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村上RADIO

2020年5月25日 村上RADIO

明るいあしたを迎えるための音楽 2

著者: 村上春樹

The second half of Murakami Radio: “Music for a Brighter Tomorrow” by HARUKI MURAKAMI is here;

村上春樹さんがDJを務める「村上RADIO特別編 ステイホームスペシャル~明るいあしたを迎えるための音楽~」が、2020年5月22日(金)にTOKYO FM/JFM38局ネットで放送されました。

新型コロナでたいへんな日々を過ごしている皆さんを音楽の力で明るくできれば、という村上さんの発案でこの特別編が生まれました。

今回、TOKYO FMの協力をいただいて「村上RADIO特別編 ステイホームスペシャル~明るいあしたを迎えるための音楽~」の番組内容を、日本語と英語両方のバージョンで掲載いたします。海外の村上ファンにも英訳で楽しんでいただけたら幸いです。それでは後半です。

(PART1はこちら

医療現場で働く方々に感謝を

10. Eric Clapton: Smile

村上春樹「村上ラジオ」Eric Clapton Smile

 村上RADIO。今夜は僕、村上春樹が自宅の書斎からステイホームでお届けしています。エリック・クラプトンが歌う"Smile"。チャーリー・チャップリンの作ったとても美しい曲です。これは1974年にロンドンのハマースミス・オデオン劇場でおこなわれたコンサートでのライブ録音です。コンサートの最初の曲が、この"Smile"なんですね。すごいですねえ。なんか、すごいと思いませんか?
 微笑みって大事ですよね。クラプトンさんも人生のいろんな荒波を乗り越えて生き延びてきただけあって、歌に特別な説得力があります。

11. Al Jarreau: My Favorite Things Featuring Kathleen Battle

村上春樹「村上RADIO」

 ジャズ・シンガーのアル・ジャロウとオペラ歌手のキャスリーン・バトルがデュエットで歌う"My Favorite Things"です。私の好きなものたち。
 僕にもいろんな好きなものがあります。たとえば、レイモンド・チャンドラーのミステリー、冬の鍋焼きうどん、猫の肉球、新しいジョギング・シューズ、コンサート開始を告げるベル、車内の明かりが数秒消えていた頃の地下鉄銀座線、などなど…あなたはどんなものが好きでしょう? 好きなものを並べてリストにして、世の中が落ち着くのを待ちましょう。

12.小野リサ: She Wore a Yellow Ribbon

村上春樹「村上RADIO」小野リサ;She Wore A Yellow Ribbon Ono Lisa

 次は医療の現場で働いておられるみなさんに、僕からこの曲を贈りたいと思います。黄色いリボンはつけていませんが、遠くから応援しています。本当に大変なお仕事だと思います。がんばって下さい。

 小野リサさんが歌う「黄色いリボン」。“She Wore A Yellow Ribbon”、ジョン・フォードの映画「黄色いリボン」の主題歌ですね。この歌の中の女性は、遠く離れたところにいる恋人のために、冬の日にも、眩しい五月の日にも、いつだって黄色いリボンを首に巻いています。あるいはそれで髪を結んでいます。たとえ遠くに離れていても、そういう恋人がいるといいですね。小野リサさんのこの歌を聴いていると、なんだかほのぼのと温かい気持ちになれます。僕は走りながら、この歌をよく聴いています。

 でも、ちょっと思ったんですけど、医療の現場で働いておられる方に感謝し、応援するために黄色いリボンをつけるって、ひょっとしていいアイデアかもしれませんね。

13. Nancy Wilson: Happy Talk

村上春樹「村上RADIO」Nancy Wilson; Happy Talk

 ナンシー・ウィルソンがキャノンボール・アダレイのクインテットをバックに、“Happy Talk”を歌います。とにかくハッピーな話をしようよ、という歌です。

14. Brian Wilson: They Can't Take That Away From Me

村上春樹「村上RADIO」Brian Wilson; They Can't Take That Away From Me

 次はジョージ・ガーシュインの古いスタンダード・ソングですが、ブライアン・ウィルソンがポップな編曲でいかにも楽しそうに歌っています。“They Can't Take That Away From Me”、誰も僕から奪えない。何を奪うことができないのかというと、それは「僕が大事に持っている君の思い出」です。

 思い出って大事ですよね。もし思い出がなかったら、人生なんてかさかさの砂漠みたいなものです。みなさんもいっぱい思い出を増やしてください。歳を取ってからずいぶん役に立ちますよ。

15. Tony Bennett: Put on a Happy Face

村上春樹「村上RADIO」Tony Bennett + James Taylor; Put on a Happy Face

 “Put on a Happy Face”、幸せな顔で行こう。これ、僕はあえて「しけた顔はよそうぜ」と訳したいですね。このトニー・ベネットとジェームズ・テイラーの掛け合いはすごく生き生きしています。本当に二人で一緒に録音したんでしょうか。それとも別々に録音して、あとでひとつに合せたのでしょうか。そのへんは僕もよくわかりませんけど、とても自然に息が合っています。「知り合いに、すげえしけた顔した女の子がいてさ」「ああ、そうそう、その子、僕も知ってるよ」、みたいな愉快な掛け合いがあります。僕らもしけた顔、むずかしい顔はできるだけよしましょうね。Put on a Happy Faceです。

16. Fred Lowery: Over the Rainbow

村上春樹「村上RADIO」Fred Lowery; Over the Rainbow

 口笛のプロ、フレッド・ロウリーさんが「虹の彼方に」を口笛で吹きます。これ、なかなか聴かせます。聴いてみてください。とくに最後の締めくくりなんて、かっこいいですよ。

17.Peggy Lee with Benny Goodman: We'll Meet Again

村上春樹「村上RADIO」Peggy Lee with Benny Goodman; We'll Meet Again

 次はペギー・リーがベニー・グッドマン楽団と一緒に歌います。“We'll Meet Again”。これは1942年のヒットソングです。1942年といえば戦争のまっただ中です。だからこれは、兵隊として戦地に赴く恋人を送る歌なんです。そう思って聴くと、なんだか心に沁みます。

 コロナとの戦いは戦争のようなものだ、そういう言い方をする政治家がいます。でも僕はそういうたとえは正しくないと思う。ウイルスとの戦いは、善と悪、敵と味方の対立じゃなくて、ぼくらがどれだけ知恵を絞って、協力し合い、助け合い、それぞれをうまく保っていけるかという試練の場です。殺し合うための力の戦いではなく、生かし合うための知恵の戦いです。敵意や憎しみは、そこでは不要なものです。簡単に戦争にはたとえてほしくない。そうですよね?

18. ジークリット・オネーギン: 君がみ声に我が心開く(Mon cœur s'ouvre à ta voix)

村上春樹「村上RADIO」

 最後にクラシック音楽をひとつかけます。僕がよく聴いている大好きな曲です。サン=サーンスの「あなたの声に私の心は開く」。歌劇『サムソンとデリラ』の中のアリアです。歌っているのはジークリット・オネーギン、スウェーデン出身のアルト歌手です。録音年月日はわかりませんが、たぶん1920年代、もちろんSP盤です。百年近く前の録音ですが、この声、心情がそのまま溢れていて、ほんとに美しいです。とくにクライマックスが素晴らしい。これを聴くと時を超えて、いつも胸が熱くなります。愛の歌です。聴いて下さい。

村上春樹「村上RADIO/村上ラジオ」TOKYO FM 絵・フジモトマサル

今回は「あなたがいま語りたいこと」「村上春樹さんと考えたいこと」ということでメッセージを募集しました。たくさん届いたので、紹介したいと思います。
ナナホコさん、50代の女性

ジョギング中、マスクは要らないと思うのですが、春樹さんはどうされていますか? つけて走るとかなり苦しいですよね?

 僕は毎日だいたい欠かさずに走っていますけど、僕の家は神奈川県のけっこう辺鄙なところにあるので、走っていて誰かとすれ違うってことがあまりないんです。東京都心とは違いますから。だから走るときには、基本的にマスクはしません。マスクして走るとけっこう息苦しいですよね。中国ではマスクをして運動したせいで、何人か亡くなったという話も聞きました。いずれにせよ、早くマスクなんかなしに気持ちよく走れる環境になるといいですね。プールにも行きたいですしね。

23歳、女性、あめさん

一人暮らしをしている学生です。実家には祖母がいるため、帰省を我慢しています…ずっと家に1人でいるととても孤独を感じます。村上さんは強い孤独を感じたときに何をしますか?

 僕は一人っ子だし、一人でいることはもともとあまり苦痛じゃないんです。人に会わなくても、人と話さなくても、あまり淋しいとは思いません。一人で本を読んだり、音楽を聴いたり、文章を書いたりしているのは好きですし。でも若いときに一度、二十歳の頃ですが、孤独の「どつぼ」みたいなところにはまっちゃったことがありまして、これはかなりつらかったです。本物の孤独というのはこれほど厳しいことなんだと、そのとき初めて実感しました。うーん、でもそういう時期を経験したおかげで、多くの大切なことが学べました。それは、「人は一人じゃ生きていけないんだ」ということです。人を求め、人に求められることの大事さです。あなたもきっと今は、そういうことを学ぶべき時期にいるのだと思います。今は我慢して、学ばれるといいと思います。時にはひとりぼっちになることも大事です。淋しいでしょうけど、がんばって下さい。トンネルには必ず出口があります。

30代、会社員の男性、ウォーターマウスさん

 学生の頃、就職活動で東京に出て、村上さんの小説を電車で読んでいたら隣の女性も同じ小説を読んでいて、今結婚することができました。どこかでお礼を言いたくて連絡させていただきました。

 コロナウイルスとはぜんぜん関係のない内容のメールなんだけど、ほのぼのしていていいので紹介させていただきます。何かのお役に立てたようで、僕としても嬉しいです。しかし今はソーシャル・ディスタンスみたいなものがあって、二メートル以内には近づきにくいから、隣の人が何を読んでいるかなんて、ちょっとわかんないですよね。今ではそういう出会いは成立しにくいかもしれません。残念ながら。でも、もしそれが平和な時代であって、電車で「カメムシの育て方」という本を読んでいたら、隣の席の女性もやはりたまたま「カメムシの育て方」を読んでいた…みたいなことになったら、どうしようかな? やっぱり声をかけるんでしょうかね? ちょっと考えどころですね。

40代、会社員の女性、ハクモクレンさん

 月が2つある世界に迷い込んでしまったような気分で日々を過ごしています。いまこの世界で起きていることを私たちはどんなふうにとらえればいいのか? 春樹さんならなんて言うだろう、春樹さんの言葉が聞きたいなって、ずっと思っていました。漠然と感じていらっしゃることでも構いません。シェアしていただけるととても嬉しいです。あと春樹さんのくだらない冗談がものすごく聞きたいです。

 はい、くだらない冗談ねえ…つい言っちゃうんです。イメージが悪くなるからよした方がいいって、よく言われるんですが、思いつくとつい口に出しちゃいます。うちでも奥さんに、「あなたには関西人の血が流れているから」っていつも言われてます。関西人だからみんな吉本系、というわけでもないと思うんだけどね。でもこういう時代だからこそ、笑う機会がなくなっちゃうと淋しいですよね。そうですね、空に月が二つあってもおかしくないような気がします。お互い、がんばって、そんな時代を生き抜いていきましょう。羊谷さんもがんばりましょうね。

30代の女性、つるなしいんげんさん

 「アフターコロナ」「ポストコロナ」という言葉を目にします。「世界の仕組みは変わってしまって、元には戻らない」とか「この変化の波に乗れない人は新しい時代を生きていけない」といった語られ方も見かけて、とても不安です。村上さんは「アフターコロナ」についてどう思われますか?

 うーん、今を生きるだけで大変なのに、「アフターコロナ」「ポストコロナ」と言われても、急にはよくわかんないですよね。でも僕がちょっと思ったのは、この「自粛期間」のせいで、僕らの生活にとって「なくてはならないもの」が何か、「なくても別に困らないもの」が何か…そういうことが少しずつ見えてきたんじゃないかな、という気がします。そういう意味では、ある種壮大な「社会的実験」みたいなものが、世界規模でおこなわれたんじゃないでしょうか。そしてその実験の成果は、これからじわじわと社会全体に広がっていくだろうという気がします。良くも悪くも。これまでの生活をもう一度あらためて見直すというのはたぶん良いことですよね。
 逆に怖いのは、いろんな意味で人々が閉塞的になってしまうことですよね。自分さえ良けりゃそれでいい…みたいな感じで。大きなところでいえば、それからグローバリズムが後退して、自分の国や地域だけで縮こまって、閉じこもってしまうとか。そういうのはちょっと怖いかもしれませんね。

40代の女性、紙の本が好きさん

 今回の新型コロナウイルスの流行で、図らずも自分の理想としていた生活を送っています。不可能だと思っていた家族のテレワークが実現し、子供とじっくり話す時間ができ、嫌でたまらなかった集まりは中止になりました。いつかこの状況はなくなるのだろうと考えると、寂しい気持ちになります。新しい生活に向かうのだと思えるようになるには、どんなことを思っていけば良いでしょうか。

 あなたの場合はきっと、今送られているようなシンプルな生活が、もともとの性格に合っていたんでしょうね。その感覚は、僕にもよくわかります。だから今の「コロナ環境下」の生活の良いところを残すようにして、「コロナ後」の新しい生活を築いていかれると良いと思いますよ。うまくいくといいですね。僕の場合「コロナ環境下」でも、正直なところ、普段の生活とそれほど変わりないんです。これまで一人で家でずっと仕事をしてきたわけですからね。ただ、TOKYO FMのスタジオで番組の収録ができないのは、ちょっと淋しいです。みんな、わりに和気あいあいとやっておりましたので。

自営業、50代の女性、茹で卵は半熟がお好きさん

 これまで春樹さんはオウムの事件の後や阪神淡路大震災の後、それに関連した作品を発表なさってきましたね。私たちの生命観や価値観を変えてしまう出来事の後に春樹さんの作品を読んで救われた気持ちになりました。今度もまた新型コロナウイルスに翻弄される私たちのために何か書いて下さい。

 何か大きな事件が起こったとき、小説家にはいくつかの取り組み方があると思うんです。「その事件を直接の題材として物語を書く」というのも、もちろん大事な作業になると思います。僕は「オウム真理教」事件のときには、『アンダーグラウンド』という本を書きました。その事件に関連した数多くの人々の実際の肉声を集めたもので、フィクションじゃありませんが、そこには間違いなく集団的な「物語性」みたいなものがあります。でも僕としては基本的に、「今ここで起こっていること」をそのまま書くのではなく、違う形の物語に置き換えていくことの方に、むしろ興味を惹かれます。そういった「移動作業」というか「転換作業」にこそ、小説というものの特性が発揮されるんじゃないかと思います。
 今回の「コロナ状況」がどういう形でこれからの僕の作品に反映されるか、それは僕自身にもわかりません。どうなるか、結果が出てくるまでには時間がかかるかもしれません。でも、何らかの影響を受けないということはまずあり得ないでしょうね。こういう空気を吸って吐いている限り―。

最後になりますが

 大阪の山中伸弥さんからメールをいただきました。山中先生、コロナウイルスのことではずいぶんがんばっておられますね。こんなメールです。

春樹さん。一生のお願いなんですが、僕にもラジオネームをいただけませんか? 山中

 しかし、先生、ラジオネームごときを「一生のお願い」にしちゃっていいものですかね? ノーベル賞とは違いますから。でもまあ、そこまで言われると、僕としてもむげに断るわけにはいきません。わかりました。特別にラジオネームを差し上げます。なにしろ相手が山中先生ですから、超デラックス、超豪華なラジオネームにしましょうね。はい、山中伸弥さんのラジオネームは

 「AB型の伊勢エビ」です。ちょっと脱力感はありますが、なにしろ伊勢エビですから、デラックスですよね。これからの人生、このラジオネームと共に生きていって下さい。健闘を祈ります。

村上春樹「村上RADIO/村上ラジオ」TOKYO FM 絵・フジモトマサル

WeiWei Wuu: What the World Needs Now Is Love

村上春樹「村上RADIO」Wei Wei Wuu; What the World Needs Now Is Love

 今日のクロージング音楽は、ウェイウェイ・ウーさんの「世界は愛を求めている」です。ウーさんが演奏しているのは中国の二胡です。なかなか素敵ですね。二胡でバート・バカラックを演奏するという発想が素晴らしいです。
 でも、本当にそうですよね。今世界が必要としているのはマスクであり、ワクチンであり、そして愛です。マスクとワクチンが広く行き渡っても、もし愛や思いやりが足りなければ、コロナが終わったあとの世界は、きっと、ぎすぎすした味気ない場所になってしまうでしょう。これは50年以上前に作られた曲なんですけど、今聴いても「そうだよなあ」と実感します。愛って、大事です。

村上春樹「村上RADIO/村上ラジオ」TOKYO FM 絵・フジモトマサル

 今日の最後の言葉はポール・マッカートニーです。彼は詩を書くことについて、こう述べています。

「10代の頃、どういうわけか僕は自分の書いた詩を、スクール・マガジンに掲載したいという、熱烈な欲望に駆られた。で、僕なりに深い意味を持つ詩を書いたんだけど、それは即座にボツにされた。それを境に僕は、もう何かに頼るまい、自分ひとりの力で進んでいこうと決意した」

(Paul McCartney “Blackbird Singing: Poems and Lyrics 1965-1999”)

 そうですね。権威や前例なんてものを信用しないこと、自分のやり方をしっかり貫くこと―。
 それが価値ある新しい何かをクリエイトするための大事な条件になると、僕も思います。みなさんもポールに負けないように、そしてコロナウイルスにも負けないように、自分の求める何かを熱く追求してください。

 それではまた今度。平和な日常が、1日も早く世界に戻ることを祈っています。

 いまお酒を飲んでるかた、いらっしゃいますか。きっといらっしゃるでしょうね、夜中ですから。僕も今からワインを飲みますので、「明るいあした」のために乾杯しましょう。おやすみなさい。

(おわり)

絵:フジモトマサル
特別協力:TOKYO FM

Murakami Radio: "Music for a Brighter Tomorrow" by HARUKI MURAKAMI (Part 2)

(Go back to Part 1)

10. Eric Clapton: Smile

村上春樹「村上ラジオ」Eric Clapton Smile

Here’s Eric Clapton singing “Smile.”
    This beautiful tune was composed by Charlie Chaplin.
    What we’re listening to is a live recording from a Clapton concert at the Hammersmith Odeon in London in 1974. “Smile” was the first song Eric played that night.
    Amazing. Don’t you think it’s amazing?

A smile makes all the difference. Clapton has seen more than his share of cloudy days — and the fact that he’s made it through it all makes his “Smile” that much more impactful.

11. Al Jarreau: My Favorite Things Featuring Kathleen Battle

村上春樹「村上RADIO」

Jazz vocalist Al Jarreau and opera singer Kathleen Battle singing “My Favorite Things” as a duet.
   I have a few favorite things of my own. To start: Raymond Chandler mysteries, udon hot pot in winter, paw pads on kittens, new running shoes, the ring of a bell at the start of a concert, the Ginza subway line back when the train used to go dark for a few seconds... What are yours?
   How about making a list of your favorite things while we wait for the world to settle?

12. Lisa Ono: She Wore a Yellow Ribbon

村上春樹「村上RADIO」小野リサ;She Wore A Yellow Ribbon Ono Lisa

Next up is a song I’d like to play for all the medical workers. I may not have a yellow ribbon, but I’d like to do whatever I can to show my support from afar. What you do is truly difficult work. Please be safe.

This is Lisa Ono’s take on “She Wore a Yellow Ribbon,” a song best known as the theme from the John Ford film by the same name. With her distant lover in mind, the woman in the song keeps a yellow ribbon around her neck — or in her hair — even in winter and the merry month of May. What a nice thing, to have a lover like that.
   Hearing Ono sing this song always makes me feel warm inside. I listen to it a lot when I’m running.

But, really, maybe we should all wear yellow ribbons to show our support and gratitude for the medical workers out there, doing everything they can.

13. Nancy Wilson: Happy Talk

村上春樹「村上RADIO」Nancy Wilson; Happy Talk

Nancy Wilson singing “Happy Talk,” backed by Cannonball Adderley and his quintet.
   This is a song all about the power of positive thought.

14. Brian Wilson: They Can't Take That Away From Me

村上春樹「村上RADIO」Brian Wilson; They Can't Take That Away From Me

Here’s an old George Gershwin standard, but sung in a nice and poppy arrangement by Brian Wilson.
   “They can’t take that away from me.” Can’t take what? All my precious memories of “you.”

Memories mean the world to us. Without our memories, life would be as dry as a desert. So let’s make all the memories we can. They’ll definitely come in handy later in life.

15. Tony Bennett: Put on a Happy Face

村上春樹「村上RADIO」Tony Bennett + James Taylor; Put on a Happy Face

Turn that frown upside-down. Put on a happy face.
   Just listen to Tony Bennett and James Taylor on this one. Their back and forth is so full of life. Did they really record this one together? Did they sing it separately? Whatever the case, it sounds seamless on the record.
   “We knew a girl so gloomy she’d never laugh or sing” — “I knew that girl.” Bennett and Taylor had a great time doing this one.
   Why not give it a try? Wipe off that “full-of-doubt” look. Slap on a happy grin.
   Just put on a happy face.

16. Fred Lowery: Over the Rainbow

村上春樹「村上RADIO」Fred Lowery; Over the Rainbow

Fred Lowery whistling “Over the Rainbow.” This one’s really something. Please give it a listen. And keep an ear out for how he ends the song. What a tune.

17. Peggy Lee with Benny Goodman: We'll Meet Again

村上春樹「村上RADIO」Peggy Lee with Benny Goodman; We'll Meet Again

Peggy Lee singing “We’ll Meet Again” with Benny Goodman and His Orchestra. This song was a big hit in 1942.
   Of course, 1942 was right in the middle of the war. In other words, this is a song about saying goodbye to a lover who’s headed overseas to fight. If you keep that in mind, the song is all the more poignant.

Some politicians have likened our current struggle with the coronavirus to war, but that’s hardly an apt comparison. This battle of ours has nothing to do with good and evil, nothing to do with allies and enemies. This is another kind of trial entirely: a test of our intelligence, and our ability to cooperate and help one another. What really matters is how well we can keep it up. This is no struggle for power, in which people try to kill one another; it’s a struggle in which we have to rely on our intelligence, in which we try to help each other survive. There’s no room for hatred or animosity.
   It’s no good to compare this situation to war. It just isn’t right.

18. Sigrid Onegin: Mon cœur s’ouvre à ta voix

村上春樹「村上RADIO」

My last song today is a classical record. It’s a favorite of mine, one I’ve loved listening to for years. It’s the aria “Mon cœur s’ouvre à ta voix” (“My Heart Awakens to Your Voice”) from Samson et Dalila by Camille Saint-Saëns. The singer is the Swedish-born alto, Sigrid Onegin.

I don’t have a date for this recording, but it’s likely from the twenties. It’s an SP, of course. This recording is practically a hundred years old now, but the voice and the feeling are just as powerful and beautiful as they ever were. The climax is particularly wonderful. Every time I put this record on, it transports me to another time. It really warms my heart. This is a song of love — please give it a listen.

村上春樹「村上RADIO/村上ラジオ」TOKYO FM 絵・フジモトマサル

WeiWei Wuu; What the World Needs Now Is Love

村上春樹「村上RADIO」Wei Wei Wuu; What the World Needs Now Is Love

Today’s closing song is WeiWei Wuu’s “What the World Needs Now Is Love.”
   Wuu is playing the Chinese erhu. What a beautiful sound. And what a beautiful idea to use this instrument to play Bacharach.
   Then there’s the message itself. It’s true. What the world needs now is masks and a vaccine — but love is no less needed.
   Even if everyone gets their hands on masks and a vaccine, if we’re short on love and compassion, then the world after the virus is going to be a cold and miserable place. This song may be more than fifty years old, but it sure hits home listening to it now.
   Is there anything more important than love?

The last words of the day come from Paul McCartney. He said the following about writing poetry in his youth:

“When I was a teenager, for some reason I had an overwhelming desire to have a poem published in the school magazine. I wrote something deep and meaningful — which was promptly rejected — and I suppose I have been trying to get my own back ever since.”

 (Paul McCartney, Blackbird Singing: Poems and Lyrics, 1965-1999)

That’s right. If you’re going to create something new, anything of value, you have to keep at it. You have to stay true to yourself. You can’t worry about precedent or the powers that be.
   If Paul can do it, so can you. We can’t let the coronavirus keep us down. Chase after what you want — and make sure to give it all you’ve got.

Here’s hoping peace finds its way back into our lives, as soon as possible. Until next time, friends.

Is anyone out there having a drink right now? It’s night, so I’m sure some of you are.
   I’m about to have a glass of wine myself — so let’s drink, to a brighter tomorrow. Good night.

translated by David Boyd
illustrations by Masaru Fujimoto
Special thanks to TOKYO FM

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考える人とはとは

 はじめまして。2021年2月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、金寿煥と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただきありがとうございます。
「考える人」との縁は、2002年の雑誌創刊まで遡ります。その前年、入社以来所属していた写真週刊誌が休刊となり、社内における進路があやふやとなっていた私は、2002年1月に部署異動を命じられ、創刊スタッフとして「考える人」の編集に携わることになりました。とはいえ、まだまだ駆け出しの入社3年目。「考える」どころか、右も左もわかりません。慌ただしく立ち働く諸先輩方の邪魔にならぬよう、ただただ気配を殺していました。
どうして自分が「考える人」なんだろう―。
手持ち無沙汰であった以上に、居心地の悪さを感じたのは、「考える人」というその“屋号”です。口はばったいというか、柄じゃないというか。どう見ても「1勝9敗」で名前負け。そんな自分にはたして何ができるというのだろうか―手を動かす前に、そんなことばかり考えていたように記憶しています。
それから19年が経ち、何の因果か編集長に就任。それなりに経験を積んだとはいえ、まだまだ「考える人」という四文字に重みを感じる自分がいます。
それだけ大きな“屋号”なのでしょう。この19年でどれだけ時代が変化しても、創刊時に標榜した「"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という編集理念は色褪せないどころか、ますますその必要性を増しているように感じています。相手にとって不足なし。胸を借りるつもりで、その任にあたりたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

「考える人」編集長
金寿煥

著者プロフィール

村上春樹
村上春樹

むらかみ・はるき 1949(昭和24)年、京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。’79年『風の歌を聴け』(群像新人文学賞)でデビュー。主な長編小説に、『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞)、『ノルウェイの森』、『国境の南、太陽の西』、『ねじまき鳥クロニクル』(読売文学賞)、『海辺のカフカ』、『アフターダーク』、『1Q84』(毎日出版文化賞)、最新長編小説に『騎士団長殺し』がある。『神の子どもたちはみな踊る』、『東京奇譚集』、『パン屋再襲撃』などの短編小説集、『ポートレイト・イン・ジャズ』(絵・和田誠)など音楽に関わる著書、『村上ラヂオ』等のエッセイ集、紀行文、翻訳書など著訳書多数。多くの小説作品に魅力的な音楽が登場することでも知られる。海外での文学賞受賞も多く、2006(平成18)年フランツ・カフカ賞、フランク・オコナー国際短編賞、’09年エルサレム賞、’11年カタルーニャ国際賞、’16年アンデルセン文学賞を受賞。村上春樹新潮社公式サイト

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