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おかしなまち、おかしなたび 続・地元菓子

2019年3月21日 おかしなまち、おかしなたび 続・地元菓子

おかしなたび 

輪島 その1

たびのきほんはあるくこと。あるいてみつけるおかしなたび。

著者: 若菜晃子

3月の能登半島へは飛行機で。雪の多い年だったせいか、北アルプスはまだ白銀の世界でした。あれが立山連峰だろうかと眺めているうちに山々が裾を引いて去っていきます。空と海のあわいをゆく翼。
到着早々いつものお餅ネタで恐縮ですが、北陸といえば昆布餅。白餅に昆布が入った香ばしいお餅です。江戸中期から栄えた北前船の名残で、今もお餅のみならずお煎餅にもパンにもお菓子にも、昆布の姿が見え隠れしています。
町に貼られたポスターには土地ならではの楽しい年中行事が垣間見えます。雪割草(ミスミソウ)は日本海側の山に多く、人々に春の訪れを告げる可憐な花。山を歩くとお腹が減りますので、蕎麦と抱き合わせでどうぞ。
そしてまた新しいお餅を発見してしまった。大福餅との表記でしたが、加賀の婚礼菓子五色生菓子には「日」を表すこの紅の餅が入るので、緑の餅もその一環では。おそらく地元菓子店が受けた引出物の注文の余りとみました。
輪島といえば朝市ですが、あいにくの冷たい雨で人出も出店もまばら。おばちゃんはあおさに幅のりを大サービスして売り切ると、携帯で迎えの車を呼んですばやく店を撤収して帰っていきました。輪島のあおさはおいしいよ。
輪島に来ると買う『大畑の塩煎餅』。南部煎餅に似た小麦粉の薄焼煎餅です。千枚田で知られる能登は耕地が限られるので米が貴重だったんですね。「先代より夫婦で一枚一枚焼いています」という裏書きもおいしさのひとつ。
ミニスーパーでは以前お盆の頃に「すいぜん」なるものがあって、お店の人に尋ねて困った顔をされたのですが、水膳とは餅粉を寒天で固めた仏事の際の精進料理でした。今日は取り置きの食パンが人待ち顔でぽつねんと。
能登は岩石海岸で海藻類が採れるため、30種類もの海藻を食用にしてきたとか。食堂のお味噌汁の具は朝市でも見かけたつるも。ツルツル食感が快く、1年以上干さないと食べられないと聞いてつい大量買い。
春の雨はしとしと、なかなか降り止まず。さしている傘にもおじさんの雨合羽にも海にそそぐ川面にも。旅の時間が流れてゆきます。朱塗りの人家の間の細道を抜けて、次はどこへゆこうか。

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考える人とはとは

何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長
松村 正樹

著者プロフィール

若菜晃子

1968年神戸市生まれ。編集者。学習院大学文学部国文学科卒業後、山と溪谷社入社。『wandel』編集長、『山と溪谷』副編集長を経て独立。山や自然、旅に関する雑誌、書籍を編集、執筆。著書に『東京近郊ミニハイク』(小学館)、『東京周辺ヒルトップ散歩』(河出書房新社)、『徒歩旅行』(暮しの手帖社)、『地元菓子』『石井桃子のことば』(新潮社)、『東京甘味食堂』(本の雑誌社)、『街と山のあいだ』(アノニマ・スタジオ)他。『mürren』編集・発行人。

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