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Rhythm & Rhymes

2017年8月30日 Rhythm & Rhymes

一生の中で何を学び、何を糧にして生き、何を遺していけるか。

著者: D

 僕が選んだ本は「聖書」です。Dの世界観、ならびに自分のアイデンティティのベースでもあります。Dの楽曲としてそれが色濃く反映されているのは沢山ありますし、全ての楽曲に当てはまるともいえます。敢えて上げるならば「楽園」「EDEN」「GOD’S CHILD」「カナン~約束の地~」「Eve(エバ)の系譜」などがそれに当たります。

 聖書は古代から現代という長い期間、世界で最も多く読まれてきた本です。二千以上もの言語に翻訳され、世界中に伝わった聖書は時に人の心を癒し、また迷いに手を差し伸べてくれます。それ故に迫害もされてきましたが、現在でも年間数千万~数億とも言われる数の聖書が印刷されているとのことです。宗教という概念を抜きにしても学ぶべきことは多々描かれているので、是非一度は手にし、目を通してほしい一冊だと僕は思っています。聖書は音楽や絵画、彫刻や文学など、多くの芸術に影響を与えてきました。現代でも一見聖書とは無関係な作品に見えても、実は聖句であったり、聖書の教えからヒントを得ているものは沢山あります。映画やゲーム、物語に登場する人物像も色濃く反映されています。僕が音楽を通して伝えたい心の中には常々聖書があります。

 人間は不完全ですので染みひとつない、真っ白な心にはなれません。ポツンと生まれた黒い点が拡がる前に僕は問うのです。ただし聖書といっても様々な宗教、宗派によっては考え方や捉え方も異なります。今の時代「神なんていない」そう思う人は少なくありません。それでもそう思うのは心の中では誰かに救いを求めて叫んでいるからではないでしょうか。誰もが悲しむことのない世界は難しいです。それでもいつか命が尽きる時に悔いのない生き方ができれば、心は救われるはずです。自分の人生という道を歩むのは自分だけです。一生の中で何を学び、何を糧にして生き、何を遺していけるか。自分自身が描くたった一つの史実は「神のみぞ知る」と言うことなのでしょう。

 

 色んなところでメンタルが強い人は有利に物事を運べているのかな、と考える事もあり、自分自身はどうなのか、強いメンタルを持てるのかと考え「鋼のメンタル」を読む事にしました。読んで感じた事は、失敗や物事がうまくいかなかった時に「大丈夫だよ、その失敗から成長するのですよ」と言葉に出して言ってくれているかのように感じました。

 誰にでも訪れた事のある、失敗した時の事や嫌な思いをした時に、どのように感じそれを学ぶか。著者の百田さんの経験と考えは非常に興味深く、誰でも傷つくし誰でも立ち直れる、という言葉に共感しました。やはり自分も色んな失敗をして臆病になった経験もありますし、それが元で逆にやってみないと何も進まないと考えるようにもなりましたので、この本には百田さんの文章からたくさんの嬉しい言葉が溢れていました。

 例えばゲームなどは負けがあるからこそ勝つ事が楽しい、頑張って努力して負けてしまっても、逆説的に言えば負けるのも楽しんでいるという言葉があり、楽しめるからこそ人生も先にいけるのだと背中を押してくれているようです。
 失敗からいかにして立ち直るかという事を色んな事例を誰にでも想像出来る言葉で書いてあるので、自分自身今後の人生や音楽活動の中で何か切り開く参考になるかもしれないと考えました。もしも今、少し元気がない人や悩み事がある人には何か切り開くきっかけになるかもしれない。そう思わせてくれた本でした。

鋼のメンタル
百田尚樹/著
2016/08/11発売

 

 「燃えよ剣」…幕末期、鬼の副長と怖れられたと云われる土方歳三が、農家の息子として武士になりたいと憧れ、剣の修行に明け暮れる日々を描いた多摩時代…そして、京都に渡り、街中の治安を守る為にと結成された新選組という組織を束ね優れた才を発揮する京都時代。さらに激動の中、北へと転戦し続け、五稜郭で命を散らす最期までを描いたこの作品。

 ただ、歴史を舞台に描いた物ではなく、そこには登場人物の人間くささ、立場は違う中で通わせる心の交流…どうしても戦わなければならなかった理由、更には切ないほど苦しくなる恋の話まで息づかいを感じられるようなリアル感も得られる。

 司馬遼太郎先生による歴史小説の中で最も好きな作品と言えます。そして数多ある「新選組」を題材とした書物の中で僕が今までに最も多く読み耽った本です。

 初めて読んだのは10代の頃で当時中学生だった僕は剣道部に所属しており、稽古の際に抱く己の剣に対する想い…そして強くなりたいという少年期ならではの馳せる想いを、主人公の土方歳三に重ねてしまうこともしばしばありました。

 それこそ、僕の人生にかなり影響を与えたと言っても過言ではありません。

 一生の中で感銘を受け、後々までに自身に影響を与えられる程の作品に出逢うことはこの先、何度あることでしょうか。
 そのような素晴らしい作品に触れますと、僕もより一層音楽家として人に感動を与えられる作品を作り出し、演奏を心掛けたいと強く思うものです。

燃えよ剣
司馬遼太郎/著
1972/05/30発売

 

 この小説を最初に読んだのは小学校の頃で、元々は兄がTM NETWORKが好きで自分も曲を聴かせてもらうようになり、それで興味を持った、
というのがキッカケでした(作者の木根尚登さんはTM NETWORKのメンバー)。

 「CAROL」をコンセプトとし、楽曲だけでなく小説も展開されていたので子供ながらにすごくワクワクしたのを覚えています。内容はとてもファンタジックで、主人公の女の子・キャロルが、自身の周りや住んでいる街から音が消えていく=「音が盗まれている」ということに気付き、音を取り返すために別の世界へ冒険をする…というストーリー。

 当時、自分はまだベースに触れた事もなく、音楽の道へ進むということは想像もつかなかったのですが、自分の周りから音が無くなっていく、楽器や音楽や全ての音が無くなるってどういう感覚なんだろう?というのを考えながら読み進めていき、気が付けばすっかり小説の世界観に入り込んでいました。
 「この曲の歌詞は、小説のこの部分のことを指しているんだ!」という発見もあったり、TM NETWORKのメンバーも物語の中に登場したりして、色々な楽しみ方があったなぁと思います。

 今、自分がDというバンドのメンバーとして音楽を作っていて、「音(楽曲)を届ける」ということをより深く考えようになり、届ける事が出来る嬉しさや、音が溢れている素晴らしさというものを日々感じています。

 どんな世界にも連れて行けるような、夢のある音を届けられるようにもっと頑張らねば!
 気合いを入れて精進していきますよ!

CAROL(キャロル)
木根 尚登/著
1991/04発売

 

 「星の王子さま」は、自分も幼少期に一度読んだのを覚えていますが、まだ幼かった事もありこの本の作者が伝えたい事を全て理解する事は出来ませんでした。

 本文中に登場するキツネの言葉「きみのバラをかけがえのないものにしたのは、きみが、バラのために費やした時間だったんだ」という言葉。
 出会いもあれば別れもありますが、人との出会いや対話の中での成長、自分で育んできたものが他より劣っているとしても、それは自分にとってかけがえのない財産であるという事、本当に大切なものは目には見えずとも心で感じとれるという事。出会ってから同じ時間を共有することによって生まれる心の繋がり、お互いが別れることになろうとも、一緒に過ごした時間は互いにとってかけがえのないものであるという事は王子さまとバラの関係性そのものだなとさえ思えます。

 また、これもキツネの言葉ですが「ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない」という言葉も強く印象に残っています。大切なものだからこそ埋もれやすく気付きにくいものだと感じましたし、そうした事に気付けるように自分の心をもっと育てていこう。

 大人になると忘れがちですが自分が今までの人生でやってきた努力は決して無駄ではないですし、その努力はいつか報われると思うんです。だからすぐに諦めたりしないで自分の信じる道を進んでもらいたいです。

 大人になって様々な経験や体験を経てから改めてこの本を読んで、本当に大切なものに気付く事が出来ました。児童書という印象が強い本ですが、大人になったからこそ読んでほしい一冊です。

星の王子さま
サン=テグジュペリ/著
2006/04/01発売

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考える人とはとは

 はじめまして。2021年2月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、金寿煥と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただきありがとうございます。
「考える人」との縁は、2002年の雑誌創刊まで遡ります。その前年、入社以来所属していた写真週刊誌が休刊となり、社内における進路があやふやとなっていた私は、2002年1月に部署異動を命じられ、創刊スタッフとして「考える人」の編集に携わることになりました。とはいえ、まだまだ駆け出しの入社3年目。「考える」どころか、右も左もわかりません。慌ただしく立ち働く諸先輩方の邪魔にならぬよう、ただただ気配を殺していました。
どうして自分が「考える人」なんだろう―。
手持ち無沙汰であった以上に、居心地の悪さを感じたのは、「考える人」というその“屋号”です。口はばったいというか、柄じゃないというか。どう見ても「1勝9敗」で名前負け。そんな自分にはたして何ができるというのだろうか―手を動かす前に、そんなことばかり考えていたように記憶しています。
それから19年が経ち、何の因果か編集長に就任。それなりに経験を積んだとはいえ、まだまだ「考える人」という四文字に重みを感じる自分がいます。
それだけ大きな“屋号”なのでしょう。この19年でどれだけ時代が変化しても、創刊時に標榜した「"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という編集理念は色褪せないどころか、ますますその必要性を増しているように感じています。相手にとって不足なし。胸を借りるつもりで、その任にあたりたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

「考える人」編集長
金寿煥

著者プロフィール

D

2003年4月結成。2005年Tsunehitoが加入。活動の幅を広げ、動員やセールスを増やし注目を集める。
メンバーはASAGI(Vo)、Ruiza(G)、HIDE-ZOU(G)、Tsunehito(B)、HIROKI(Dr)。
アルバム「The name of the ROSE」や「Tafel Anatomie」など、ドラマ性を持った作品を次々に発表。
リリースされるCDが軒並みオリコンインディーズチャート1位を獲得。総合チャートでも上位を記録し、2006年末には渋谷C.C.Lemonホールをソールドアウト! 2007年7月・8月と、和と洋をコンセプトにシングルを連続リリースし、ともにオリコンチャートの上位を記録!
また、全国ツアー「Neo culture」(ツアーファイナル:日比谷野外大音楽堂)を大盛況のうちに終了。
11月7日には約1年ぶりのNew Al.「Neo culture」~Beyond the world~をリリース。
オリコンインディーズチャート2位、総合チャート31位を記録。リリースを記念して全国ツアーを行う。
ツアーファイナルZepp TOKYO公演にてメジャーデビュー発表!!
2008年4月〜5月に行われたラストインディーズツアー(全国22公演)も軒並みソールドアウト!
そして2008年5月7日シングル「BIRTH」でメジャーデビュー。オリコン週間シングルチャート(5/17付)にて自身最高位となる8位獲得。

D OFFICIAL SITE>>


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