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山と食欲と私 日々野鮎美の山歩き日誌

みなさま、こんにちは!
日々野鮎美(27歳 会社員)です。

 わたくし、”山ガール”ならぬ”単独登山女子”なんて名乗っていますが、要するに人見知りです…(?!)。
(私の詳しいプロフィールをもっと知りたい方はこちらを→リンク

 普段は会社員、週末になると山歩きばかりの生活を送っている私が、登山を始めてみたい人向けにアテンドするならこの山! …という個人的にお気に入りのお山をご紹介します。

 今回のお山は…「剣山(つるぎさん)」です!

 普段、山選びもついつい都心から近めで交通機関が充実しているエリアに偏りがちですが、会社の有休を使って、たまには遠征です! 

 それで選んだのは四国! なぜ四国かといいますと、四国は温暖で水がきれいなため、果物やお魚、日本酒がおいしい、という話をよく聞きませんか? 行かない理由がない気がする! ということで、今回は徳島県の剣山、次回は愛媛県の石鎚(いしづち)山の日誌になります。

 では、古くから信仰の対象とされ、神社が多いために、最近はパワースポットとして有名になっている剣山へ登ってみましょう。

剣山の登山口へのアクセスは二通り

 登山口までは、電車を経由してバスで行くパターンと、マイカーやレンタカー使用の二択です。

 電車の場合、JR徳島線の貞光駅で下車、駅前から「剣山登山バス」が出ています。便数が多いわけではないので、運行はあらかじめチェックしておきましょう。登山口の見ノ越には貞光駅から1時間30分で到着します。また、ルートによってバス会社が異なるので、徳島県の観光サイトなどを確認してくださいね。

 近県にお住まいでマイカー移動される方やレンタカーを借りる方は、リフト乗り場が近い見ノ越登山口に駐車場があるので、そこを利用します。

 ちなみに、今回は紅葉の時期で混雑していて、日曜日の午前9時30分の時点では駐車場に入れない車も多く見受けられました(帰りも駐車場はまだまだ混んでいました)。

レトロ好きにはたまらない! 剣山へのアプローチ

リフトは冬季休業

 リフトの乗り口は2階にあります。

 のっけから建物、看板すべてが昭和感たっぷり。淡い色合いの昔のフィルムカメラで撮ったら雰囲気がよさそう!

 このリフトを使わずに登れば、リフト終点の西島駅までは1時間程度。登り甲斐を求めるなら、リフトは使わないほうがよいですよ!

リフトは一人乗り。ちょっと怖い

 リフトは15分ほど乗ります。この日はやや風があり小雨が降りそうな天気で、少し寒かった…。乗ってから、あまりあれこれ荷物をいじると落としそうで危険です。今日は寒そうと思ったら、リフトに乗る前にウインドブレーカーなどをあらかじめ着ちゃいましょう。

リフトを降りてすぐの案内板。今回は右側、大劔神社方面へ

 リフトが到着する西島駅を出ると、左右に道が分かれます。

 左側は尾根を歩く最短コース。右側に行けば大劔(おおつるぎ)神社を経て山頂へ歩くコース。今回は右へのルートを選びました。

 まずは道なりに歩いていきます。

かわいい文字。さっきからいろいろレトロでかわいい

 やがて少し広い広場に出ると、目に飛び込んできたのが、この鳥居。しめ縄も飾られていて、どこか厳かな雰囲気。

 山門というか、大劔神社の一の鳥居でしょうか。

 でも、鳥居につけられた看板の文字はゆるくてかわいい! これまた昭和っぽいですよね。

木の階段で歩きやすく整備されている登山道

 途中はのんびり上ります。ゆるやかな上りで歩きやすいですよ。

道ばたに置かれていた看板。登山って、そうなんです

 ふと目にとまった、突然のメッセージ。ほのぼのしちゃいますね。

 地元の人に愛されている山なんだなぁと伝わります。

神社の外観は思っていたのと違うけど(笑)、柱の文章がすごい

 あっという間に大劔神社に到着です。神社よりもその奥の岩の迫力に圧倒されます。そして神社右側に見える山の稜線がすばらしい! これは山頂からも見ることができます。

 大劔神社、圧倒されるのは岩だけではなく、柱に書かれた文字。

「天地一切の悪縁を断ち」「現世最高の良縁を結ぶ」

 なんだかすごい。「現世最高の良縁」ですよ! これぞパワースポット、とにかく効きそう!

この鳥居からの上りでラストスパート。山頂まであともう少し

 そして25分ほど歩くと、山頂手前の「劔山本宮」へ到着です。

 リフトを降りてから、たったの45分! あっという間!

 山歩きが本当にはじめての人でも、安心して登れますね。

山頂の様子。景観は幻想的な霧でこの世のものとは思えない

 はじめての登山に剣山が向いているのは、リフトが使える、短い時間で登頂できる、などだけが理由ではありません。

 今回、霧が多くて最初は見えませんでしたが、晴れ間に見えたこの稜線が素晴らしいんです。

霧が晴れて、少しずつ見えてきた稜線

 隣の山、次郎笈(じろうぎゅう)に伸びる尾根が見えますね。

 その先、次郎笈の先には三嶺(みうね)という山があります。

 山頂に到着したら、次の目標が見えてくるのが剣山のいいところ。

 剣山から三嶺までのルートを調べてみると、「1泊2日+予備日」を設ける必要があるそう。経験を積んだら、挑戦してはいかが。

剣山の山頂では半田そうめんが食べられる

  四国といえばうどん、というイメージですが、それはお隣の香川県の名物。

 ここは徳島県なので、半田そうめんが有名です! それがなんと、剣山頂上ヒュッテでいただくことができちゃいます。

 ぱっと見、そうめんというより細いうどんみたい。

 リフトを使い、途中で行動食を食べるほどの距離でもなかったので、朝から何も食べていないことに気づきました。

 きつね(油揚げ)もトッピングした半田そうめんは、ボリュームもたっぷりあって、大満足!

もちもちの麺と、味がしっかり染み込んだ油揚げが最高!

 お腹を満たして下山しました!

 下山は、行きとは別のルートをチョイス。尾根道コースを選びました。

 下りに選んだ尾根道コースはなかなか急坂でした。ここはひたすら下るのですが、途中で休憩スポットにもなる、「刀掛の松」という松の倒木があります。

 壇ノ浦の戦いで亡くなったとされる安徳天皇が実はその後生き延びていたという伝説があります。その安徳天皇が山頂に宝剣を納めた際に休んだ場所と言われていますが…剣山にはそんなミステリーな要素もあり、さすがパワースポット。

 さて、ここで要注意なのが、帰りのバスも本数が少なく、下山のタイミングによっては見ノ越でだいぶ待たされること。

 確実に目当ての時間のバスに乗るなら、下山したらすぐにバス乗り場で並んでいたほうがよいですよ〜。でないと、バス停に定時までに着いても、目的のバスが満員で乗れずに次のバスを待つ、なんてことになりそう。

 結局、JR貞光駅に戻れるのが夕方遅くになっちゃうので要注意!

 私には悪縁って呼ぶほどの悪い縁って…たぶんこれまでなかったとは思うのですが、この剣山では、「現世最高の良縁」を結んでくれるみたいだし、山小屋のご飯はおいしいし、徳島に来たらマスト!? 

 ちなみに山歩きに慣れている方は、剣山だけだと少し物足りないかも。日程が確保できるようなら、縦走を検討したほうがよいかもしれません。要チェックです!

 私も、いつか長期休暇がとれたら、剣山から三嶺までのルートに挑戦してみたい!

 念願の四国、次回は愛媛県の石鎚山です!

文・構成 井上綾乃

 

「日々野鮎美の山歩き日誌」の読者のみなさんへ

今回の記事は、連載終了後に登山ガイドブックとして再編集する前提で、秋に取材したものです。現在の実際の季節(1月)は、積雪が始まり、雪山は夏とは全く別の知識・装備・体力が求められます。初めて登山をする人は無雪期または冬であれば雪が積もっていない低山から始めましょう。安全に楽しく山歩きをするため、以上の点を、どうぞご注意ください。

関連サイト

剣山 徳島県観光情報サイト

https://www.awanavi.jp/document/report/23344.html

くらげバンチ 山と食欲と私

https://kuragebunch.com/episode/10834108156628844112

  • 【出張試し読み】山と食欲と私 - 信濃川日出雄 / 1話 おにぎり

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考える人とはとは

 はじめまして。2021年2月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、金寿煥と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただきありがとうございます。
「考える人」との縁は、2002年の雑誌創刊まで遡ります。その前年、入社以来所属していた写真週刊誌が休刊となり、社内における進路があやふやとなっていた私は、2002年1月に部署異動を命じられ、創刊スタッフとして「考える人」の編集に携わることになりました。とはいえ、まだまだ駆け出しの入社3年目。「考える」どころか、右も左もわかりません。慌ただしく立ち働く諸先輩方の邪魔にならぬよう、ただただ気配を殺していました。
どうして自分が「考える人」なんだろう―。
手持ち無沙汰であった以上に、居心地の悪さを感じたのは、「考える人」というその“屋号”です。口はばったいというか、柄じゃないというか。どう見ても「1勝9敗」で名前負け。そんな自分にはたして何ができるというのだろうか―手を動かす前に、そんなことばかり考えていたように記憶しています。
それから19年が経ち、何の因果か編集長に就任。それなりに経験を積んだとはいえ、まだまだ「考える人」という四文字に重みを感じる自分がいます。
それだけ大きな“屋号”なのでしょう。この19年でどれだけ時代が変化しても、創刊時に標榜した「"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という編集理念は色褪せないどころか、ますますその必要性を増しているように感じています。相手にとって不足なし。胸を借りるつもりで、その任にあたりたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

「考える人」編集長
金寿煥

著者プロフィール

日々野鮎美

ひびの・あゆみ 27歳、会社員。漫画『山と食欲と私』の主人公。「山ガール」と呼ばれたくない自称「単独登山女子」。美味しい食材をリュックにつめて、今日も一人山を登ります(たまには友人や同僚と登ることもあるよ)。

著者の本

イラスト・監修 信濃川日出雄

しなのがわ・ひでお 新潟県出身。北海道在住。2007年のデビュー以来、ジャンルを問わず多岐にわたって執筆し、『山と食欲と私』が累計100万部を突破、大人気シリーズとなる。現在もくらげバンチで同作を連載中。

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