考える人

シンプルな暮らし、自分の頭で考える力。
知の楽しみにあふれたWebマガジン。
 
 

安田菜津紀の写真日記

仮設住宅の中庭にて、両親、祖父母と。

 北の地にようやく訪れた、春。新しい一歩を踏み出す季節だ。山肌に微かに溶け残った雪が見える陸前高田の街にも、柔らかな風が吹き始めていた。

 「ほら、顔固いぞ!」とからかうと、ファインダー越しの少女は照れくさそうにほほ笑んだ。真新しい中学校の制服がまぶしく映る。「あの震災が起きた当時はまだ一年生だったのか……」。シャッターを押しながら、5年前のあどけなかった表情が脳裏に浮かんだ。

 この4月に中学校の新一年生となった、佐藤あかりちゃん。両親と妹、弟の5人、仮設住宅暮らしが続いている。学校の校庭を使って思い切り駆け回っていたのは最初の1年だけ。その後は小学校にも中学校にも、仮設住宅が並んだ。あの日から彼女たちはずっと、“非日常”を生きている。けれども彼女はそれを、ただ“悲しい”だけのものにはしなかった。

 昨年の9月、大雨で仮設住宅の住人たちが体育館に避難した夜があった。「避難の上にまた避難なんて…」と、方々から不安の声があがり続ける。そんなおばあちゃんたちに「大丈夫ですか?」「今、毛布持ってきますね」と率先して声をかけていたのはあかりちゃんだった。守られる側から、守る側へ。娘の成長を見つめる父、一男さんの目も、いつも以上に温かだった。

 あかりちゃんの通う中学校はもうすぐ、海の見える丘の上に新校舎が完成する。こうして日常への道のりを一歩一歩進んでいく彼女の姿に、この街の未来が映っている。

2011年、2年生だったあかりちゃん。弟の悠也くんをよく背負って遊んでいた。
君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

安田菜津紀

2016/04/22発売

シリアからの残酷な映像ばかりが注目される中、その陰に隠れて見過ごされている難民たちの日常を現地取材。彼らのささやかな声に耳を澄まし、「置き去りにされた悲しみ」に寄り添いながら、その苦悩と希望を撮り、綴って伝える渾身のルポ。

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Webでも考える人とはとは

何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

“Plain living, high thinking”(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長
松村 正樹

著者プロフィール

安田菜津紀

1987年神奈川県生まれ。Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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