
三陸の浜辺でこの季節に出会える花がある。冷たい風にも動じず、そして静かに海を見守るその出で立ちにいつも心惹かれ、シャッターを切ってきた。特にその名を気にしたことはなかったが、地元の方が「はまぎく」という名前と共に、花言葉を教えてくれた。「逆境に立ち向かう」。
それは批判や激しい抵抗だけを示すのではなく、まずは動じず、自身とも対話をしながら冷静に思考し続けること、そして未来への選択肢を手放さないことなのだと、この花が教えてくれたように思う。恐らくそれは、民主主義の礎でもある。
何を逆境と感じるかはきっと、何を身近に感じるのかと密接につながっている。労働環境、少数者への差別、生活保障、テロ対策。思えば私が政治に興味を持ちだしたのは、レズビアンの親友ができたことだった。「人を好きになるだけで、私は笑いものにされるかもしれない」といつも怯えていた彼女を見て、性的少数者と呼ばれる人々であっても、生き心地のよい社会になるにはどうしたらいいか、と考えるようになったのが原点だった。家族の縁で通うようになった三陸沿岸も、私にとって大切な場所だ。繰り返される「2020年までに復興終了」という言葉は、まだかさ上げ工事が続き、コミュニティをこれから築かなければならない街の声に耳を傾けたものだろうか。
だからこそ投票とは、「変えてほしい」ではなく「変えていきたい」と、私たちが意思を示す場なのだと思うようになった。そしてそれはエピローグではなく、プロローグ。「あなたたちがどんな取り組みをするのかを、選んだ私たちはこれからも見ています」と、私たちの関りはむしろこれから問われている。

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安田菜津紀
1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。
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とは
はじめまして。2026年7月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、松本太郎と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。
2002年7月4日、季刊誌「考える人」が創刊されました。
目次には当代随一の執筆陣がずらりと並び、B5判240ページの誌面の隅々から知の香りが立ちのぼってくるかのようでした。
当時、入社3か月の営業部員だった私は、見上げるような思いで手に取り、発売日には編集長の松家仁之さんと創刊のご挨拶のために書店にうかがいました。
まだ書店訪問にも慣れておらず、編集長ともほぼ初対面の中、次のお店の約束の時間に間に合うだろうかと時計ばかりが気になって、終始、そわそわしていました。そんな私に松家さんがやわらかな笑顔で接してくれたこと、そして、新雑誌の門出を祝うようなすっきりと晴れた一日だったことを覚えています。
あれから四半世紀が過ぎ、ウェブマガジンとして衣替えした今でも、創刊時に掲げられた「Plain living, high thinking(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という言葉は古びていません。AIに尋ねれば瞬時に答えが返ってくる時代だからこそ、それらしい言葉に飛びつくのではなく、自分の頭で考え、心の声に耳を澄ませることの大切さは増しているように感じます。
創刊号には、養老孟司さんのロングインタビューが掲載されています。養老さんはその中で、恩師である中井準之助先生の口癖だった「人の心がわかる心を教養という」という言葉を紹介しています。
読んだ瞬間に立ち止まり、さまざまな思いが湧き上がってくるような文章に、楽しみながら出会える場であり続けたいと思っています。
「考える人」編集長
松本太郎
著者プロフィール
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- 安田菜津紀
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1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。
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