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安田菜津紀の写真日記

2017年9月29日 安田菜津紀の写真日記

兄が夢に現れた

著者: 安田菜津紀

夜明けと共に、海の呼吸がこだまする。宮崎県、島野浦の日の出。

 突然、兄が夢に現れた。彼が亡くなってからの15年間で、初めてのことだった。それも命日でも、誕生日でもない日に。最初は電話で言葉を交わす場面で始まった。兄の声は、最後に話したときのようにどこかふわふわとしていた。次の場面で、今度は一緒に朝食を食べていた。どこかのカフェで迎えた、爽やかな朝だった。「現実伝えるって難しいよね」。兄がふと放ったその言葉に戸惑いながら、その夢は醒めた。悲しくはなかった。ただ兄に、ありがとうと伝えたかった。
 9月という月。1日には子どもたちの自殺が増えてしまうと大きく報道された。10日は世界自殺予防の日だった。11日には同時多発テロから16年、そして東日本大震災から6年半という日を迎えた。命とは何か、と再び心の中で問いかけ続けた。
 兄が現れた夢の話をすると、ある人がこんな言葉をくれた。「生きているのに、一生、話をしない知り合いもいる。この世にはいないのに、確かに話をする人がいる」。人の縁とは、何だろう。その答えを探る旅は続く。

岩手、小岩井の森。虫、鳥、葉のささやきが静かに辺りを包み込む。
君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

安田菜津紀

2016/04/22発売

シリアからの残酷な映像ばかりが注目される中、その陰に隠れて見過ごされている難民たちの日常を現地取材。彼らのささやかな声に耳を澄まし、「置き去りにされた悲しみ」に寄り添いながら、その苦悩と希望を撮り、綴って伝える渾身のルポ。

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考える人とはとは

 はじめまして。2021年2月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、金寿煥と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただきありがとうございます。
「考える人」との縁は、2002年の雑誌創刊まで遡ります。その前年、入社以来所属していた写真週刊誌が休刊となり、社内における進路があやふやとなっていた私は、2002年1月に部署異動を命じられ、創刊スタッフとして「考える人」の編集に携わることになりました。とはいえ、まだまだ駆け出しの入社3年目。「考える」どころか、右も左もわかりません。慌ただしく立ち働く諸先輩方の邪魔にならぬよう、ただただ気配を殺していました。
どうして自分が「考える人」なんだろう―。
手持ち無沙汰であった以上に、居心地の悪さを感じたのは、「考える人」というその“屋号”です。口はばったいというか、柄じゃないというか。どう見ても「1勝9敗」で名前負け。そんな自分にはたして何ができるというのだろうか―手を動かす前に、そんなことばかり考えていたように記憶しています。
それから19年が経ち、何の因果か編集長に就任。それなりに経験を積んだとはいえ、まだまだ「考える人」という四文字に重みを感じる自分がいます。
それだけ大きな“屋号”なのでしょう。この19年でどれだけ時代が変化しても、創刊時に標榜した「"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という編集理念は色褪せないどころか、ますますその必要性を増しているように感じています。相手にとって不足なし。胸を借りるつもりで、その任にあたりたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

「考える人」編集長
金寿煥

著者プロフィール

安田菜津紀

1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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