Webマガジン「考える人」

シンプルな暮らし、自分の頭で考える力。
知の楽しみにあふれたWebマガジン。
 
 

安田菜津紀の写真日記

アルビル中心地の広場、声をかけてくれた父娘。

 ドーハから飛び立ち、約2時間。眼下の風景はいつの間にか、雪の解け残った山脈から赤茶色の大地に変わっていた。小さな機体が目指しているのは、イラク北部の街、アルビル。この街に降り立つたびに、その時間の流れがあまりにも違うことに、最初は戸惑ってしまう。

 「ここは初めてなの?」「迎えはちゃんと来るのか?」と絶えず誰かが話しかけてくる。「入国カード書いた?」と勝手に周りが心配してくれる。外国人だからと物珍しく見てくるわけではない。その言葉の掛け合いが、ごく自然に、日常の中にあるのだ。

 バスに乗れば話しかけたそうにもじもじしている男の子と、くすっと笑うお母さん。「いいから、いいから!」とおじさん(ほとんどおじいさん)がおばあさんに席を譲る。きっとこれが”自然”であるはずなのに、日本から来たばかりだとあまりに”濃密”に感じてしまうのだ。

 この地から流れるニュースはいつも、数十キロ先に迫るISの脅威ばかりだ。だからこそこの地に身を置き、そしてその空気の中で呼吸する度に、人々の手で守られている日常が愛おしくなる。そんなこの街に私は思わず、「ただいま」を口にしてしまうのだ。

ほっとする場所の一つ。アルビル城から広場を見下ろす。
君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

安田菜津紀

2016/04/22発売

シリアからの残酷な映像ばかりが注目される中、その陰に隠れて見過ごされている難民たちの日常を現地取材。彼らのささやかな声に耳を澄まし、「置き去りにされた悲しみ」に寄り添いながら、その苦悩と希望を撮り、綴って伝える渾身のルポ。

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考える人とはとは

何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

“Plain living, high thinking”(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長
松村 正樹

著者プロフィール

安田菜津紀

1987年神奈川県生まれ。Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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