シンプルな暮らし、自分の頭で考える力。
知の楽しみにあふれたWebマガジン。
 
 

安田菜津紀の写真日記

盛岡にて。東北に通い続けていると、雪を見て初めて「冬」を実感する。

 年末年始、久しぶりに日本で過ごせることもあり、岩手、福島の沿岸の街を巡った。東日本大震災から間もなく8年。変わらず受け継がれてきた宝物もあれば、あの日から時が止まったように取り残されてしまった風景もある。
 私は「あの日」、日本にさえいなかった。フィリピンの山奥で静かな時間を過ごしている最中に、知人からの電話で初めて、とてつもない状況になっていることを知った。まして東北の出身でもない自分が、こうして取材し、発信することに、いつも“後ろめたさ”を感じてきた。ただ、街の人間しか発信できないのであれば、ここで起きたことは街の外ではなかったことにされてしまう、と取材でお世話になった方々が背中を押してくれたのだ。大切なのは、それでも消えない「後ろめたさ」から逃げない、ということだった。
 あらゆる問題に、この「後ろめたさ」は付きまとう。例えば #MeToo の運動でも、「自分も過去にセクハラをしてしまったかもしれない」、「加担してしまったかもしれない」という思いから、躊躇してしまう友人たちもいた。「いまさら声をあげづらい」と。ただ、後ろめたい人が押しなべて皆沈黙すれば、この問題はどこまでも置き去りになってしまうはずだ。
 「沈黙」は一見無害に見えて、暴力的な構造がそこにあるときほど、力のある方へ暗に加担してしまうこともある。「後ろめたい」と感じているときほど、「“だから”もう、終わりにしよう」と声をあげたい。2019年を、理不尽を見過ごさない一年にするために。

2019年1月1日、陸前高田市広田町で臨んだ初日の出
君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

安田菜津紀

2016/04/22発売

シリアからの残酷な映像ばかりが注目される中、その陰に隠れて見過ごされている難民たちの日常を現地取材。彼らのささやかな声に耳を澄まし、「置き去りにされた悲しみ」に寄り添いながら、その苦悩と希望を撮り、綴って伝える渾身のルポ。

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「考える人」から生まれた本

  • 春間豪太郎草原の国キルギスで勇者になった男

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考える人とはとは

 はじめまして。2021年2月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、金寿煥と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただきありがとうございます。
「考える人」との縁は、2002年の雑誌創刊まで遡ります。その前年、入社以来所属していた写真週刊誌が休刊となり、社内における進路があやふやとなっていた私は、2002年1月に部署異動を命じられ、創刊スタッフとして「考える人」の編集に携わることになりました。とはいえ、まだまだ駆け出しの入社3年目。「考える」どころか、右も左もわかりません。慌ただしく立ち働く諸先輩方の邪魔にならぬよう、ただただ気配を殺していました。
どうして自分が「考える人」なんだろう――。
手持ち無沙汰であった以上に、居心地の悪さを感じたのは、「考える人」というその“屋号”です。口はばったいというか、柄じゃないというか。どう見ても「1勝9敗」で名前負け。そんな自分にはたして何ができるというのだろうか――手を動かす前に、そんなことばかり考えていたように記憶しています。
それから19年が経ち、何の因果か編集長に就任。それなりに経験を積んだとはいえ、まだまだ「考える人」という四文字に重みを感じる自分がいます。
それだけ大きな“屋号”なのでしょう。この19年でどれだけ時代が変化しても、創刊時に標榜した「"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という編集理念は色褪せないどころか、ますますその必要性を増しているように感じています。相手にとって不足なし。胸を借りるつもりで、その任にあたりたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

「考える人」編集長
金寿煥

著者プロフィール

安田菜津紀

1987年神奈川県生まれ。NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)所属フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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