第6回 ゴーヤーチャンプルー(8月11日筆)
著者: 土井善晴
『一汁一菜でよいという提案』がベストセラーになり、「一汁一菜」を実践する人が増えてきました。土井先生の毎日の実践を、旬の食材やその日の思考そのままに、ぎゅっと凝縮するかたちで読みたい! というたくさんの声を背景に、土井先生に、日々の料理探求を綴っていただきます。四季折々にある料理の「基準」とはなにか、ぜひ味わって、そして、自分なりの料理に挑戦してみてください。
沖縄の郷土料理、チャンプルーとは、ただ数種の具材の炒めものではない。チャンプルーとは「お豆腐の入った」炒め物だ。ご飯、そうめんなどでんぷん質をシンプルに炒めたものはタシヤー、炒めて煮汁を煮詰めたものがイリチー、と区別される。
苦瓜を沖縄では、ゴーヤーと語尾を伸ばすとおばあに教わった。「ゴーヤーは好き嫌い言わずに食べなさいよ」 と、夏になると、沖縄の友人は幼い頃から聞かされたそうだ。慣れれば苦味は好きになってくる。苦味が苦手な方からは、薄く切ってボイル・塩揉みと苦味を抜く工夫を聞くが、もったいないなあ。
ゴーヤーチャンプルーとは、ゴーヤー、木綿豆腐、豚バラ肉、卵を使った炒めもの。おばあに作り方を教わったわけではないが、経験的に最善のゴーヤーチャンプルーを考える。炒め物といえば中国料理の強火のイメージだが、日本の家庭(料理)には設備も道具も技術もない。韓国料理のチャプチェに倣って、食材をひとつひとつ別々に火を通して、最後にまとめることにした。
フライパン(フッ素加工)に油、豆腐を適当にちぎり入れ、塩を軽くして、焼き色がつくまで待つ。箸で転がし、複数面に焼き色をつけて、取り出す。ついで、油を補い、種を抜いて好みの厚みに切ったゴーヤーを入れ、薄塩をし、こちらも焼き色がつくまで待ち、取り出す。ついで、食べやすく切った豚バラ肉を入れ、薄塩、焼き色がつくまで待つ。さて、フライパンのバラ肉の上に、豆腐、ゴーヤーを戻し、鍋肌から醤油を垂らし、醤油を軽く焦がして、溶き卵を2度に分けて流し入れ(鍋返しして)卵でくるむようにして、そのままヤチムンの皿に滑らせる。素材を活かしたチャンプルーの出来上がり。
*第7回は本日、第8・9回は10月4日金曜日配信の予定です。
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土井善晴
1957(昭和32)年、大阪生れ。芦屋大学教育学部卒。スイス、フランス、大阪で料理を修業し、土井勝料理学校講師を経て1992(平成4)年、「おいしいもの研究所」を設立。十文字学園女子大学特別招聘教授、甲子園大学客員教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員などを務め、「きょうの料理」(NHK)などに出演する。著書に『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫)、『一汁一菜でよいと至るまで』(新潮新書)、『くらしのための料理学』(NHK出版)、『味つけはせんでええんです』(ミシマ社)、『お味噌知る』(土井光さんとの共著、世界文化社)など多数。
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とは
はじめまして。2026年7月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、松本太郎と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。
2002年7月4日、季刊誌「考える人」が創刊されました。
目次には当代随一の執筆陣がずらりと並び、B5判240ページの誌面の隅々から知の香りが立ちのぼってくるかのようでした。
当時、入社3か月の営業部員だった私は、見上げるような思いで手に取り、発売日には編集長の松家仁之さんと創刊のご挨拶のために書店にうかがいました。
まだ書店訪問にも慣れておらず、編集長ともほぼ初対面の中、次のお店の約束の時間に間に合うだろうかと時計ばかりが気になって、終始、そわそわしていました。そんな私に松家さんがやわらかな笑顔で接してくれたこと、そして、新雑誌の門出を祝うようなすっきりと晴れた一日だったことを覚えています。
あれから四半世紀が過ぎ、ウェブマガジンとして衣替えした今でも、創刊時に掲げられた「Plain living, high thinking(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という言葉は古びていません。AIに尋ねれば瞬時に答えが返ってくる時代だからこそ、それらしい言葉に飛びつくのではなく、自分の頭で考え、心の声に耳を澄ませることの大切さは増しているように感じます。
創刊号には、養老孟司さんのロングインタビューが掲載されています。養老さんはその中で、恩師である中井準之助先生の口癖だった「人の心がわかる心を教養という」という言葉を紹介しています。
読んだ瞬間に立ち止まり、さまざまな思いが湧き上がってくるような文章に、楽しみながら出会える場であり続けたいと思っています。
「考える人」編集長
松本太郎
著者プロフィール
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- 土井善晴
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1957(昭和32)年、大阪生れ。芦屋大学教育学部卒。スイス、フランス、大阪で料理を修業し、土井勝料理学校講師を経て1992(平成4)年、「おいしいもの研究所」を設立。十文字学園女子大学特別招聘教授、甲子園大学客員教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員などを務め、「きょうの料理」(NHK)などに出演する。著書に『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫)、『一汁一菜でよいと至るまで』(新潮新書)、『くらしのための料理学』(NHK出版)、『味つけはせんでええんです』(ミシマ社)、『お味噌知る』(土井光さんとの共著、世界文化社)など多数。

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