まずは台風21号、そして北海道での地震の被害に遭われた方々に、心よりお見舞い申し上げます。関西での台風通過が日中だったこともあり、次々とネット上で拡散されていく動画はどれも、目を疑うようなものばかりだった。浮き上がり、道路を引きずられるように飛ばされていく車、崩れ、舞っていく家々の屋根……。同時にSNSをたどっていくと、違った意味で気がかりな書き込みも見受けられた。「当店は台風でも休まず営業しております」「この雨の中で出勤中」、と暴風雨の中でも働く人々の存在が窺えた。
「台風なのに頼もしい」と思えるだろうか。むしろ安全管理や従業員さんを守る体制は大丈夫?と心配になる。「とにかく出勤」という会社も同じだ。
「自分だけ休むのも……」と躊躇してしまうのかもしれない。あるいは「行かないといけない」というような“不健全”な力関係があるのかもしれない。しかしどれも、人命を上回る“大義”ではないはずだ。もう一つ気になったのが、「〇〇ピザ配達頼んだら届けてくれた」といった、他者を確実に巻き込んでいるであろう書き込みだった。この豪雨の中、ピザの宅配を頼む側は、「配達の方がもし事故に遭ったら?」とどこまで想像したのだろうか?「うちに食料がなかった」ということなのかもしれない。けれども台風の場合は、事前に警戒が幾度も呼びかけられている。「お店がやってなくて困る」とならないよう、各家庭での備蓄が欠かせないはずだ。
こうしたサービスを提供する側も、それを受ける側も、「安全を第一にお休み」が当たり前となっていくことで、救える命があるのではないだろうか。
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安田菜津紀
1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。
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とは
はじめまして。2021年2月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、金寿煥と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただきありがとうございます。
「考える人」との縁は、2002年の雑誌創刊まで遡ります。その前年、入社以来所属していた写真週刊誌が休刊となり、社内における進路があやふやとなっていた私は、2002年1月に部署異動を命じられ、創刊スタッフとして「考える人」の編集に携わることになりました。とはいえ、まだまだ駆け出しの入社3年目。「考える」どころか、右も左もわかりません。慌ただしく立ち働く諸先輩方の邪魔にならぬよう、ただただ気配を殺していました。
どうして自分が「考える人」なんだろう――。
手持ち無沙汰であった以上に、居心地の悪さを感じたのは、「考える人」というその“屋号”です。口はばったいというか、柄じゃないというか。どう見ても「1勝9敗」で名前負け。そんな自分にはたして何ができるというのだろうか――手を動かす前に、そんなことばかり考えていたように記憶しています。
それから19年が経ち、何の因果か編集長に就任。それなりに経験を積んだとはいえ、まだまだ「考える人」という四文字に重みを感じる自分がいます。
それだけ大きな“屋号”なのでしょう。この19年でどれだけ時代が変化しても、創刊時に標榜した「"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という編集理念は色褪せないどころか、ますますその必要性を増しているように感じています。相手にとって不足なし。胸を借りるつもりで、その任にあたりたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
「考える人」編集長
金寿煥
著者プロフィール
- 安田菜津紀
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1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。
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