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山と食欲と私 日々野鮎美の山歩き日誌

2019年12月20日 山と食欲と私 日々野鮎美の山歩き日誌

標高が高い山のデビューには夏や初秋の木曽駒ヶ岳がおすすめ

木曽駒ケ岳(長野県)

著者: 日々野鮎美 , イラスト・監修 信濃川日出雄

みなさま、こんにちは!
日々野鮎美(27歳 会社員)です。

 わたくし、”山ガール”ならぬ”単独登山女子”なんて名乗っていますが、要するに人見知りです…(?!)。
(私の詳しいプロフィールをもっと知りたい方はこちらを→リンク

 普段は会社員、週末になると山歩きばかりの生活を送っている私が、登山を始めてみたい人向けにアテンドするならこの山! …という個人的にお気に入りのお山をご紹介します。

 今回のお山は…「木曽駒ヶ岳」です!

 長野県にある木曽駒ヶ岳は木曽山脈の中で一番高い標高(2,956m)で、日本百名山のひとつ。

 ロープウェイで一気に千畳敷カールがある2,600mまで上がることができます。山々に囲まれた千畳敷カールでは、素晴らしい景色が目の前に。ここには日本一標高が高い場所に建てられた「ホテル千畳敷」があり、四季折々の景色を眺めに訪れる観光客で溢れます。

 標高が高い木曽駒ヶ岳は冬山へ姿を変える時期も早く、年によっては10月でも積雪が始まります。

 ロープウェイを降りてから山頂まで、約2時間で登頂できるため、標高2,000mの山を初めて歩く人や、いずれテント泊や雪山登山をしてみたいという人にうってつけの山。地形を知っておくための下調べに歩いておくのもおすすめです。

マイカーでも電車でもバスでも
ロープウェイに乗るにはしらび平駅へ

  電車の場合は、JR飯田線の駒ヶ根駅から路線バスの駒ヶ岳ロープウェイ線を使ってロープウェイに乗車するしらび平駅まで。マイカーの場合、マイカー規制でしらび平駅までは直接行けません。マイカー、高速バスともに中央道の駒ヶ根ICを降りて菅の台バスセンターまで向かいます。

 菅の台バスセンターでシャトルバス、ロープウェイのチケットを購入し、しらび平へ。土日は混雑が予想されるため、基本的に早めに動くのが正解です。

 今回はロープウェイで上がり、千畳敷カールから乗越(のっこし)浄土でひと休み。宝剣山荘を通り中岳を経て、木曽駒ヶ岳に登頂する日帰りの山行です。

 お昼は木曽駒ヶ岳を降りて頂上山荘で自炊し、天候の状況や余力があれば、帰りに乗越浄土から伊那前岳へお散歩。乗越浄土へ戻って下山します。

千畳敷カールで景色を楽しみ、乗越浄土へ

 ロープウェイは約7分。短い時間であっという間に2,600mの標高へ。

しらび平駅。観光客やハイカーで溢れる

 山のふもとのしらび平駅にも、千畳敷駅にもトイレや売店があるので、用を足したり、足りない行動食などがあればこちらで購入できたりします。しらび平駅ではおいしそうな五平餅、わさびコロッケ(!)なども売られていました。

 また、登山届けの用紙はしらび平駅にあるので、用意していなかった人はロープウェイに乗る前に入手できますよ(千畳敷駅にポストがあります)。

 ロープウェイの千畳敷駅の建物を出ると、途端に広がる雄大な景色! お年寄りでも子どもでも、気軽に来て自然のすばらしい景色を見ることができるのってよいですね。

カールとはドイツ語の登山用語。アイスクリームをスプーンでえぐったような形を指す

 この日は紅葉が始まった頃で、ところどころ黄色く色づく植物を見ることができました。

 千畳敷カールには遊歩道があり、観光で訪れた人が散策できるようになっています。登山者も遊歩道を歩いて、登山道へと進みます。

遊歩道から登山道へ。八丁坂がとにかくハード!

遊歩道から登山道へ切り替わる場所には案内板がある
植物と岩だらけの山道

 遊歩道を歩き、八丁坂へ向かいます。案内板があるので、迷うことはないと思います。登山道に入ると、岩が多く、なかなかの急な登りに。

 ひたすら急勾配でジグザグな登山道が八丁坂と呼ばれ、ここが一番ハードかも!

舗装されている箇所もあるが基本的に岩ばかり

 幅が狭く、登山者も多いため、譲り合いを意識しながら登ります。

 この先の登りきったところに休憩ポイントの乗越浄土があるので、そこまでコツコツと歩きます。

乗越浄土。広くて平地で、まさに浄土という言葉がぴったり
乗越浄土の東側、下山時に寄る伊那前岳方面を眺めたところ。ベンチもある

 木曽駒ヶ岳に向かうには、乗越浄土を経由して中岳方面へ進みます。乗越浄土のすぐそばに宝剣岳もありますが、宝剣岳は切り立った岩場の鎖場がほとんどで、事故が多発しています。中級者向けなので、チャレンジするなら経験を重ねてからにしましょう。

 この先はゆるゆると登りを歩いていきます。

 中岳(2,925m)は木曽駒ヶ岳に向かう途中にあり、木曽駒ヶ岳とは30mほどしか標高が変わりません。

ちょっと地味な中岳山頂

 中岳から木曽駒ヶ岳山頂に向かう途中に宮田村 頂上山荘があります。山荘に宿泊する人やテント泊する人は荷物をデポして山頂へ向かうとラクちんですよ。

 日帰りの人はそのまま山頂へ!

 足場は変わらず小さい岩だらけですが、そこまで急でもない登りです。歩くこと20分。

山頂は広め。歩いて散策できる

 登頂! 空気が澄んでいて遠くまで見渡せます。来てよかったー!

 山頂は広め。360度眺められるため、山々を見ていても飽きないです。

 この日はたまたま風はありませんでしたが、遮るものが何もないので、夏であっても風が吹けば寒そうです。

 ここでひと休みしたら、頂上山荘まで戻りましょう。

トマト煮のサーディンをグツグツと!

 この日のランチは、1巻11話に登場する「オイルサーディン丼」のトマト煮アレンジ!

 ご飯を炊く余裕がなかったので、「尾西の白飯(お湯を注ぐだけであたたかいご飯ができるアルファ米)」にグツグツと温めたトマト煮サーディンをON。自炊っぽい組み合わせ調理だけど、火を使うのは満足度が増しますね。

 もうすでに山にハマって初心者からスキルアップを考えている、いつかは標高が高い山にチャレンジしてみたい、 テント泊してみたい、 なんなら雪山もいずれは …という方は、木曽駒ヶ岳のようにロープウェイや山小屋があり、歩く距離が短いルートの山をまず一度、夏や紅葉が始まる頃の暖かい初秋にチャレンジするのもおすすめです。

 ちなみに、トマト煮のサーディン丼ですが、アルファ米って思ったよりボリュームがあることを毎回忘れるんですが、丼物になっているとペロリいけちゃいますよ!

 ランチのあとは乗越浄土まで戻ります。

 乗越浄土から望む伊那前岳は、最高に気持ちいい稜線でした!

 早め到着にして伊那前岳にも立ち寄れる山行にするのがおすすめですよ〜

 求めていたのは、これだー! とここで感動。

 伊那前岳山頂には昭和スタイルの着こなしですてきな初老の男性がいらっしゃいました。聞けば、山岳部の顧問をされていたとのこと。退任されてからもロープウェイがある木曽駒ヶ岳にはよく来られるそうです。

 天候がよく、山にいるハイカーたちは皆笑顔でよい山行でした。

 今回も週末で山チャージが十分できました!

 やっぱり山はいいなあ〜。

 よし、あとは帰りにわさびコロッケを食べるだけ!

 あまりの秋山の美しさが名残惜しかったけど、今回の週末も、しっかり山欲を満たすことができました…!

 木曽駒ヶ岳はロープウェイを使って2時間程度で山頂に着くことができますが、山歩きの際は装備をしっかりと。事前の登山計画と登山届け、そして地図は必携ですよ〜! スキルが伴うまではなるべくソロは避けましょうね。

文・構成 井上綾乃

「日々野鮎美の山歩き日誌」の読者のみなさんへ

今回の記事は、連載終了後に登山ガイドブックとして再編集する前提で、秋に取材したものです。現在の実際の季節(12月)は、積雪しており、無積雪期とは全く別の知識・装備・体力が求められます。また、初心者の方がいきなり登る山としてもお勧めできません。

安全に楽しく山歩きをするため、以上の点を、どうぞご注意ください。

 

関連サイト

くらげバンチ 山と食欲と私

https://kuragebunch.com/episode/10834108156628844112

  • 【出張試し読み】山と食欲と私 - 信濃川日出雄 / 1話 おにぎり

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考える人とはとは

 はじめまして。2021年2月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、金寿煥と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただきありがとうございます。
「考える人」との縁は、2002年の雑誌創刊まで遡ります。その前年、入社以来所属していた写真週刊誌が休刊となり、社内における進路があやふやとなっていた私は、2002年1月に部署異動を命じられ、創刊スタッフとして「考える人」の編集に携わることになりました。とはいえ、まだまだ駆け出しの入社3年目。「考える」どころか、右も左もわかりません。慌ただしく立ち働く諸先輩方の邪魔にならぬよう、ただただ気配を殺していました。
どうして自分が「考える人」なんだろう―。
手持ち無沙汰であった以上に、居心地の悪さを感じたのは、「考える人」というその“屋号”です。口はばったいというか、柄じゃないというか。どう見ても「1勝9敗」で名前負け。そんな自分にはたして何ができるというのだろうか―手を動かす前に、そんなことばかり考えていたように記憶しています。
それから19年が経ち、何の因果か編集長に就任。それなりに経験を積んだとはいえ、まだまだ「考える人」という四文字に重みを感じる自分がいます。
それだけ大きな“屋号”なのでしょう。この19年でどれだけ時代が変化しても、創刊時に標榜した「"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という編集理念は色褪せないどころか、ますますその必要性を増しているように感じています。相手にとって不足なし。胸を借りるつもりで、その任にあたりたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

「考える人」編集長
金寿煥

著者プロフィール

日々野鮎美

ひびの・あゆみ 27歳、会社員。漫画『山と食欲と私』の主人公。「山ガール」と呼ばれたくない自称「単独登山女子」。美味しい食材をリュックにつめて、今日も一人山を登ります(たまには友人や同僚と登ることもあるよ)。

著者の本

イラスト・監修 信濃川日出雄

しなのがわ・ひでお 新潟県出身。北海道在住。2007年のデビュー以来、ジャンルを問わず多岐にわたって執筆し、『山と食欲と私』が累計100万部を突破、大人気シリーズとなる。現在もくらげバンチで同作を連載中。

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