かった。そして最後には「ごめんね」と言い残す人が多かったように思う。「生きていたら迷惑かけるから、ごめんね」「自分なんかいない方がいいね、ごめんね」。自殺は“自己責任”という安易な言葉で切り捨てられるようなものではなく、それしか選択肢がなくなるまで追いやられてしまった状態なのではないだろうか。
そして“自己責任”という言葉は、残されてしまった家族や身近な人々をも追い込む言葉だろう。「どうして支えになれなかったんだろう」「自分が追い込んでしまったんではないか」と時を経てもなお、自身を責め続けている人も少なくないはずだ。
そんな方々に、私があるとき目にした、自殺対策のポスターの言葉を伝えたいと思う。「弱かったのは、個人でなく、社会の支えでした」。追い込まれた人たちを切り捨てるのではなく、優しく包み込める社会を、私は諦めたくない。
関連サイト
いのち支える相談窓口一覧
https://jssc.ncnp.go.jp/soudan.php
SNSで相談ができる団体
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000194961.html
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安田菜津紀
1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。
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とは
はじめまして。2021年2月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、金寿煥と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただきありがとうございます。
「考える人」との縁は、2002年の雑誌創刊まで遡ります。その前年、入社以来所属していた写真週刊誌が休刊となり、社内における進路があやふやとなっていた私は、2002年1月に部署異動を命じられ、創刊スタッフとして「考える人」の編集に携わることになりました。とはいえ、まだまだ駆け出しの入社3年目。「考える」どころか、右も左もわかりません。慌ただしく立ち働く諸先輩方の邪魔にならぬよう、ただただ気配を殺していました。
どうして自分が「考える人」なんだろう――。
手持ち無沙汰であった以上に、居心地の悪さを感じたのは、「考える人」というその“屋号”です。口はばったいというか、柄じゃないというか。どう見ても「1勝9敗」で名前負け。そんな自分にはたして何ができるというのだろうか――手を動かす前に、そんなことばかり考えていたように記憶しています。
それから19年が経ち、何の因果か編集長に就任。それなりに経験を積んだとはいえ、まだまだ「考える人」という四文字に重みを感じる自分がいます。
それだけ大きな“屋号”なのでしょう。この19年でどれだけ時代が変化しても、創刊時に標榜した「"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という編集理念は色褪せないどころか、ますますその必要性を増しているように感じています。相手にとって不足なし。胸を借りるつもりで、その任にあたりたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
「考える人」編集長
金寿煥
著者プロフィール
- 安田菜津紀
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1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。
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