第14回 ご飯をおいしく(10月5日筆)
著者: 土井善晴
『一汁一菜でよいという提案』がベストセラーになり、「一汁一菜」を実践する人が増えてきました。土井先生の毎日の実践を、旬の食材やその日の思考そのままに、ぎゅっと凝縮するかたちで読みたい! というたくさんの声を背景に、土井先生に、日々の料理探求を綴っていただきます。四季折々にある料理の「基準」とはなにか、ぜひ味わって、そして、自分なりの料理に挑戦してみてください。
新米だ。山間の田圃は水が冷たくて収量が少ないがいい米がとれる。そんなお米をいただいた。こういう特別なお米を炊くときは、夕食でも、主役になるおかずを作らない。ご飯をメインに食べる。魚や肉のおかずがあるとせっかくのご飯がもったいないと思うようになったからだ。
ご飯をおいしく食べるために、あればいいなと思うのは、少しばかりの塩気の強いもの。古漬けのはりはり、佃煮、冷蔵庫に、たしか瓶詰めのウニか、鯖のへしこがあったかな……あれば最高だが、何にもなくても、梅干、海苔か味噌といった定番と、なにかひとつ、歯切れの良い奈良漬か三年物の沢庵があればいい。
あとは味噌汁だが、そもそも私たちの食事とはこんなものだろう。もともと日本には「魚とお肉どっちがいいか」なんていうメインディッシュ(主菜)という概念はない。一汁一菜を知れば、自身で工夫でき、暮らしはシンプルになる分、心が豊かになる。
上質なお米を昭和の頃は寿司米とした。炊き立てのご飯を酢飯にする。寿司はご飯が大事だ。炊き立てのご飯を、大きめの鉢に取り、米酢をじゃー、塩をさらさら、砂糖を匙ですくい、入れたら、しゃもじでさっくりと混ぜる。混ぜむらがあってもよい。いい米酢、自然の海塩、よい調味料、米がよければどう転んでもおいしい酢飯ができる。
四切りの焼き海苔、おろしわさび、千六本の胡瓜、甘辛く煮た椎茸の短冊、卵焼き、あとひとつ刺身の短冊か、小エビのボイルとか、あとは自分で考える。なんでも合うが種類は少なめがよい。ご飯が主役の手巻き寿司はやはり楽しくて、二人で二合をペロリ。
*次回は、11月15日金曜日配信の予定です。
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土井善晴
1957(昭和32)年、大阪生れ。芦屋大学教育学部卒。スイス、フランス、大阪で料理を修業し、土井勝料理学校講師を経て1992(平成4)年、「おいしいもの研究所」を設立。十文字学園女子大学特別招聘教授、甲子園大学客員教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員などを務め、「きょうの料理」(NHK)などに出演する。著書に『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫)、『一汁一菜でよいと至るまで』(新潮新書)、『くらしのための料理学』(NHK出版)、『味つけはせんでええんです』(ミシマ社)、『お味噌知る』(土井光さんとの共著、世界文化社)など多数。
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とは
はじめまして。2026年7月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、松本太郎と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。
2002年7月4日、季刊誌「考える人」が創刊されました。
目次には当代随一の執筆陣がずらりと並び、B5判240ページの誌面の隅々から知の香りが立ちのぼってくるかのようでした。
当時、入社3か月の営業部員だった私は、見上げるような思いで手に取り、発売日には編集長の松家仁之さんと創刊のご挨拶のために書店にうかがいました。
まだ書店訪問にも慣れておらず、編集長ともほぼ初対面の中、次のお店の約束の時間に間に合うだろうかと時計ばかりが気になって、終始、そわそわしていました。そんな私に松家さんがやわらかな笑顔で接してくれたこと、そして、新雑誌の門出を祝うようなすっきりと晴れた一日だったことを覚えています。
あれから四半世紀が過ぎ、ウェブマガジンとして衣替えした今でも、創刊時に掲げられた「Plain living, high thinking(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という言葉は古びていません。AIに尋ねれば瞬時に答えが返ってくる時代だからこそ、それらしい言葉に飛びつくのではなく、自分の頭で考え、心の声に耳を澄ませることの大切さは増しているように感じます。
創刊号には、養老孟司さんのロングインタビューが掲載されています。養老さんはその中で、恩師である中井準之助先生の口癖だった「人の心がわかる心を教養という」という言葉を紹介しています。
読んだ瞬間に立ち止まり、さまざまな思いが湧き上がってくるような文章に、楽しみながら出会える場であり続けたいと思っています。
「考える人」編集長
松本太郎
著者プロフィール
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- 土井善晴
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1957(昭和32)年、大阪生れ。芦屋大学教育学部卒。スイス、フランス、大阪で料理を修業し、土井勝料理学校講師を経て1992(平成4)年、「おいしいもの研究所」を設立。十文字学園女子大学特別招聘教授、甲子園大学客員教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員などを務め、「きょうの料理」(NHK)などに出演する。著書に『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫)、『一汁一菜でよいと至るまで』(新潮新書)、『くらしのための料理学』(NHK出版)、『味つけはせんでええんです』(ミシマ社)、『お味噌知る』(土井光さんとの共著、世界文化社)など多数。

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