2021年7月8日
3. 私たち一生「グリーン」
著者: ブレイディみかこ , ヤマザキマリ
60万部を超えるヒットとなった『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の文庫化を記念して、ブレイディみかこさんとヤマザキマリさんによる対談「パンク母ちゃん」の第3回をお届けします。 「こんな話をしたのは初めて」というヤマザキさんに、「今日が初対面だとは思えない」というブレイディさん。最終回となる今回は、数々の修羅場をくぐり抜けてきたふたりが目指す“境地”について。「一生グリーンであり続ける」とは、どういうことなのか!?(編集・構成:「考える人」編集部)
記事をそれぞれ単体で買うと1本500円×3=1500円ですが、全3回を【1000円】で読めるお得な有料マガジンもございます。マガジンを最初に購入すると、すでに配信されている第1回、第2回を追加購入することなくお読みになれます。
(前回の記事へ)
We love トラック野郎
ヤマザキ ブレイディさんのお連れ合いはトラック運転手なんですよね?
ブレイディ もともとシティ(註:ロンドンの金融街)の銀行に勤めていたんですけど、リストラされて。他の金融関係の仕事に就くかなと思ったのですが、そこでの人間関係に疲れていたみたいです。労働階級出身で、子どもの時にトラックの運ちゃんに憧れていたこともあって、あっさり大型ダンプの運転手に。運転している時は基本ひとりじゃないですか、そういうところも性に合っていたみたい。
ヤマザキ 私も子どもの時から映画の「トラック野郎」が大好きで(笑)
ブレイディ えー! まだ共通点があるの?
ヤマザキ 桃次郎(註:菅原文太演じる主人公の名前)ですよ。DVDは全巻持ってて、イタリアとポルトガルの家にそれぞれ常備してある(笑)。落ち込んでいる時に観るんです。フェリーに乗るのが好きだったんですが、それはトラックの運転手さんがいっぱいいるから。
ブレイディ もはやフェチだ。
ヤマザキ トラックの運転手っていろんな方がいらっしゃるけど、みなさんどこか朴訥として真面目じゃないですか。命削って仕事しているし。実際にトラック運転手さんと忘れられない思い出もありますね。中には、一瞬だけど恋愛に発展するかも、というぐらいの出会いがあって。
ブレイディ ヤバい。私たち詩人とトラック野郎を愛している(笑)
ヤマザキ 私が今まで出会ったなかで、忘れられない運転手は……。
ブレイディ その話も聞けちゃうんだ(笑)
(おわり)
ブレイディみかこ×ヤマザキマリ「パンク母ちゃん」全3回概要
1.パンクな母ちゃんとクレバーな息子たち
我らパンク母ちゃん/貧乏でもクールになれる国/着物で外国人を落とせる!?/恋愛にナショナリティを持ち込むな/海外への根深い劣等感/勝手に育った息子たち/エンパシーへの風通し/「こういうことは世界のどこに行ってもある」/「どこでもアウェー」な息子たちをリスペクト
2. 詩人と本気で恋をした
詩人はダメ、絶対/アイルランドの詩人はヤバい/「私もアイルランド人と……」/イタリアの詩人、その後日談/悲劇もすべて笑い飛ばす
3. 私たち一生「グリーン」
We love トラック野郎/イギリスでの出産経験/私たち一生グリーン/パンクよ、ありがとう
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ブレイディみかこ
ライター・コラムニスト。1965年生まれ。福岡県出身。音楽好きが高じてアルバイトと渡英を繰り返し、1996年から英国ブライトン在住。ロンドンの日系企業で数年間勤務したのち英国で保育士資格を取得、「最底辺保育所」で働きながらライター活動を開始。2017年『子どもたちの階級闘争』で新潮ドキュメント賞を、2019年『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』でYahoo!ニュース|本屋大賞2019年ノンフィクション本大賞などを受賞。他の著書に『THIS IS JAPAN』『ヨーロッパ・コーリング』『女たちのテロル』『ブロークン・ブリテンに聞け』『女たちのポリティクス』『他者の靴を履く』などがある。
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ヤマザキマリ
1967年東京都生まれ。漫画家・文筆家・画家。東京造形大学客員教授。1984年にイタリアに渡り、フィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻。比較文学研究者のイタリア人との結婚を機にエジプト、シリア、ポルトガル、アメリカなどの国々に暮らす。2010年『テルマエ・ロマエ』で第3回マンガ大賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。2015 年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。2017年イタリア共和国星勲章コメンダトーレ綬章。著書に『プリニウス』(新潮社、とり・みきと共著)、『オリンピア・キュクロス』(集英社)、『ヴィオラ母さん』(文藝春秋)、『パスタぎらい』(新潮社)、『扉の向う側』(マガジンハウス)など。
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とは
はじめまして。2021年2月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、金寿煥と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただきありがとうございます。
「考える人」との縁は、2002年の雑誌創刊まで遡ります。その前年、入社以来所属していた写真週刊誌が休刊となり、社内における進路があやふやとなっていた私は、2002年1月に部署異動を命じられ、創刊スタッフとして「考える人」の編集に携わることになりました。とはいえ、まだまだ駆け出しの入社3年目。「考える」どころか、右も左もわかりません。慌ただしく立ち働く諸先輩方の邪魔にならぬよう、ただただ気配を殺していました。
どうして自分が「考える人」なんだろう――。
手持ち無沙汰であった以上に、居心地の悪さを感じたのは、「考える人」というその“屋号”です。口はばったいというか、柄じゃないというか。どう見ても「1勝9敗」で名前負け。そんな自分にはたして何ができるというのだろうか――手を動かす前に、そんなことばかり考えていたように記憶しています。
それから19年が経ち、何の因果か編集長に就任。それなりに経験を積んだとはいえ、まだまだ「考える人」という四文字に重みを感じる自分がいます。
それだけ大きな“屋号”なのでしょう。この19年でどれだけ時代が変化しても、創刊時に標榜した「"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という編集理念は色褪せないどころか、ますますその必要性を増しているように感じています。相手にとって不足なし。胸を借りるつもりで、その任にあたりたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
「考える人」編集長
金寿煥
著者プロフィール
- ブレイディみかこ
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ライター・コラムニスト。1965年生まれ。福岡県出身。音楽好きが高じてアルバイトと渡英を繰り返し、1996年から英国ブライトン在住。ロンドンの日系企業で数年間勤務したのち英国で保育士資格を取得、「最底辺保育所」で働きながらライター活動を開始。2017年『子どもたちの階級闘争』で新潮ドキュメント賞を、2019年『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』でYahoo!ニュース|本屋大賞2019年ノンフィクション本大賞などを受賞。他の著書に『THIS IS JAPAN』『ヨーロッパ・コーリング』『女たちのテロル』『ブロークン・ブリテンに聞け』『女たちのポリティクス』『他者の靴を履く』などがある。
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- ヤマザキマリ
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1967年東京都生まれ。漫画家・文筆家・画家。東京造形大学客員教授。1984年にイタリアに渡り、フィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻。比較文学研究者のイタリア人との結婚を機にエジプト、シリア、ポルトガル、アメリカなどの国々に暮らす。2010年『テルマエ・ロマエ』で第3回マンガ大賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。2015 年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。2017年イタリア共和国星勲章コメンダトーレ綬章。著書に『プリニウス』(新潮社、とり・みきと共著)、『オリンピア・キュクロス』(集英社)、『ヴィオラ母さん』(文藝春秋)、『パスタぎらい』(新潮社)、『扉の向う側』(マガジンハウス)など。
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