イラク北部に身を寄せる、シリア人のご家庭で。停電が続き、この日もわずかな灯が頼りだった。


 その日は朝から苛立っていた。何をしていても心が落ち着かない。理由は自分の中でもはっきりしていた。シリアの街アレッポから、苛烈なニュースが絶え間なく流れてくる。今、日本から何もできない自分自身が腹立たしいのだ。

 隣国の病院で出会ったシリアの少年の顔が、ふと頭を過る。アブーデくん、と呼ばれていた6歳の男の子だ。人一倍おしゃべりで人懐っこく、看護師さんたちの人気者だった。最初にこの病院の薄暗い廊下に足を踏み入れたとき、アブーデくんは、にこにこしながら勢いよくこちらに車いすを走らせてきた。私たちを屈託のない笑顔で見上げると、こう言った。「ねえねえ、僕の足、いつ生えてくるのかな?」。今、シリアで、あの街で、何人の“アブーデくん”がいるのだろう。

 そんなとき、イラクの友人がこんな言葉を私に送ってくれたのを思い出した。「あなたがもしも沈黙してしまったら、世界はどうなると思う?」。その沈黙が集まった姿が、今の世界だから。まずはその沈黙を変えなければならないんだ、と。

 私の心の支えである人がくれた言葉を、ここで皆さんにもお伝えしてこの一年の締めくくりとしたいと思う。「言の葉、いっぱい出して、大きな木にして、森にする。やさしくて、まあるい森」。どうか2017年がもっと、優しさに溢れる一年となりますように。

不法投棄による環境汚染と向き合い続けた香川県の豊島(てしま)。人々の手で今、豊かな地を取り戻そうとしている。平和の象徴といわれる、オリーブの木々とともに。