
「私はこの職で初の女性かもしれませんが、最後ではありません。これを見ている小さな女の子たちが、この国は可能性に満ちていると知ったから」
日本時間の11月8日、朝の番組出演を終えたばかりの私は、早起きの眠気も忘れて、テレビに映し出されるカマラ・ハリス氏のスピーチを食い入るように見つめていた。ジョー・バイデン氏が大統領選で当選確実になったことで、ハリス氏が女性初、そしてアフリカ系・アジア系としても初の副大統領になることとなった。
ハリス氏は、バイデン陣営が「勝利宣言」を行ったこの日の集会に、白のスーツで登場した。白は女性参政権獲得のためのシンボルカラーだ。今年2020年は米国での女性参政権獲得から100周年にあたる。けれども黒人女性には、1965年まで障壁があった。カマラ氏が生まれたのは1964年、投票時の人種差別を禁じた投票権法施行前だ。アメリカ社会の今に至るまでの壮絶な歴史、障壁を破るために命がけで闘ってきた人々のことを思わずにはいられなかった。
注目をしたいのは、カマラ氏の動向だけではない。大統領や首相が男性の場合、その妻は「ファースト・レディ」と呼ばれる。私はこの言葉自体に違和感があるのだが、ジョー・バイデン氏の妻でもあるジル・バイデン氏は、今後も大学での仕事を続けるということだ。妻は支えることに徹して当たり前、とは違う価値観を、国のリーダーたちの側から示していくことは重要だ。
カマラ氏のスピーチを見ながら、なんだか違う惑星の物語を見ているような気持になってしまったのは私だけだろうか。日本の国会では、日本学術会議の任命拒否問題に、政府側があれこれと苦しい言い訳を並べている。任命拒否のいきさつや理由を明確に答えないまま、菅首相は学術会議の人選に「多様性がない」
大統領選挙と並んで行われていた議会選挙では、女性議員数は過去最多となり、トランスジェンダーの女性も初当選を果たした。「Qアノン」など陰謀論を信奉する議員も当選しており、トランプ氏が落選したとしても、「トランプ氏的なもの」は根強く残っていくだろう。けれどもそれを押し返すようなエネルギーは、市民一人ひとりによる草の根の活動にも支えられてきたのだと、現地の大学に通う友人が語ってくれた。
もちろん、どんな選挙も「ゴール」ではなく「スタート」だ。たとえ自分が投票したり支持したりした候補、政党であっても、その後、説明責任を果たさない動きがあれば指摘する、というところまで含めて民主主義だ。それはもちろん、今の日本にも問われている。

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安田菜津紀
1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。
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とは
はじめまして。2026年7月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、松本太郎と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。
2002年7月4日、季刊誌「考える人」が創刊されました。
目次には当代随一の執筆陣がずらりと並び、B5判240ページの誌面の隅々から知の香りが立ちのぼってくるかのようでした。
当時、入社3か月の営業部員だった私は、見上げるような思いで手に取り、発売日には編集長の松家仁之さんと創刊のご挨拶のために書店にうかがいました。
まだ書店訪問にも慣れておらず、編集長ともほぼ初対面の中、次のお店の約束の時間に間に合うだろうかと時計ばかりが気になって、終始、そわそわしていました。そんな私に松家さんがやわらかな笑顔で接してくれたこと、そして、新雑誌の門出を祝うようなすっきりと晴れた一日だったことを覚えています。
あれから四半世紀が過ぎ、ウェブマガジンとして衣替えした今でも、創刊時に掲げられた「Plain living, high thinking(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という言葉は古びていません。AIに尋ねれば瞬時に答えが返ってくる時代だからこそ、それらしい言葉に飛びつくのではなく、自分の頭で考え、心の声に耳を澄ませることの大切さは増しているように感じます。
創刊号には、養老孟司さんのロングインタビューが掲載されています。養老さんはその中で、恩師である中井準之助先生の口癖だった「人の心がわかる心を教養という」という言葉を紹介しています。
読んだ瞬間に立ち止まり、さまざまな思いが湧き上がってくるような文章に、楽しみながら出会える場であり続けたいと思っています。
「考える人」編集長
松本太郎
著者プロフィール
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- 安田菜津紀
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1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。
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