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Superfly ウタのタネ

髪型を変えました。
意識的に変えたというよりステイホーム中にメンテナンスができず自然に伸びてしまっただけなのですが、いい感じに伸びてくれたのでベリーショートからショートウルフに進化しました。
わ……わずか数か月で……。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、私の髪の毛は異常な速さで伸びます。なんと人の約2倍で、長さでいうと1か月に2㎝ほど(スゴー!)。この速さなので、カットの頻度はだいたい2週間に一度です。頻繁すぎて面倒じゃないかと思われるかもしれませんが、私は髪を切るという行為がかなり好き!! 以前は髪を触られながら、ほぼ初対面の美容師さんに身の上話をするのが苦手でしたが、今はそんな気持ちはゼロです。だって美容師さんってヒーラーなんだもの! 心の断捨離ができるような……まるで新しい自分に生まれ変われるような……。深いリラクゼーション効果を感じています。ということでカットの日は楽しみでしょうがないのです。本当は週1でもいいくらい(笑)。

私の髪の毛の特徴はスピードだけではありません。
多毛で、一本一本がそれはそれはたくましく、強い。傷み知らずの剛毛です(笑)。
以前から毛量と強さについては自覚がありました。デビューから10年ほどは、ジャニス・ジョプリンやオノ・ヨーコさんに憧れてロングのセンター分けスタイル。20代はどうしても肌に幼さが残るので、張り裂けんばかりのピチピチの顔をカバーするためにもセンター分けは直線的でクールに演出できてよかった。野外ライブで風に吹かれボサボサになる髪の毛をまとめたくてヘッドバンドを付けていたら(めちゃくちゃ機能的)そのまま衣装になり、スタイリストさんはありとあらゆる布を頭に巻き始め、結果的にキャッチーなヘアスタイルを作り出せました。ボサボサでもストレートでも、ゆるいウエーブを出してもムードがあってお気に入りだったけど、存在感のある髪の毛は目立ちやすい。プライベートでは変装の意味でも髪の毛をまとめていました。
意外にもテレビに映っている私の髪の毛は剛毛には見えていないらしく、実物を目の当たりにした方からはけっこう驚かれます。当時、おしゃべりしながら髪の毛を左に流して三つ編みを作る癖がありまして、目の前で太く長く仕上げられた三つ編みを見て「注連(しめ)(なわ)か!!」と爆笑されたこともあります。そんな感じ。
とはいえ、ロングの時は剛毛であることもさほど気にならなかったのですが、4年前くらいにベリーショートにしてからというもの、私の毛質はとんでもない問題毛だという事実に直面するのであります……。

面倒くさがりなので人前に出る仕事でなければ髪型を気にするようなタイプではないのですが、数え切れないほど存在するミュージシャンの中でSuperflyを覚えてもらうためにも髪型には地味にこだわりがあります。ポイントは、「絵に描きやすいかどうか」。おでこ辺りに紐を巻いてるとか、黒くて超長いとか、前髪超短いとか、大胆でシンプルということです。
アーティストによっては顔面にインパクトがあって、どんな髪型にしても、どんな衣装を着てもその人だと認識できる方もいらっしゃいますが、私は残念ながら顔のパーツにそれほどインパクトがないので、ヘアメイクや衣装で覚えてもらえるようにと考えています。
昔から感じていることですが、私はハッキリとした髪型でないと、顔がぼんやりしてしまって覚えてもらえないのです(涙)。過去にも色々トライしてみたけど……結局ロングのセンター分けに戻っていきました。あぁ、曖昧な髪型は似合わないのかな~とショックでしたが、今思えば、昔であればあるほど物事をハッキリさせておきたい性格でもあったのでそういう内面も表面化していたのかもしれません。

ベリーショートにしたのは、30代に入ってから。それまでプリプリしていた顔がシャープな印象になり、直線的で重い黒髪ロングもそろそろ卒業かな~と思っていた頃、体調不良でお仕事をお休みすることになりました。せっかくだから休養中はSuperflyのイメージから思い切り離れて生活してみようと断髪式を決断したのです。
ロングからショートになる記念すべき日なので、一発目のハサミは私が入れさせていただきました。左右に一つずつヘアゴムで束に結わえてもらい、まずは左から。しっかりと髪の毛を握りしめ、ヘアゴムの2センチくらい上に狙いを定めて、勢いよくザクっと。……なんという快感、なんという感動!!! そして切断された束になった髪の断面を眺めて毛の太さと密度に驚いた! それはそれは極太で、エノキ茸を包丁でカットした断面とそっくりでした(エノキ茸を見るたびに思い出します)。
そんな私のエノキ茸に感謝と別れを告げた私は、プロの手によってショートヘアへと変身していったのでした。そしてこの日からすっかり髪を切る快感を覚えてしまい、ショートだったはずがベリーショートへ、どこまでも短く進化を遂げていくのです。

ショートヘアの生活はとても快適でした。シャンプーはラクだし、とにかく気持ちが晴れやか! しかし短いなりの悩みも勃発。今までは、髪のボリュームや強さについて悩むことが多かったのが、ショートにしてからは、冒頭で書いたように伸びるスピードが目立つようになってしまったのです! 自分が気にしてるだけならまだしも、いろんな方から「髪、伸びましたね(驚)」と言われるように……。身近な人、お友達、たまに立ち寄るコーヒーショップの店員さんにまで、ほぼ100%の確率です。それも髪が伸びて素敵ですねといった言い方ではなく、単に伸びてる事実を教えてくれる感じなので(笑)、異常なスピードで伸びてるんだという自覚を持ちました。そして、同じ言葉を繰り返し耳にするうちに、良いことも悪いこともネガティブに刷り込まれてしまうという私の被害妄想のクセが現れ始めたのです。「人と違って変なんだ、ダメなんだ」こんな気持ちが襲ってきて、晴れやかだったはずの心の中が曇るようになってしまって……。
 「憎き剛毛めー!」それからというもの、伸びるスピードは変えられないけど、せめてこの生命力のありすぎる毛質を変えたいというモードに入り、ひたすらブリーチして細く柔らかく変えようとエスカレートしていきました。もはやファッションの域を超えている(笑)。

日々自分の髪を見つめ続けているわけで、それなりの愛着が湧いたり楽しみもあったのですが少しだけ胸の奥がチクチク痛む感覚がありました。そりゃそうです、毎日自分に否定的な気持ちを向けているのですから。

こんな風にコンプレックスと格闘すること数か月。おそらく平均的で、扱いやすい毛質になりました。ところがある時、鏡越しに映る「普通になれた」自分を見て、「え……この人誰……!?」と感じた瞬間があったのです。そのとき、面白いことを発見してしまいました。

我々を悩ませるコンプレックスというものは(特に外見)、集団生活の中で個々を見分けるために神様(?)がわざと与えてくれたものではないか?! と思ったのです。
もしも、世界中の人の顔・体型・髪型など、全て同じだとしたら、どうやって人を見分けるんだろう?? 会社や家族の中だったとしても、想像するだけで結構パニックだと思いませんか? 誰だかわからなくて不安な気持ちになるような気がします。
違いがあるから名前と顔が一致して、コミュニケーションが成立してるのかもしれない。違うって面白いじゃないか。コンプレックスってありがたいものではないか……!?

こうして私は毛質の呪縛から解き放たれ、現在の髪型へと進化していきました。
嫌な部分をカバーするためではなく、自分の毛質や癖を活かしたニューヘアです。
絵に描きづらいような曖昧な髪型は似合わないと思っていたけど、コンプレックスを受け入れた途端に曖昧な髪型がハマるように感じられ、相変わらず猛スピードで成長中の髪の毛に対しても、「伸びましたね」よりも「素敵ですね」と言われる頻度の方が多くなり、予期せぬ変化をもたらしてくれています。これはコンプレックスを受け入れられたご褒美だと信じています!

そして先日、新しいアーティスト写真の撮影をしました。今の心境を写真に残したい! という思いから衣装も私服です。私は短足でスタイルも良くない。衣装は本来スタイルアップさせるものだけど、そもそも私はモデルさんではないし、自分らしいシルエットが出ることが大切! 心から好きな洋服たちに包まれて写真を撮りました。歯並びだって悪いけど、気にせず大口開けて笑って撮りました。
無理やり「普通」に矯正して、世界中が同じにならなくていい。
コンプレックスには、自分を好きになるヒントが隠されていました。
私を作ってくれて、ありがとう!

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「考える人」から生まれた本

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何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長
松村 正樹

著者プロフィール

Superfly越智志帆

スーパーフライ おち・しほ 1984年2月25日生まれ。愛媛県出身。2007年デビュー。代表曲に「愛をこめて花束を(2008)」「タマシイレボリューション(2010)」「Beautiful(2015)」「Gifts(2018)」など多数。シンガーソングライターとしてのオリジナリティ溢れる音楽性、圧倒的なボーカルとライブパフォーマンスには定評があり、デビュー14年目を迎えてもなお表現の幅を拡げ続けているアーティストである。今年1月には、ほぼすべての楽曲の作詞・作曲を越智志帆自らが手がけた4年半ぶりとなるオリジナルアルバム『0』をリリース。Superflyの新章を実感させる仕上がりとなった。Superfly公式サイト


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