第15回 新小豆(10月12日筆)
著者: 土井善晴
『一汁一菜でよいという提案』がベストセラーになり、「一汁一菜」を実践する人が増えてきました。土井先生の毎日の実践を、旬の食材やその日の思考そのままに、ぎゅっと凝縮するかたちで読みたい! というたくさんの声を背景に、土井先生に、日々の料理探求を綴っていただきます。四季折々にある料理の「基準」とはなにか、ぜひ味わって、そして、自分なりの料理に挑戦してみてください。
北海道、美瑛のマーケットで新小豆を見つけた。関西よりひと月くらい早いだろうか。新物だとすぐにわかるのは、ピカピカに光ってきれいだから。求めてすぐ煮た。
朝ごはんにと思ったから、前夜、茶碗に軽く一杯分をとって、ザラザラと洗って、小鍋に移し、かぶるくらいの水に浸けおいた。
朝、中火にかけて、煮立てば一度茹でこぼし。
茹でこぼしというのは、アク抜きのためで、きれいな水に取り替えてまた煮始める。
再び水をかぶるくらい入れて中火で煮ると、煮立ってから10分か、15分くらいで柔らかくなっていた。これ以上煮ると煮崩れるので、砂糖を適当に入れて5分ほど煮て火を止めた。小豆が固いうちに砂糖を入れると柔らかく煮えない、柔らかくなってから入れると煮崩れしにくい。
昨夜の栗ご飯の残りを丸めて、油もひかずフライパンに押し付けて、焼き色をつけてせんべいにした。椀に装って、初物のぜんざいをさらり。炊き立ては風味が断然。残りのぜんざいは、冷蔵庫に取り置いた。冷たくしたぜんざいは、とろりとしてまたおいしい。冷たくすると甘味が薄く感じられたので、粉末の和三盆をかけた。
「小豆は水に浸けて戻さずに煮る」のがセオリーとなっているのはなぜか。
疑問に思って老舗のご主人に電話をして尋ねた。「もう新物が出てたんですか……あっ北海道ですか……丹波の小豆は新物でも、くすんだ感じでキラキラ光りません……小豆を水で戻すと早く煮えますが、味が落ちるといわれます。祖母からも、父からも、そない聞いています。うちは、小豆は戻さんと直に炊いてます」と教えていただいた。
*次回は、11月22日金曜日配信の予定です。
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土井善晴
1957(昭和32)年、大阪生れ。芦屋大学教育学部卒。スイス、フランス、大阪で料理を修業し、土井勝料理学校講師を経て1992(平成4)年、「おいしいもの研究所」を設立。十文字学園女子大学特別招聘教授、甲子園大学客員教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員などを務め、「きょうの料理」(NHK)などに出演する。著書に『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫)、『一汁一菜でよいと至るまで』(新潮新書)、『くらしのための料理学』(NHK出版)、『味つけはせんでええんです』(ミシマ社)、『お味噌知る』(土井光さんとの共著、世界文化社)など多数。
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とは
はじめまして。2026年7月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、松本太郎と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。
2002年7月4日、季刊誌「考える人」が創刊されました。
目次には当代随一の執筆陣がずらりと並び、B5判240ページの誌面の隅々から知の香りが立ちのぼってくるかのようでした。
当時、入社3か月の営業部員だった私は、見上げるような思いで手に取り、発売日には編集長の松家仁之さんと創刊のご挨拶のために書店にうかがいました。
まだ書店訪問にも慣れておらず、編集長ともほぼ初対面の中、次のお店の約束の時間に間に合うだろうかと時計ばかりが気になって、終始、そわそわしていました。そんな私に松家さんがやわらかな笑顔で接してくれたこと、そして、新雑誌の門出を祝うようなすっきりと晴れた一日だったことを覚えています。
あれから四半世紀が過ぎ、ウェブマガジンとして衣替えした今でも、創刊時に掲げられた「Plain living, high thinking(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という言葉は古びていません。AIに尋ねれば瞬時に答えが返ってくる時代だからこそ、それらしい言葉に飛びつくのではなく、自分の頭で考え、心の声に耳を澄ませることの大切さは増しているように感じます。
創刊号には、養老孟司さんのロングインタビューが掲載されています。養老さんはその中で、恩師である中井準之助先生の口癖だった「人の心がわかる心を教養という」という言葉を紹介しています。
読んだ瞬間に立ち止まり、さまざまな思いが湧き上がってくるような文章に、楽しみながら出会える場であり続けたいと思っています。
「考える人」編集長
松本太郎
著者プロフィール
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- 土井善晴
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1957(昭和32)年、大阪生れ。芦屋大学教育学部卒。スイス、フランス、大阪で料理を修業し、土井勝料理学校講師を経て1992(平成4)年、「おいしいもの研究所」を設立。十文字学園女子大学特別招聘教授、甲子園大学客員教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員などを務め、「きょうの料理」(NHK)などに出演する。著書に『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫)、『一汁一菜でよいと至るまで』(新潮新書)、『くらしのための料理学』(NHK出版)、『味つけはせんでええんです』(ミシマ社)、『お味噌知る』(土井光さんとの共著、世界文化社)など多数。

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