
七夕、と聞くと、多くの人がきっと、7月7日を思い浮かべるだろう。かつては私もそうだった。あの東日本大震災が起こるまでは。
縁あって通うようになった岩手県陸前高田市では、旧暦の七夕、8月7日に「うごく七夕祭」を迎える。町内ごとにこしらえた見上げるほどの山車に囃子を乗せ、市街地を練り歩く華やかな一日だ。あの日の大津波は街を、命を、そして宝であったほとんどの山車をも飲み込んでいった。ほぼ全ての家々が流され、解散を余儀なくされた町会さえあった。それでも祭にもう一度人が集えるように、と残された力を持ち寄った人々の手で少しずつ息を吹き返してきたのだ。
ひょんなことから、私自身も囃子の太鼓を教えてもらっていた。慣れないうちは5分も叩けば手の皮がはがれる。叩くほどに囃子の勢いは増し、思わずバチを手放してしまいそうになる。
そんな私にベテランの叩き手がこんな言葉をかけてくれた。「どんなに手が痛くても、腕がしびれても、太鼓叩く力を絶対抜いちゃいけない。七夕に負けちゃあだめなんだ」。なんでかって? お盆にこの街に帰ってくる魂が、迷わないようにって叩くんだよ、と。
8月7日、この日帰りくる魂たちは、土の下に埋まりつつある街の様子をどう見降ろすのだろうか。「あと1か月か」と、空を見上げる、7月7日。

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安田菜津紀
1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。
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とは
はじめまして。2026年7月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、松本太郎と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。
2002年7月4日、季刊誌「考える人」が創刊されました。
目次には当代随一の執筆陣がずらりと並び、B5判240ページの誌面の隅々から知の香りが立ちのぼってくるかのようでした。
当時、入社3か月の営業部員だった私は、見上げるような思いで手に取り、発売日には編集長の松家仁之さんと創刊のご挨拶のために書店にうかがいました。
まだ書店訪問にも慣れておらず、編集長ともほぼ初対面の中、次のお店の約束の時間に間に合うだろうかと時計ばかりが気になって、終始、そわそわしていました。そんな私に松家さんがやわらかな笑顔で接してくれたこと、そして、新雑誌の門出を祝うようなすっきりと晴れた一日だったことを覚えています。
あれから四半世紀が過ぎ、ウェブマガジンとして衣替えした今でも、創刊時に掲げられた「Plain living, high thinking(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という言葉は古びていません。AIに尋ねれば瞬時に答えが返ってくる時代だからこそ、それらしい言葉に飛びつくのではなく、自分の頭で考え、心の声に耳を澄ませることの大切さは増しているように感じます。
創刊号には、養老孟司さんのロングインタビューが掲載されています。養老さんはその中で、恩師である中井準之助先生の口癖だった「人の心がわかる心を教養という」という言葉を紹介しています。
読んだ瞬間に立ち止まり、さまざまな思いが湧き上がってくるような文章に、楽しみながら出会える場であり続けたいと思っています。
「考える人」編集長
松本太郎
著者プロフィール
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- 安田菜津紀
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1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。
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