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安田菜津紀の写真日記

2018年2月2日 安田菜津紀の写真日記

人間である限り、争いはなくならないのか

著者: 安田菜津紀

シリアの人々が避難生活を送る難民キャンプ。遠くの雪山から吹き込む風が、冬を一層厳しいものにする。(イラク・アルビル郊外)

 上越から東京への帰り道。どこまで南下しても真っ白に染まった景色が広がり、今自分がどこにいるのかわからなくなるほどだった。柔らかな雪に包まれた街を見つめながら、ふと10年前に訪れたシリアの寒空が脳裏をよぎった。“中東”と大きく括られると暑さを想像する人が多いかもしれないが、とりわけ北の街はこの時期、大雪に見舞われることもある。

 道端に積み上げられた雪が少しずつ解けだした日、シリアの北部ではトルコの越境攻撃によって5000人以上が避難生活を送っていると報じられた。首都郊外の地区で、再び化学兵器が使用され、民間人が犠牲になったというニュースも舞い込む。隣国イラクでも独立投票後の混乱で、救援の手が届かないのだと知らせがあった。本当の意味での温かな“春”はまだ遠いのだろうかと、もどかしさばかりが募る。

 ある時、爆撃に見舞われた街での取材を終え、私は思わずイラク人の友人にこう尋ねてしまったことがある。

 「人間である限り、争いはなくならないのかな」

 彼は少し考えた後、静かに私にこう語った。

「人間だからじゃない。どうせ人間はそんなものだって諦めてしまう、人の心がそうさせるんだ」

 人間だからこそ、諦めたくない。彼の言葉を思い出す度に、そう思える。温かな春は待つのではなく、私たちの手で築くものなのだ、と。

キャンプで電気が使える時間が限られ、各家庭に配られる支援も年々減らされてきた。凍える日は外で火をおこし、紅茶で体を温める。(ヨルダン・ザータリ難民キャンプ)
君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

安田菜津紀

2016/04/22発売

シリアからの残酷な映像ばかりが注目される中、その陰に隠れて見過ごされている難民たちの日常を現地取材。彼らのささやかな声に耳を澄まし、「置き去りにされた悲しみ」に寄り添いながら、その苦悩と希望を撮り、綴って伝える渾身のルポ。

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考える人とはとは

何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

“Plain living, high thinking”(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長
松村 正樹

著者プロフィール

安田菜津紀

1987年神奈川県生まれ。Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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