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料理は基準

2024年11月22日 料理は基準

第16回 味見(10月19日筆)

著者: 土井善晴

一汁一菜でよいという提案』がベストセラーになり、「一汁一菜」を実践する人が増えてきました。土井先生の毎日の実践を、旬の食材やその日の思考そのままに、ぎゅっと凝縮するかたちで読みたい! というたくさんの声を背景に、土井先生に、日々の料理探求を綴っていただきます。四季折々にある料理の「基準」とはなにか、ぜひ味わって、そして、自分なりの料理に挑戦してみてください。

 「おぜんざい」は、小豆が柔らかく煮えたら、砂糖で吸い加減(すいかげん)に整える。小皿に小豆の茹で汁をとり、味見する。「吸い加減」とは、飲んでちょうどいいなと思う感じ。だから「どのくらい? 大さじ何杯?」って、聞き返されるのかなあ。

 お吸い物も、吸い加減に整える。一番だしに、塩と薄口醤油で、飲んで、おいしいなと思うくらいの塩加減。ちなみに冬場は少し醤油を多く、夏場は塩を多めにする。

 吸い加減は基準になる。おだしたっぷりの「大根炊き」や「おでん」(含め煮)の味付けは、吸い加減よりも濃い目に整えて、じっくり煮るとちょうどよくなる。

 「魚の煮付け」や、「芋の煮ころがし」の濃い味付けは、「舐め」て、味見する感じ。舐めるのは「飲む」より少量。煮付け(煮ころがし)は、落とし蓋をして魚や芋に火が入るまで煮詰める。とろりと煮詰まった煮汁は、芋や魚のたれ、西洋でいうソースになって、芋や魚に絡めて食べる。その場合、味付けよりも、煮汁の煮詰め加減で味が決まる。煮汁の色つやを見て、いつ火を止めるかが大事。

 味見は、変化の前や、道中にする。それは結果ではなくて、時間をおいた未来にどうなるかを推し量る。といっても、それほど厳密に、プロゴルファーがグリーンの芝を読むように計算ずくではなくて、遠くを見て「こんなもんやろ」という感じ。ところが慣れると、その(かん)が当たるようになる。すると料理は俄然楽しくなる。

 味見は焦点を絞ること、今自分がみているのは、塩味か、甘みか、酸味なのか、漠然とおいしいかどうかじゃない。落ち着いて一呼吸おいたとき、じわりとわかるもの。

 

*次回は、11月29日金曜日配信の予定です。

 

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考える人とはとは

 はじめまして。2026年7月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、松本太郎と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。

 2002年7月4日、季刊誌「考える人」が創刊されました。

 目次には当代随一の執筆陣がずらりと並び、B5判240ページの誌面の隅々から知の香りが立ちのぼってくるかのようでした。

 当時、入社3か月の営業部員だった私は、見上げるような思いで手に取り、発売日には編集長の松家仁之さんと創刊のご挨拶のために書店にうかがいました。

 まだ書店訪問にも慣れておらず、編集長ともほぼ初対面の中、次のお店の約束の時間に間に合うだろうかと時計ばかりが気になって、終始、そわそわしていました。そんな私に松家さんがやわらかな笑顔で接してくれたこと、そして、新雑誌の門出を祝うようなすっきりと晴れた一日だったことを覚えています。

 あれから四半世紀が過ぎ、ウェブマガジンとして衣替えした今でも、創刊時に掲げられた「Plain living, high thinking(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という言葉は古びていません。AIに尋ねれば瞬時に答えが返ってくる時代だからこそ、それらしい言葉に飛びつくのではなく、自分の頭で考え、心の声に耳を澄ませることの大切さは増しているように感じます。

 創刊号には、養老孟司さんのロングインタビューが掲載されています。養老さんはその中で、恩師である中井準之助先生の口癖だった「人の心がわかる心を教養という」という言葉を紹介しています。

 読んだ瞬間に立ち止まり、さまざまな思いが湧き上がってくるような文章に、楽しみながら出会える場であり続けたいと思っています。

「考える人」編集長
松本太郎

著者プロフィール

土井善晴

1957(昭和32)年、大阪生れ。芦屋大学教育学部卒。スイス、フランス、大阪で料理を修業し、土井勝料理学校講師を経て1992(平成4)年、「おいしいもの研究所」を設立。十文字学園女子大学特別招聘教授、甲子園大学客員教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員などを務め、「きょうの料理」(NHK)などに出演する。著書に『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫)、『一汁一菜でよいと至るまで』(新潮新書)、『くらしのための料理学』(NHK出版)、『味つけはせんでええんです』(ミシマ社)、『お味噌知る』(土井光さんとの共著、世界文化社)など多数。


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