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村井さんちの生活

2026年8月31日 村井さんちの生活

実家の掃除では、コレをしろ!

著者: 村井理子

 義実家の片付けを本格的にスタートさせた。満を持して、という感じだ。

 義父母がそれぞれグループホームに入居して、あっという間に一年近くが経過した。その間に、義母が体調を崩したり、義父とのやりとりに私が大いに疲労したりと様々なことがあったわけだが、私が最も懸念していたのは、二人が住んでいた家をどうするかという大きな問題だった。

 数か月前、義父が住むグループホームにご近所の有志の皆さんが面会にやってきてくれ、義父に対してこのようなことを伝えたと聞く。「最近は物騒な事件も多いですから、息子さん夫婦に頼んで、ご自宅のお手入れも欠かさずお願いいたします」。それに敏感に反応した義父は慌てて知り合いの男性に連絡を取り(なぜ)、「庭の手入れを頼む!」と訴えたようだ。息子にそんなことを頼めば逆鱗に触れるかもしれないと恐れた可能性がある。その方から連絡が入り、庭を見に行ってくれたと報告があった。家を見守ってくれている人が大勢いるのはありがたいことだが、これは結構なプレッシャーだわ…。

 そして我々は悟った。このまま放置してはダメなのではないかと。家のなかの片付けばかりに気を取られていたが、実際は敷地内全体をきちんと整理し、あの家が「現役」であるというオーラを発散させなければならない! 我々だけの問題だと思っていた義実家の片付けは、実は近隣をも巻き込むプチ景観問題&防犯対策へと発展しつつあった。

 そんなこんなで、今年のゴールデンウィークのあたりから、頻繁に義父母の家に通うようになっていた。義父はとにかく庭を愛する男なので、「庭が…」と、繰り返し訴え続けていた。私からすると庭がどうしたという思いだったのだが、義実家の片付け中に発見した義母の日記をこっそり読んだところ、義母にとっても庭は大切な場所だったようだ。義父が脳梗塞で倒れたあとの日々の記載には、「またあの頃のように、お父さんと一緒に庭をきれいに掃除したい。もう一度それができたら、どれだけ幸せだろう」という内容が多かった。元気な頃の二人の日課と言えば、庭の木々にたっぷり水を与えることであり、雑草をきれいに抜くことであり、落ち葉を一枚も残すことなく、庭を掃きあげることだった。義母も好きだったのであれば仕方がない。私はとうとう重い腰を上げることにした。

 まずは目立ちやすい場所の雑草を抜き、伸びてしまった庭木を剪定し、ぱっと見は妥協ポイントに近づいたところでヨシとした。夫は裏庭に放置されていた大量の大型ゴミを処分場に運び込んだ。その量たるや、すごいものだった。しかしこれらの作業が終わると、以前と同じとまではいかないが、庭はすっきりして見えた。これでご近所のみなさんも安心だろう。

 その後は、屋内に散乱するゴミの処分に着手した。これもまたすごい量で、やる気がすっかり萎えてしまうほどのボリュームだ。どうしても手が止まるので、家がきれいに片付いたら、ここを私の仕事場として使うという勝手なうえに図々しい目標を掲げて自分を奮い立たせた。鍵のついた門があるのだから、妙に成長中のわが家の犬を放し飼いにできる。郵便物や荷物の到着にも対応できるし、電気・ガス・水道・その他は契約したままだから環境は整っている。朝イチに出勤して、夕方、退勤。自宅まで戻る途中でスーパーに立ち寄って買い物をすれば、もう完璧過ぎる。「義父母宅オフィス化」という夢の実現を目の前にぶら下げるニンジンとして頑張ったのだ。

 8月半ばの夏休み期間は、連日義実家に通って作業に明け暮れた。私は書類の選別と廃棄、夫は大型ゴミの完全処分という役割分担をして作業に挑んだわけだが、この期間の作業で私が発見したことは、本当に多かった。今回は、そんな「実家の掃除では、コレをしろ!」ポイントを、忘れる前にお伝えしようと思う。

①防虫対策 

 暑い時期に、長期間にわたって締め切っていた(あるいはあまり空気の入れ換えをしなかった)家に入るのであれば、まずは防虫スプレーなどで、ゴキブリやダニを駆逐したほうがいい。私は謎の虫刺され被害に遭って気持ちが萎えた。事前に防虫剤を散布しておくこと、置き型のゴキブリ駆除剤を設置すること、カーペット類は干す、あるいは洗濯をしておくこと。そのような前準備をきっちりやって、身を守ってほしい。

②まずは冷蔵庫を片付けるのが吉(電気が使用できる場合)

 まずは冷蔵庫をピカピカに磨き上げ、中に飲料水、スポーツ飲料、氷、食品などをたっぷり備蓄してから、腰を落ち着けて作業することをオススメする。作業の途中でコンビニなどに行くと、その後やる気をすっかり失ってしまうので、作業スタート前に買い物をし、冷蔵庫に詰めてから立ち向かうとよい。ラテやデザートも揃えると、それだけで少しやる気が出るぞ!

③迷わないものから、とにかく捨てていく

 「どうしようかしら?」と迷っている時間がもったいないので、まったく迷わないものからどんどん捨てるべし。どんなものが「迷わない」に該当するかと言うと、賞味期限が大幅に過ぎた切り餅、きなこ、異様に備蓄された乾麺・乾物のようなものだ。よく考えてみてほしい。乾麺や乾物を「いつか使える」と思って残しても、一年後に同じ場所にあるだけだ。古いラップ、しなびた蚊取り線香なども捨ててしまうとすっきりする。使うかもしれない残置物は、決して使われることはないと胸に刻む。妙に出てくるボロボロの洗濯ばさみも必要ない。ヘアピンも画鋲もいらん! どんどん捨てていくと、途中から捨てること自体に慣れ、徐々に大胆になってくる。その過程で大量に廃棄できるメンタルが育成される。

④ツールはケチらない

 モノを捨てるためにモノを買うのには抵抗があるが、必要であれば迷わず買う方がいい。洗剤、ハサミ、ガムテープ、ゴミ袋、防虫剤、掃除道具といったものは、多めにあっても邪魔にならない。古い道具は迷わず捨てて、新しい高性能ツールを使いこなせ! しかし、大きな道具(高圧洗浄機など)は、レンタル一択だ。「え? これもレンタルできるの!?」とびっくりするような機械だってレンタル可能なので、調べてみてほしい。

⑤嫌になったら逃げていいし、なんならコンテンツにすればいい

 数々の困難を私がどうやってサバイブしてきたかというと、「これはマズイと思ったら一目散に逃げる」。その逃避が長期間にわたっても問題ないし、短期間で気持ちの整理ができるなら、一旦逃げてもまったく問題はないのでは? 経験を別の形に変えることが出来るなら、SNSで発信してコンテンツにすればいい! そのようなアカウントは、驚くほど多く存在して、コメント欄では活発な意見交換が行われている。そこから何か見いだす可能性だってゼロではない。

 ざっとではあるけれど、こんな感じ。

 私が今回の夏休みの作業で考えたのは、本当にシンプルなことだった。誰の人生も、山あり谷ありであるということだ。長い間、見ていたようで見えていなかった義父母の人生の旅路を、たくさん目撃することになったのは、私(観察者)にとっては一つのご褒美のような感覚だった。古い写真や残された日記、手紙、メモは、これまでの二人の歩みを示す物語になっていたし、そんな二人が今となってはそれぞれグループホームに入居中という事実に、自分のこれからを重ねずにはいられなかった。これを読んで、「私は家族に自分のプライバシーを見せたくない」と思った方、それはきっと終活の始まりだと思う。

 そして、今回の大掃除をしている間、ずっとその過程をSNSアカウントで発信していた。本当にくだらない動画をアップしていたのだが、リプライで「私もやっています!」と書いてくれた方の多さには驚いたし、親のクローゼットの風景は日本全国共通である(ぎっしり)という新たな気づきもあった。

 これからも厳しい残暑は続く。実家の片付けを継続する方は、少し気温が下がったからと気を抜かず、熱中症対策をきっちりお願いしたい。「こんなことやっちゃっていいのかな?」とあなたが迷うことの98%は、たぶん、やっちゃっていい。私もその精神でいくので、みなさんもそうしてください!

義父母の介護

2024/07/18発売

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考える人とはとは

 はじめまして。2026年7月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、松本太郎と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。

 2002年7月4日、季刊誌「考える人」が創刊されました。

 目次には当代随一の執筆陣がずらりと並び、B5判240ページの誌面の隅々から知の香りが立ちのぼってくるかのようでした。

 当時、入社3か月の営業部員だった私は、見上げるような思いで手に取り、発売日には編集長の松家仁之さんと創刊のご挨拶のために書店にうかがいました。

 まだ書店訪問にも慣れておらず、編集長ともほぼ初対面の中、次のお店の約束の時間に間に合うだろうかと時計ばかりが気になって、終始、そわそわしていました。そんな私に松家さんがやわらかな笑顔で接してくれたこと、そして、新雑誌の門出を祝うようなすっきりと晴れた一日だったことを覚えています。

 あれから四半世紀が過ぎ、ウェブマガジンとして衣替えした今でも、創刊時に掲げられた「Plain living, high thinking(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という言葉は古びていません。AIに尋ねれば瞬時に答えが返ってくる時代だからこそ、それらしい言葉に飛びつくのではなく、自分の頭で考え、心の声に耳を澄ませることの大切さは増しているように感じます。

 創刊号には、養老孟司さんのロングインタビューが掲載されています。養老さんはその中で、恩師である中井準之助先生の口癖だった「人の心がわかる心を教養という」という言葉を紹介しています。

 読んだ瞬間に立ち止まり、さまざまな思いが湧き上がってくるような文章に、楽しみながら出会える場であり続けたいと思っています。

「考える人」編集長
松本太郎


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