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料理は基準

2024年9月13日 料理は基準

第2回 冷やしそうめん(7月6日筆)

著者: 土井善晴

一汁一菜でよいという提案』がベストセラーになり、「一汁一菜」を実践する人が増えてきました。土井先生の毎日の実践を、旬の食材やその日の思考そのままに、ぎゅっと凝縮するかたちで読みたい! というたくさんの声を背景に、土井先生に、日々の料理探求を綴っていただきます。四季折々にある料理の「基準」とはなにか、ぜひ味わって、そして、自分なりの料理に挑戦してみてください。

(写真提供:土井善晴)

 そうめんは「ハレ」の日の食べ物だ。ジメジメした日本の暑い夏にあってこれほど喉越しのよいものはなかった。蕎麦は「ケ」の素朴、そうめんやうどんはハレの洗練という立場に、それぞれある。そうめんは白く、ツルツル(鶴鶴)の口当たりも縁起がよい。贈られた品物は、神様のお供え。飢饉の備えでもある。

 腰の強い上質なそうめんは極寒期に作られ、天日で干し上げられると乾物になって、貯蔵倉庫で梅雨を越すと古物(ひねもの)となり、2回梅雨を越したものが大古物と言われ珍重される。長期保存は発酵と関わり、きっと微生物が産生する栄養もついてくる。手延べそうめんは作られて2〜3年が食べ頃と言われるが、作る時期、寝かせる期間などで、等級があり、束ねる帯の色で示される。

 そうめんは、茹でたての冷やしたて、できたてのつゆでいただく。そのための情熱は暮らしの基本になる。

 湯を沸かす間に、そうめんのつゆが作れる。つゆはお玉で114(いちいちよん)が醤油と味醂と水の割合、と言っても、醤油は少し控えて加減する。鰹の削り節ひとつかみ、昆布一枚を入れて、弱火で煮立てる。弱火は昆布がふくらむまでの時間かせぎ。煮立ったら固く絞った布巾で、清潔なボウルに絞りこす。氷水にボウルを浮かべて、回転させて急冷する。葱や茗荷を刻み、生姜をおろし、小皿に盛る。

 そうめんは茹でて水にとり、冷めれば、しっかりもみ洗いして滑りを落とす。一本指に引っかけて麺をそろえ、そうめんが美しく映える鉢にもり、冷水をたっぷりはって氷を浮かべ、もみじの葉を一枚落とす。そうめん、つゆ、薬味はすっきり涼しげに。

 

*第3回は本日、第4・5回は9月20日金曜日配信の予定です。

 

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考える人とはとは

 はじめまして。2026年7月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、松本太郎と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。

 2002年7月4日、季刊誌「考える人」が創刊されました。

 目次には当代随一の執筆陣がずらりと並び、B5判240ページの誌面の隅々から知の香りが立ちのぼってくるかのようでした。

 当時、入社3か月の営業部員だった私は、見上げるような思いで手に取り、発売日には編集長の松家仁之さんと創刊のご挨拶のために書店にうかがいました。

 まだ書店訪問にも慣れておらず、編集長ともほぼ初対面の中、次のお店の約束の時間に間に合うだろうかと時計ばかりが気になって、終始、そわそわしていました。そんな私に松家さんがやわらかな笑顔で接してくれたこと、そして、新雑誌の門出を祝うようなすっきりと晴れた一日だったことを覚えています。

 あれから四半世紀が過ぎ、ウェブマガジンとして衣替えした今でも、創刊時に掲げられた「Plain living, high thinking(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という言葉は古びていません。AIに尋ねれば瞬時に答えが返ってくる時代だからこそ、それらしい言葉に飛びつくのではなく、自分の頭で考え、心の声に耳を澄ませることの大切さは増しているように感じます。

 創刊号には、養老孟司さんのロングインタビューが掲載されています。養老さんはその中で、恩師である中井準之助先生の口癖だった「人の心がわかる心を教養という」という言葉を紹介しています。

 読んだ瞬間に立ち止まり、さまざまな思いが湧き上がってくるような文章に、楽しみながら出会える場であり続けたいと思っています。

「考える人」編集長
松本太郎

著者プロフィール

土井善晴

1957(昭和32)年、大阪生れ。芦屋大学教育学部卒。スイス、フランス、大阪で料理を修業し、土井勝料理学校講師を経て1992(平成4)年、「おいしいもの研究所」を設立。十文字学園女子大学特別招聘教授、甲子園大学客員教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員などを務め、「きょうの料理」(NHK)などに出演する。著書に『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫)、『一汁一菜でよいと至るまで』(新潮新書)、『くらしのための料理学』(NHK出版)、『味つけはせんでええんです』(ミシマ社)、『お味噌知る』(土井光さんとの共著、世界文化社)など多数。


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