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安田菜津紀の写真日記

2019年7月19日 安田菜津紀の写真日記

葬儀ではヒールの高い靴を履くのが”常識”?

著者: 安田菜津紀

色とりどりの花。何を美しいと感じるのかも、そのあり方も、多様でいい。

「葬儀のとき、女性であれば5センチくらいのヒールが常識的でしょう」。私も知人から面と向かってそういわれたことがある。#KuToo というハッシュタグで、ハイヒールやパンプスを強制的に女性に着用させる職場環境などを改善するためのムーブメントが起きた。それに対して「社会通念だから」「常識だから」という反論が思っていた以上に目についた。「女性差別と結びつけるのは間違っている」という言葉も見受けられるものの、こうした強制には「女性の美しさはこうあるべき」という押し付けが見え隠れすることもある。
 私は大好きな義理の父の葬儀の時、黒くてフォーマルに見えるけれど、平たい靴で出席した。足が「痛む」ことに気を取られていては、「悼む」ことに全力を傾けられなかったと思う。ちなみに私は講演などの時も平たい靴だ。パフォーマンスはその方がいい。
 靴とは切り口は違うものの、この動きの中で思い出したことがあった。私の通っていた高校には、「コートを着ないとマフラーをしてはいけない」という謎の校則があり、先生たちに理由を尋ねても「校則だから」の一点張りで、まともな答えを返してもらったことがなかった。体のどこがどう冷えやすいのか、温度調整のし方は人によって違う。コートを着るほどでもないけれど、首元が寒いな、と思うときは私もあったものの、校則を変えようと声をあげたわけではなかった。
 あの時は疑問に思いつつも受け流していたことが、今となってはやっぱりおかしい、と思うことは多い。それは正しい見方を身につけた、というよりも、より多様な見方ができるようになり、疑問を投げかけてもいいんだと気づけた、ということなのかもしれない。
 「常識だから」「社会通念だから」という説明しかできなければ、思考は止まってしまう。生きづらさはそんな、「固定化」からも生まれてくるはずだ。今まで“普通”とされてきたもので不利益を被ったり、傷ついてきた人たちがいるのであれば、その「普通」のレッテルの下に隠れていた声に耳を傾けてみたいと思う。

陸前高田市、民宿志田にて。大人たちも、その子の体に合った、その子が動きやすい靴を選ぶ。
君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

安田菜津紀

2016/04/22発売

シリアからの残酷な映像ばかりが注目される中、その陰に隠れて見過ごされている難民たちの日常を現地取材。彼らのささやかな声に耳を澄まし、「置き去りにされた悲しみ」に寄り添いながら、その苦悩と希望を撮り、綴って伝える渾身のルポ。

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何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

“Plain living, high thinking”(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長
松村 正樹

著者プロフィール

安田菜津紀

1987年神奈川県生まれ。Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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