Webマガジン「考える人」

シンプルな暮らし、自分の頭で考える力。
知の楽しみにあふれたWebマガジン。
 
 

安田菜津紀の写真日記

隣国イラクに逃れてきているシリアの青年。道の向こうにはシリアの大地が見える。すぐそこにある母国への道のりは、彼らにとっては途方もなく遠い距離だった。

 4月、外には美しい風景があふれているのに、心はざわついたままだった。理由ははっきりしていた。シリアで化学兵器が使われ、さらにアメリカがそのシリアを突如空爆、というニュースが届いたからだ。米中会談中、空爆決行は会食の終焉と共にトランプ氏から習近平氏に告げられた。トランプ氏が語るところの、〝これまででもっとも美味しいチョコレートケーキ〟を食べながら。

 湧き上がる怒りの正体を探り続けた。化学兵器に対して? それとも蹂躙する権力に対してのものだろうか? ぐるぐると考えを巡らせるうち、ふと気づいた。それは自分に対する怒りだった。これだけの事態を前に、何もなすすべのない自分に。

 空爆の翌日、シリアの首都ダマスカスにとどまる友人から、ネット越しにメッセージが届いた。「この2カ月、シリアは最も血塗られた日々を過ごした」。そんな彼女が最後に、真っ白に咲き誇る花の写真を添付してくれた。「綺麗! 桜なの?」「日本の桜にそっくりでしょ。ダマスカスは今、アーモンドの花の季節なの。いつかここで一緒に見れる日が来ますように」。

 シリアにも春がくるのだろうか。本当の、春が。

隣国に逃れてきているシリアの少女。少しでも心が晴れるようにと、難民キャンプの壁には至るところに花が描かれていた。
君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

安田菜津紀

2016/04/22発売

シリアからの残酷な映像ばかりが注目される中、その陰に隠れて見過ごされている難民たちの日常を現地取材。彼らのささやかな声に耳を澄まし、「置き去りにされた悲しみ」に寄り添いながら、その苦悩と希望を撮り、綴って伝える渾身のルポ。

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考える人とはとは

何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長
松村 正樹

著者プロフィール

安田菜津紀

1987年神奈川県生まれ。NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)所属フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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