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山と食欲と私 日々野鮎美の山歩き日誌

2019年9月19日 山と食欲と私 日々野鮎美の山歩き日誌

富士山のご来光は小屋前でしみじみと堪能しよう!

富士山(山梨県・静岡県)

著者: 日々野鮎美 イラスト・監修 信濃川日出雄

みなさま、こんにちは!
日々野鮎美(27歳 会社員)です。

わたくし、”山ガール”ならぬ”単独登山女子”なんて名乗っていますが、要するに人見知りです……(?!)。
(私の詳しいプロフィールをもっと知りたい方はこちらを→リンク

普段は会社員、週末になると山歩きばかりの生活を送っている私が、登山を始めてみたい人向けにアテンドするならこの山! ……という個人的にお気に入りのお山をご紹介します。

今回のお山は……「富士山」です!

富士山は、2013年に世界遺産となり、今や外国人の観光地としても大人気。標高3,776mもある富士山登山は、開山している夏のシーズンには行列ができるなどのニュースが流れ、その混雑具合などから山好きにはやや敬遠されがちになってしまうことも。

しかし富士登山の人気は今に始まったことではなく、江戸時代には「富士講」とよばれる富士信仰の一派が民衆に熱狂的に支持されていました。

現代でも、関東地方には富士山を模した人工の塚「富士塚」が残っていますが、あれは富士講の名残です。富士登山に限らず、食べ歩きから江ノ島詣で、パワースポット巡りも、今流行っていることって、意外と江戸時代から続いているものだったりするんですよね〜。

富士登山において大事なことっていくつかありますが、最近は事故を防ぐために、無理をしたスケジュールの弾丸登山や装備不足はNGです。また、富士山は岩が多い山なので、落石を起こさないよう注意することも重要ですね。

山小屋は必ず予約をして(キャンセルのときは料金が発生するので、そこもきちんと確認!)一泊二日、または体力によって二泊三日など、ゆとりのあるスケジュールと、しっかりとした山の装備、そして事前に登山の練習を行うなどの準備もしておくのがベストです。って、いろいろ書こうとするとキリがな~い!

楽しい思い出になるよう、安全登山を心がけたいですね。

メジャーな吉田ルートを登って須走ルートで降りる一泊二日コース

富士山にはいくつかのルートがあり、一番人気は吉田ルート。前回コミックスではプリンスルートで登りましたが、今回は山小屋が多く、上りと下りが別になっているので登りやすい吉田ルートです。富士スバルライン五合目からスタートするため、ツアーによる登山の多くがこのルートを選んでいるのようです。

富士スバルライン五合目はまるで遊園地!?

さまざまな国の人で溢れる広場

今回は個人で手配しましたが、学生の頃に登った吉田ルートで再びチャレンジ! それにしても以前に増してものすごい人! 登山客だけではなく、観光としてたくさんの人が遊びに来ているようでした。日本人より外国人のほうが多い印象でした。

カフェ、お土産屋さん、なんでもあります。ただ、ゴミ箱はありません。ここで買い物をすると、それは持って山に入ることになるので注意です。

必ずトイレに行っておきましょう。行列ができていますが、意外と早く入れます。

ここで撮影する人が多く、順番待ちになる

人混みの喧騒から離れた場所にある登山口に向かいます。

ここでは登山者の皆さんがスタートの記念写真撮影の順番を待っていました。

私はとりあえず案内板をパシャリ……

さて、標高が高い登山の場合は高山病が怖いですよね。

血中の酸素濃度が低下することで引き起こされる高山病は、頭痛や吐き気などが主な症状で、場合によっては命を落とします。

高山病にならないためには、まずゆ〜っくり登ることが大事です。ゆっくり登ることで体を高度順応させれば、高山病になりにくくなります。弾丸登山をNGとしているのも、一気に登って高山病になってしまうのを防ぐため。

あくびが出やすくなったり、眠気、軽い頭痛の症状などは血中酸素濃度が低くなっているサイン。もし血中酸素濃度が低くなっても呼吸で復活することができます。イメージとしては、少し離れたロウソクを吹き消すよう細く長く息を出すというテクニックを練習しておくのもいいかもです。標高の高いところに行く人は習得しておきたい技術のひとつですね。

お馬さんも歩く

しばらくは整備された道が続き、お馬さん(!)も歩いていたりします。この時は結構霧が多くガスっていましたね。平坦な道もあれば、ちょっとしたアップもあります。

富士山保全協力金の受付所

富士山保全協力金の受付所が見えてきました。ここで料金を支払います。記念品の木礼(富士山保全協力者証)と安全登山のしおりをいただきました。

しおりは山小屋で時間があるので読もうかな

木札のデザインがかわいい! 自分への富士山土産はこれに! ということで、早速サコッシュに装着しちゃいました。

そして富士山は火山の山。トゲトゲした岩が大小さまざまゴロゴロしています。かなり整備されていますが、それでも足元は岩だらけ。つまり岩で足をくじいたり、転んで手をついて切ったり、落石を誘発させてしまうことが起こりうるんです。ヘルメットは必ず装着して登りましょう。

万が一忘れてしまった人向けにレンタルもありました。

登山用のヘルメットのレンタル

現地でレンタルするのは、最終手段として、あらかじめネットで山道具レンタルサービスを利用するのもよいでしょう。山をすでに始めていて、もうはまっている人なら、これを機に購入しちゃうのもいいと思いますよ!

延々と続く、ジグザグ道を進む

整備された登山道。折り返しをひたすら歩く

しばらくこうした整備された道をジグザグと延々登って行きます。

上に行けば行くほど、足元は岩だらけになります。

ハッと気づくとすでに雲海の上

登山口付近は霧が多かった状態でしたが、ここまでくると雲と雲の合間に立つことができて見晴らしはそれなりに……。

砂利道から岩が多くなってくる

八合目付近ではすでに岩が多くなってきています。逆に山小屋が現れるごとに登山者が減っていくので、登山道そのものは上に行けば行くほど歩きやすくなります。

15時前には予約してた山小屋に到着!

本棚には山食も! うれしい!

やっと山小屋に到着! まずはスタッフから山小屋利用の案内、翌日(ご来光の流れ)などの説明を聞き、寝る場所へ移動します。リラックスできる状態に身支度しましょう。

パンの袋がはちきれそう!

さすが標高3,000mを超えているだけあって、密封袋がこんな状態に。

疲れたから早速横になりたいところですが、高山病は山小屋に着いてからの方が症状がでやすくなります。ここで深酒したり、タバコを吸ったり、横になるだけでも呼吸が浅くなり、夜にかけて体調が悪くなりがちです。無理をしないで、安静に。起きている間だけでも深い呼吸を意識してみましょう。

待ちに待ったお夕飯!

カレーにポテトサラダ、卵にミニトマト〜!

メニューには、他にもさまざまなご飯やドリンクもあるので、足りなければ追加注文が可能です。

奥の卵入りかまぼこ!? おいしかった〜

体調は万全! ですが、今回もご来光を山頂で見ることは避けました。ご来光を山頂で見る場合、深夜に出発するため仮眠程度の休憩になるうえ、山頂での行列と混雑のなか、日の出を待つのは体力的にも山行的にも今の私にはあまり魅力を感じませんでした。小屋の前で見るなら、休憩も睡眠時間もしっかりととれますし、同じ小屋で泊まった者同士、しみじみと日の出を拝むのも素敵だな〜と思いました。

夜21時には就寝し、朝方、4時半頃に目が覚めて外に出てみると……

雲のサンド

幻想的すぎる〜〜〜!

今回の眺望はずーっと雲と雲の間に挟まれていますが、日の出までもが雲とのサンド!

雲の間なんて、なんというギリギリ感。 4:40過ぎ、ご来光を見ることができました。日の出の時より出る直前のほうが雲海は美しかったですよ。

このあとじわじわと太陽が昇り、昨夜受け取っていた朝ごはんを食べるなどして過ごします。

スタッフの方曰く、小屋前で見るご来光って、のどかでいいものですよ、とのこと。

日が当たると一気にあたたかく

この日は7月下旬。この時のウェアは長袖のベースレイヤー(山用の肌着)にフリース、そのうえにライトダウンを着てちょうどよかったです。ニット帽は耳が隠れるものがあるといいですよ。なんといっても、太陽が出るまではとっても寒いですから。

小屋前なので、震えて待つこともないんですけどね。次回(また、あるのか!?)は、コーヒーを淹れたりしたいな……

ご来光を待つ時に、ラオスから来たという若い女の子とおしゃべりして、英語もっと頑張ろ……と思いました。ソロではないそうですが、友達は先に行ってしまったそうで、家族に送る写真を撮ってあげたり、私も撮ってもらったりしました。笑

2日目、ご来光を見たあとは山頂を目指す!

山頂が見えるようで見えない

八合目から山頂までは、距離にして標高差約600mですが、なかなか到着しません……。というのも、八合目のあと九合目かと思いきや、本八合目というのがあって、気分的なものなのですが……汗

それだけお伝えしておきます!

そしてやっと、鳥居が!

山頂の入り口

実は昨年夏の閉山後に、吉田ルート・須走(すばしり)ルートでは山頂付近で石垣の崩落があり、7/9まで復旧工事がされていました。急ピッチで修復作業に当たられていた皆さん、ありがとうございました。無事にこの鳥居をくぐることができました。

富士山頂上神社でお札を選ぶ方々

今回の富士登山の目的には、山頂のまわりをぐるりと一周する 「お鉢巡り」がありました。

ゆるゆるとトレッキングしたかったんです〜。

富士山といえば、お鉢! お鉢をぐるっと巡る1.5時間のプチトレイル

雲海が広がる

天候も晴れたり雲が入り込んだりやや不安定ですが、お鉢巡りを開始します!

お鉢巡りは平坦な道もありますが、何気にアップダウンがあるので、なかなか体力を消耗するものと思っておいたほうがよいでしょう。

富士山の火口方面。雪渓が見える

まるで異世界。あまりほかの山では見られない雰囲気です。

お鉢巡りを巡る方向は自由です。

お鉢巡りは距離も長く、道がいくつかある

お鉢といっても意外とアップダウンがあり、それなりに時間を使います。下山の時間を意識したほうがよいですよー。

さて、富士山で一番標高が高い場所の剣ヶ峰。ここが3,776mです。

昔、富士山測候所があった場所には、現在、富士山特別地域気象観測所という施設があります。

私も単独登山女子と名乗っていますが、単独行というと……日本の登山界における、単独行のパイオニアとも言える加藤文太郎さんが富士山での山行で宿泊を断られたエピソードを持つのが富士山測候所であり、さらに加藤文太郎さんをモデルにした小説『孤高の人』(新潮社)の著者、新田次郎さんが中央気象台に勤務していた頃、交替勤務のため富士山測候所に向かう途中、実際に加藤文太郎さんと出会っているのです〜〜!!

と、山岳小説ファンならちょっと行ってみたい場所なんですよ。

ちなみに、昔は女性のハイカー人口はとっても少なかったんだそうです。いまや、こうして私のように女性ひとりの単独行ができていることのありがたさ、そして単独行というスタイルを築き上げた加藤文太郎さんに想いを馳せて、下山に向かいます。

富士山名物 下山の須走でザクザク降りる

下山直前でも、足元はもうザラザラとしている

須走ルートで気をつけたいことは、途中の吉田ルートと分かれる八合目「下江戸屋(江戸屋)」の分岐です。

下山場所が変わってしまうため、注意が必要!

ただ、分岐点ではアナウンスが流れて「間違えるなよ感」がたっぷりなので、大勢でワイワイ、(うわ)の空で歩いていたりしなければ、ほぼ間違えることはないのでは……と思います。

砂利でできた須走ルート

須走ルートは、軽い石の砂利でできているため、足が埋まってうまく歩けません。そのうえ石が靴の中に入り込みます。その都度、靴から石を出していると下山に相当な時間がかかってしまうため、ゲイターは必須です。

注意すべきは、ザクザクと走る、滑るように降りていきますが、突然砂利が減るところがあります。勢いづいて走るように下山すると、足首を捻挫するなど怪我のもとです。注意深く下山しましょうねー!

下山したあとは、須走口にあるお茶屋さんで、きのこづくしのランチをがっつりいただきました! お腹が空いていたので写真とか撮りませんでした!

富士山登山は、私にとってはターニングポイント的な大切な山です。登り方を知らなかった初心者の頃よりも、年をとった今のほうが疲れがひどくなく、あらためて自分の技術力がUPしたことも実感できました!

ちなみに、下山の翌日は有給をとらずに通常出勤しました(ほかの山に行く時にとっておきたいし……!)。

2019年、富士山は9/10に閉山しました。

来年にチャレンジするつもりで、いまの秋のシーズン、低山や身近な山から少しずつ挑戦するとよいのではないでしょうか。必要な装備も揃えられますし、来年の夏前には基礎知識、テクニックも身についていると思いますよ。

文・構成 井上綾乃

関連サイト

くらげバンチ 山と食欲と私

富士登山オフィシャルサイト

http://fujisan-climb.jp/basic/

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「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長
松村 正樹

著者プロフィール

日々野鮎美

ひびの・あゆみ 27歳、会社員。漫画『山と食欲と私』の主人公。「山ガール」と呼ばれたくない自称「単独登山女子」。美味しい食材をリュックにつめて、今日も一人山を登ります(たまには友人や同僚と登ることもあるよ)。

イラスト・監修 信濃川日出雄

しなのがわ・ひでお 新潟県出身。北海道在住。2007年のデビュー以来、ジャンルを問わず多岐にわたって執筆し、『山と食欲と私』が累計100万部を突破、大人気シリーズとなる。現在もくらげバンチで同作を連載中。

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