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料理は基準

2024年9月20日 料理は基準

第5回 夏の楽しみ(7月27日筆)

著者: 土井善晴

一汁一菜でよいという提案』がベストセラーになり、「一汁一菜」を実践する人が増えてきました。土井先生の毎日の実践を、旬の食材やその日の思考そのままに、ぎゅっと凝縮するかたちで読みたい! というたくさんの声を背景に、土井先生に、日々の料理探求を綴っていただきます。四季折々にある料理の「基準」とはなにか、ぜひ味わって、そして、自分なりの料理に挑戦してみてください。

 夏は水のもの。

 茄子、胡瓜、トマト、スイカ、ゴーヤー、菊かぼちゃ、そうめん、冷奴。

 夏は辛み。

 生姜、茗荷、紫蘇、胡椒、にんにく、夏大根。

 夏の彩り。

 ピーマン、パプリカ、ラディッシュ、枝豆、西洋かぼちゃ、ズッキーニ。

 夏は酢の味。

 梅干し、酢醤油、酢味噌、三杯酢、すし飯、南蛮漬け。

 夏の長いもの。

 鱧、うなぎ、蛸、太刀魚、ちりめんじゃこも。

 近年の夏の暑さは著しい。熱中症に注意して、塩、水分を摂り、夏負けしないように滋養のあるものを食べる。

 椀に、梅干しを一つ、赤味噌を匙に1杯ほど入れて、熱湯を注ぐ、これが「梅干し味噌汁」。

 トマトは、薄い輪切りに、塩と米酢、砂糖、オリーブオイル、胡椒、お箸で食べる「トマトサラダ」。

 ゴーヤーは、丸ごと、力を入れずにすりおろし、蜜柑ジュースで割り、氷を入れてスプーンで食べる「ゴーヤーおろし」。

 茄子は、黒焼きにして水につけないで焦げた皮を剥き、表面をさっと洗って、冷蔵庫で冷やしおく、食べるときに、おろし生姜を添えて冷たい「焼き茄子」。

 パプリカは、直火で黒焼き、薄皮を剥き、甘酢にひたす「パプリカの甘酢漬け」。

 うなぎは、醤油で味付けて炊き上げた生姜でつくる生姜飯。白焼のうなぎをグリルでパリッと焼き、塩振って刻み、炊き立ての生姜飯に合わせて「うなぎの混ぜご飯」。

 茹蛸は、酢洗いして、食べやすく切って皿に並べる。にんにく少しと胡瓜をすりおろして、米酢と薄口醤油で味付ける、「蛸刺し身の胡瓜酢」。

 色鮮やかに辛味と酸味で食す夏の味。

 

*次回(第6・7回)は、9月27日金曜日配信の予定です。

 

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考える人とはとは

 はじめまして。2021年2月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、金寿煥と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただきありがとうございます。
「考える人」との縁は、2002年の雑誌創刊まで遡ります。その前年、入社以来所属していた写真週刊誌が休刊となり、社内における進路があやふやとなっていた私は、2002年1月に部署異動を命じられ、創刊スタッフとして「考える人」の編集に携わることになりました。とはいえ、まだまだ駆け出しの入社3年目。「考える」どころか、右も左もわかりません。慌ただしく立ち働く諸先輩方の邪魔にならぬよう、ただただ気配を殺していました。
どうして自分が「考える人」なんだろう―。
手持ち無沙汰であった以上に、居心地の悪さを感じたのは、「考える人」というその“屋号”です。口はばったいというか、柄じゃないというか。どう見ても「1勝9敗」で名前負け。そんな自分にはたして何ができるというのだろうか―手を動かす前に、そんなことばかり考えていたように記憶しています。
それから19年が経ち、何の因果か編集長に就任。それなりに経験を積んだとはいえ、まだまだ「考える人」という四文字に重みを感じる自分がいます。
それだけ大きな“屋号”なのでしょう。この19年でどれだけ時代が変化しても、創刊時に標榜した「"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という編集理念は色褪せないどころか、ますますその必要性を増しているように感じています。相手にとって不足なし。胸を借りるつもりで、その任にあたりたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

「考える人」編集長
金寿煥

著者プロフィール

土井善晴

1957(昭和32)年、大阪生れ。芦屋大学教育学部卒。スイス、フランス、大阪で料理を修業し、土井勝料理学校講師を経て1992(平成4)年、「おいしいもの研究所」を設立。十文字学園女子大学特別招聘教授、甲子園大学客員教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員などを務め、「きょうの料理」(NHK)などに出演する。著書に『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫)、『一汁一菜でよいと至るまで』(新潮新書)、『くらしのための料理学』(NHK出版)、『味つけはせんでええんです』(ミシマ社)、『お味噌知る』(土井光さんとの共著、世界文化社)など多数。


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