シンプルな暮らし、自分の頭で考える力。
知の楽しみにあふれたWebマガジン。
 
 

安田菜津紀の写真日記

2015年夏、分断された沖縄、辺野古の海。

 1月6日、いつもお邪魔しているテレビ番組「サンデーモーニング新春スペシャル」で、VTRと共に平成の30年間を振り返った。いよいよ、平成が終わる。昭和の終わりに生まれた私にとっては、人生の大半を占めている時代が、ついに幕を閉じる。記憶に残っている最初のニュースは、阪神淡路大震災と、地下鉄サリン事件だった。中学生のとき、アメリカの同時多発テロが起き、高校生のときにイラク戦争がはじまった。激動の時代は、これからどこへ向かっていくだろう。
 私自身はバブル期の記憶が殆ど残っていない。気が付けば、働くほどに生活がよくなっていく、という時代は終わりを迎えていた。それにも関わらず、長時間労働を容認する風潮は根強く残ってきた。その結果が、過労死や、自殺問題にもつながっているなら、それは決して「自己責任」で済ませられるものではないはずだ。
 技術は飛躍的な進歩を遂げ、その反面、ヘイトスピーチがネット上に刻まれ続け、ついに路上へとあふれ出てきた。革新のスピードに、人間の倫理観は追いついているだろうか。
 ただ、「ここでこんなことが起きている」、「こんな助けが欲しい」という声が、瞬時にネットを通して地球の裏側まで届く時代でもある。大切なのはその不条理に沈黙せず、「助けて」の声に応答できる社会に成長できるかなのだろう。人間を諦めるにはまだ早すぎる。そんな気持ちで新たな時代に臨みたい。

宮崎県、島野浦の夜明け。境界線のない、自由な海が好きだ。
君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

安田菜津紀

2016/04/22発売

シリアからの残酷な映像ばかりが注目される中、その陰に隠れて見過ごされている難民たちの日常を現地取材。彼らのささやかな声に耳を澄まし、「置き去りにされた悲しみ」に寄り添いながら、その苦悩と希望を撮り、綴って伝える渾身のルポ。

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考える人とはとは

 はじめまして。2021年2月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、金寿煥と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただきありがとうございます。
「考える人」との縁は、2002年の雑誌創刊まで遡ります。その前年、入社以来所属していた写真週刊誌が休刊となり、社内における進路があやふやとなっていた私は、2002年1月に部署異動を命じられ、創刊スタッフとして「考える人」の編集に携わることになりました。とはいえ、まだまだ駆け出しの入社3年目。「考える」どころか、右も左もわかりません。慌ただしく立ち働く諸先輩方の邪魔にならぬよう、ただただ気配を殺していました。
どうして自分が「考える人」なんだろう―。
手持ち無沙汰であった以上に、居心地の悪さを感じたのは、「考える人」というその“屋号”です。口はばったいというか、柄じゃないというか。どう見ても「1勝9敗」で名前負け。そんな自分にはたして何ができるというのだろうか―手を動かす前に、そんなことばかり考えていたように記憶しています。
それから19年が経ち、何の因果か編集長に就任。それなりに経験を積んだとはいえ、まだまだ「考える人」という四文字に重みを感じる自分がいます。
それだけ大きな“屋号”なのでしょう。この19年でどれだけ時代が変化しても、創刊時に標榜した「"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という編集理念は色褪せないどころか、ますますその必要性を増しているように感じています。相手にとって不足なし。胸を借りるつもりで、その任にあたりたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

「考える人」編集長
金寿煥

著者プロフィール

安田菜津紀

1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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