
#検察庁法改正に抗議します というハッシュタグとともに、多くの声がSNS上であがっている。黒川弘務東京高検検事長の不可解な定年延長、議事録さえ残されていない法解釈変更、そのつじつまを合わせるかのように提出された今回の法案と、新型コロナウイルス対策に追われている中での拙速な審議、この積み重ねが、怒りのうねりとなったのだろう。
これまであまり政治に対する意見を表明してこなかったような著名人の方々も、 次々と自分の意思を示し、「おかしい」と声をあげた。けれども彼ら、彼女たちに対し、「何も分かってないくせに」「芸能人には関係ない話」と、嘲笑が目的化しているような声も目立った。それは、スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんに対して、寄ってたかって誹謗中傷したり、高みから揶揄するような言葉を投げつけたりする大人たちの姿と重なる。確かに、問題を紐解いていく「冷静」さは必要かもしれない。ただ、単なる「冷笑」で社会がよくなるわけではない。
私もいまだに、「写真家がなぜ政治に発言するんだ?」と時折聞かれることがある。そして今、似たような言葉が溢れている。「歌手がなぜ」「俳優がなぜ」と。そもそも、政治的発言をタブー視すること自体が、とても“政治性”を帯びた行為だということに気づきたい。「発言するな」ということも、ひとつの政治的なスタンスだからだ。そしてこうした声はたいてい、政権に批判的な声をあげたときにあがる。この「歌手が」「俳優が」政治を語るな、という言葉がエスカレートしていくと、「政治家でもない人間が政治を語るな」に行きついてしまうはずだ。
こうしたバッシングの嵐が起きるからこそ、「政治に発言すると“色がつく”」、と避けがちな風潮は根強い。しかし、その沈黙が重なると、気づけば「茶色の朝」を迎えることになってしまう。フランク・パヴロフ作の寓話『茶色の朝』は、大きな力に抗うことをせず、気づけば「茶色」しか許されなくなってしまった社会の姿が描かれている。私たちが明日も「色とりどりの朝」を迎えるためには、その彩を与えてくれる多様な声が必要なのだ。

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安田菜津紀
1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。
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とは
はじめまして。2026年7月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、松本太郎と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。
2002年7月4日、季刊誌「考える人」が創刊されました。
目次には当代随一の執筆陣がずらりと並び、B5判240ページの誌面の隅々から知の香りが立ちのぼってくるかのようでした。
当時、入社3か月の営業部員だった私は、見上げるような思いで手に取り、発売日には編集長の松家仁之さんと創刊のご挨拶のために書店にうかがいました。
まだ書店訪問にも慣れておらず、編集長ともほぼ初対面の中、次のお店の約束の時間に間に合うだろうかと時計ばかりが気になって、終始、そわそわしていました。そんな私に松家さんがやわらかな笑顔で接してくれたこと、そして、新雑誌の門出を祝うようなすっきりと晴れた一日だったことを覚えています。
あれから四半世紀が過ぎ、ウェブマガジンとして衣替えした今でも、創刊時に掲げられた「Plain living, high thinking(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という言葉は古びていません。AIに尋ねれば瞬時に答えが返ってくる時代だからこそ、それらしい言葉に飛びつくのではなく、自分の頭で考え、心の声に耳を澄ませることの大切さは増しているように感じます。
創刊号には、養老孟司さんのロングインタビューが掲載されています。養老さんはその中で、恩師である中井準之助先生の口癖だった「人の心がわかる心を教養という」という言葉を紹介しています。
読んだ瞬間に立ち止まり、さまざまな思いが湧き上がってくるような文章に、楽しみながら出会える場であり続けたいと思っています。
「考える人」編集長
松本太郎
著者プロフィール
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- 安田菜津紀
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1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。
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