シンプルな暮らし、自分の頭で考える力。
知の楽しみにあふれたWebマガジン。
 
 

安田菜津紀の写真日記

昼はそれぞれの場所で物乞いをし、夜になるとまた仲間を求めここに集まってくる子どもたち。

 のろのろと進む車の群れ、クラクションの間を駆けていく人々。フィリピン、マニラはいつものように喧騒に包まれていた。きらびやかなネオンから隠れた路地裏の暗闇に、彼らの“居場所”はあった。闇に紛れた子どもたちが、どろんとした目でこちらを見上げる。その手には小さなビニール。その場に漂う匂いからすぐにシンナーだと分かった。行き場を失い、路上で寝泊まりをしている子どもたちが、一人、また一人とこの場所へ“帰って”くる。

 そんな彼らの元に一人の警官が近づいていく。一瞬彼らの表情に緊張が走る。一人の少年が持っていたシンナーの染み込んだ布を取り上げると、「そんなに好きなのか? だったら食べてみろよ」とそれを少年の口に入れさせた。周りの子どもたちは特に驚いた様子もなかった。そんなことに慣れてしまっているから、と。

 今、フィリピンでは刑法の対象年齢を9歳に引き下げるための法案が審議されている。彼らの安心、安全が更に遠のいていく、その前に。大人たちは今、何をすべきだろうか。

青少年鑑別所の中。暗がりの部屋の中で、迎えにくる親のない子どもたちが取り残されていく。
君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

安田菜津紀

2016/04/22発売

シリアからの残酷な映像ばかりが注目される中、その陰に隠れて見過ごされている難民たちの日常を現地取材。彼らのささやかな声に耳を澄まし、「置き去りにされた悲しみ」に寄り添いながら、その苦悩と希望を撮り、綴って伝える渾身のルポ。

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「考える人」から生まれた本

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考える人とはとは

 はじめまして。2026年7月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、松本太郎と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。

 2002年7月4日、季刊誌「考える人」が創刊されました。

 目次には当代随一の執筆陣がずらりと並び、B5判240ページの誌面の隅々から知の香りが立ちのぼってくるかのようでした。

 当時、入社3か月の営業部員だった私は、見上げるような思いで手に取り、発売日には編集長の松家仁之さんと創刊のご挨拶のために書店にうかがいました。

 まだ書店訪問にも慣れておらず、編集長ともほぼ初対面の中、次のお店の約束の時間に間に合うだろうかと時計ばかりが気になって、終始、そわそわしていました。そんな私に松家さんがやわらかな笑顔で接してくれたこと、そして、新雑誌の門出を祝うようなすっきりと晴れた一日だったことを覚えています。

 あれから四半世紀が過ぎ、ウェブマガジンとして衣替えした今でも、創刊時に掲げられた「Plain living, high thinking(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という言葉は古びていません。AIに尋ねれば瞬時に答えが返ってくる時代だからこそ、それらしい言葉に飛びつくのではなく、自分の頭で考え、心の声に耳を澄ませることの大切さは増しているように感じます。

 創刊号には、養老孟司さんのロングインタビューが掲載されています。養老さんはその中で、恩師である中井準之助先生の口癖だった「人の心がわかる心を教養という」という言葉を紹介しています。

 読んだ瞬間に立ち止まり、さまざまな思いが湧き上がってくるような文章に、楽しみながら出会える場であり続けたいと思っています。

「考える人」編集長
松本太郎

著者プロフィール

安田菜津紀

1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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