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Rhythm & Rhymes

2017年10月31日 Rhythm & Rhymes

私はいつも服によって助けられ、こうして今でもおしゃれを楽しんでいる。

著者: 野宮 真貴

 作者のアイリーン・ベッカーマンさんは、人生で着てきたほとんどすべての服を記憶していて、それをイラストに描き、その時々の思い出をエッセイとして書き添えている。N.Y.の広告代理店で辣腕を振るう彼女は、幼いころの母の死、結婚、愛する娘との死別、2度の離婚を経験し、決して平凡とは言えない人生を送ってきた。そして彼女を時に支え、時に生活を彩ってきた数々の洋服を通して語られるシンプルで端正なエッセイは、時に胸に迫り、感動さえも覚える。

 この本を読んだ時、遠方から来た旧友に出会ったような気持ちになった。私も彼女と同じく、これまで着てきた服のほとんどを記憶しているし、私もどこかに行く時、何かをする時、最初に洋服のことを考えているからだ。

 そしてベッカーマンさんとのもう一つの共通点は、私の母も裁縫が得意で、子供の頃はいつも妹とお揃いの可愛らしい洋服を作ってくれたこと。母は、服に関しては「似合っていれば、人と同じでなくていい」ということに大きな価値を置いていた。だから小学校のときは、私がデザインした一風変わったワンピースを「素敵ね!」と言って上手くアレンジして縫ってくれたし、中学校の制服は「面白くない」という理由で勝手にミニスカートに改良してしまった。おかげで私は、不良の先輩たちから呼び出しを受けたりしたものだ。

 そんな母の影響か、学生の時もOLの時もミュージシャンになってからも、自分の好きな服を自由に着てきた。洋服が大好きなこともあるが、いつも気に入った自分らしい服を着ていないと居心地が悪くて、自分が自分と思えないのだ。

 服はその人の履歴書だ。人生の場面場面で選んで着てきた服には、それぞれの想い出と、ちょっと大げさだが、その時の自分の生きる姿勢みたいなものが宿っている。初めてのデートの時に着た真っ赤なワンピース。初めて音楽オーディションを受けた時の衣装、大人に見られたくてバイトでお金を貯めて買ったハイブランドのコート。そして、ミュージシャンになってから1000着以上は着たであろう素敵な衣装の数々は、ステージでのパフォーマンスにいつもたくさんの自信をくれる。私はいつも服によって助けられ、こうして今でもおしゃれを楽しんでいる。

 私もミュージシャンの傍ら、おしゃれについてのエッセイを書いているが、今の目標は、野宮真貴の「あのときわたしが着ていた服」を書くことである。もうすぐ還暦になろうとする私が、これまで着てきた洋服をイラストに描くことで、私の人生そのものを伝えられると思うのだ。

あのときわたしが着ていた服

アイリーン ベッカーマン/著
河野 万里子/翻訳

1997/10

おしゃれはほどほどでいい

おしゃれはほどほどでいい

野宮真貴

2017/10/25発売

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“Plain living, high thinking”(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長
松村 正樹

著者プロフィール

野宮 真貴

「ピチカート・ファイヴ」3 代目ヴォーカリストとして、90年代に一世を風靡した「渋谷系」ムーブメントを国内外で巻き起こし、 音楽・ファッションアイコンとなる。 2010 年に「AMPP 認定メディカル・フィトテラピスト(植物療法士)」の資格を取得。2017年はデビュー36周年を迎え、現在音楽活動に加え、ファッションやヘルス&ビューティーのプロデュース、エッセイストなど多方面で活躍中。10月にニューアルバム「野宮真貴、ホリデイ渋谷系を歌う。」をリリース。11月には同タイトルのLIVEを東京、名古屋、大阪、福岡にて開催する。またエッセイ第2弾本「おしゃれはほどほどでいい」(幻冬舎刊)、JINSとコラボした「美人リーディンググラス」が好評発売中。

野宮真貴 OFFICIAL SITE>>

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