シンプルな暮らし、自分の頭で考える力。
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安田菜津紀の写真日記

2019年11月22日 安田菜津紀の写真日記

「自分さえよければ」ではなく NPOを立ち上げてみて

著者: 安田菜津紀

10月、トルコが侵攻したシリア北部の学校。家を追われ、避難した子どもたちが身を寄せていた。

 10月、私や同じくフォトジャーナリストの佐藤慧、そして仲間たちと共に、NPO法人Dialogue for Peopleを立ち上げました。ジャーナリズムや写真だけではなく、法学や音楽、様々な専門性を持つ理事メンバーと手を携え、ジャンルを超えて広く発信をしていこうという試みです。
 私たちの仕事は日ごろどんなことをしているのか、伝わりづらいところもあるかもしれません。国内外の被災地や紛争地の取材活動をこれまでも続けてきましたが、基本的にはどこかから依頼を受けて現地に赴くのではなく、取材費などは全て持ち出しで現場へと向かいます。NPOとなり、多くの方々がサポーターとしてこのぎりぎりの取材活動を支えて下さっています。その支えがあるからこそ、「一人で現場に赴いているのではない」という心強さがあります。ただ、NPOを発足させたのは、私たちが今の取材活動を持続させるためだけではありません。
 これまで多くの若い方に、「自分も同じような活動がしたい」という相談を受けてきました。けれども昔のように、媒体が取材費を出してくれたり、発表先がふんだんにあるわけでもありません。「先が思い描けない」「経済的に自立していけない」と、伝えたい思いを持ちながらもその道を諦めてしまう若い世代を見て、もどかしく思ってきました。もはやそれは彼らの気概ややる気のせいにして切り捨てられる問題ではありません。私たちがどう、持続できる環境を築けるのかにかかっているのです。だからこそ「自分さえよければ」ではなく、次の世代にバトンを渡せるような場や仕組みを残したいと思ったのです。その答えの一つが、多くの方々に伝える活動を支えてもらうこの団体でした。
 「自分さえよければ」はあらゆる問題に通じる言葉です。気候変動や紛争、どれも目先の利益を追いかけることによって、次の世代にそのつけを回してしまいます。そしてそこに、その問題を伝える人々がいなかったとしたら、最も虐げられる市民の声を届ける術は限られてしまうでしょう。 次世代に渡すのであれば、ポジティブなバトンを。そんな思いをこれからも活動に込めていきたいと思います。

6年間続けてきた、高校生たちとの東北スタディツアー。次の世代にしっかりと、バトンを渡していきたい。
君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

安田菜津紀

2016/04/22発売

シリアからの残酷な映像ばかりが注目される中、その陰に隠れて見過ごされている難民たちの日常を現地取材。彼らのささやかな声に耳を澄まし、「置き去りにされた悲しみ」に寄り添いながら、その苦悩と希望を撮り、綴って伝える渾身のルポ。

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考える人とはとは

 はじめまして。2026年7月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、松本太郎と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。

 2002年7月4日、季刊誌「考える人」が創刊されました。

 目次には当代随一の執筆陣がずらりと並び、B5判240ページの誌面の隅々から知の香りが立ちのぼってくるかのようでした。

 当時、入社3か月の営業部員だった私は、見上げるような思いで手に取り、発売日には編集長の松家仁之さんと創刊のご挨拶のために書店にうかがいました。

 まだ書店訪問にも慣れておらず、編集長ともほぼ初対面の中、次のお店の約束の時間に間に合うだろうかと時計ばかりが気になって、終始、そわそわしていました。そんな私に松家さんがやわらかな笑顔で接してくれたこと、そして、新雑誌の門出を祝うようなすっきりと晴れた一日だったことを覚えています。

 あれから四半世紀が過ぎ、ウェブマガジンとして衣替えした今でも、創刊時に掲げられた「Plain living, high thinking(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という言葉は古びていません。AIに尋ねれば瞬時に答えが返ってくる時代だからこそ、それらしい言葉に飛びつくのではなく、自分の頭で考え、心の声に耳を澄ませることの大切さは増しているように感じます。

 創刊号には、養老孟司さんのロングインタビューが掲載されています。養老さんはその中で、恩師である中井準之助先生の口癖だった「人の心がわかる心を教養という」という言葉を紹介しています。

 読んだ瞬間に立ち止まり、さまざまな思いが湧き上がってくるような文章に、楽しみながら出会える場であり続けたいと思っています。

「考える人」編集長
松本太郎

著者プロフィール

安田菜津紀

1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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