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安田菜津紀の写真日記

2018年10月26日 安田菜津紀の写真日記

死者に生かされた「今」 父の命日に

著者: 安田菜津紀

イラク北部、クルド人自治区。地中から噴き出るガスから、煌々と炎がともり続けていた。

 毎年のように10月の末には、近づく父の命日のことをここに書かせてもらってきた。「節目」だけが大切なのではないと分かりつつも、年に一度は言葉にすることによって、呼吸を落ち着かせるように、自分自身の心の歩みをもう一度整えたいのかもしれない。
 恐らく中学時代、父と兄を亡くしていなければ、「家族とは?」という疑問に何とか答えを見出そうと、必死にもがくことはなかったかもしれない。もがかなければ、「他の国の同世代は家族のことをどう考えているのだろう?」と、今の私の原点となったカンボジアに渡航することもなかったはずだ。そしてカンボジアに行く機会がなければ、「伝えたい」という思いがこれほど強く芽生えることもなかっただろうと思う。そう考えると「今」というこの瞬間は、姿は見えないにしても、死者に生かされているのだ。
 父は、生い立ちから重々しいものを背負い続け、強く脆く、そしてその弱さを隠すため、結果的に身近な人を傷つけてしまう人だった。時折似た人を見かけると、語りかけたくなる。弱さを隠すことは決して悪いことではない。だからいつか、人を傷つける以外の方法でそれができるといいですね、と。

東京で見上げた月が、笑いかけてきた気がした。だからいつでも、笑い返せるように。
君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

安田菜津紀

2016/04/22発売

シリアからの残酷な映像ばかりが注目される中、その陰に隠れて見過ごされている難民たちの日常を現地取材。彼らのささやかな声に耳を澄まし、「置き去りにされた悲しみ」に寄り添いながら、その苦悩と希望を撮り、綴って伝える渾身のルポ。

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考える人とはとは

何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

“Plain living, high thinking”(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長
松村 正樹

著者プロフィール

安田菜津紀

1987年神奈川県生まれ。Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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