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おかしなまち、おかしなたび 続・地元菓子

2019年8月1日 おかしなまち、おかしなたび 続・地元菓子

おかしなたび

飯田 その2

たびのきほんはあるくこと。あるいてみつけるおかしなたび。

著者: 若菜晃子

塩ようかんは、山国で塩が貴重品だった長野県内でよく作られているようかんです。初めて食べたときは、しょっぱいようかんなのかと身構えましたが、薄い小豆色のようかんは甘みを塩がほどよく抑え、上品な味わい。ようかんが苦手な方もぜひ。
小麦粉の薄焼であんを巻く江戸風の長命寺、道明寺粉であんを包む上方風の道明寺、地方によって形が異なる桜餅の分布状況を長年調査してきましたが、飯田ではなんと三角形の桜餅に遭遇。他にも長命寺を焼桜と称す店もあり。新しい……。
美しいカーブを描く鉄筋コンクリート建築は昭和四(1929)年建築の市立追手町小学校。飯田城の出丸跡に建ち、今も現役なのがすばらしい。建築家の黒田好造は県内の中学校や図書館なども手がけましたが、現存するのは市内の二作品のみ。
商店街のはきもの店に並ぶのは大量の草履。下駄ではなく草履が多いのは、飯田がかつては養蚕の地で、飯田紬の産地でもあるからでしょうか。靴ではなく、おはきものといういい方が、失われつつある言葉のゆかしさを思い出させてくれます。
飯田の街は河岸段丘上、通称丘の上にあり、江戸時代に飯田藩が治めていた頃からの街のつくりが現在に継承されています。飯田線も市街地をぐるっと迂回。こういう地形は来て見て体験してみないと、実感として残らないもの。
『風月堂』のおはぎは、あんこ、ごま、きなこの三種類で、一個九十円。こんなふうにその日の手作りで、気取りのないお店が近所にあったら、時々寄って買っちゃうな。他店でもふだんづかいの和菓子はだいたい九十円。十円のおつりが嬉しい。
おたぐりという料理をご存じですか。馬のもつ煮で、かつて馬の産地だった飯田の郷土食です。伊那谷は山間地のため、たんぱく源の補給に苦心し、昆虫食も残る地域。勇気を要する未知なる食がありすぎて、いまだトライできていません。
赤飯万十を買った『一不二』では洋菓子も充実していました。カスタードはシュークリーム、生クリームはシュアラクレームと区別し、おもたせ用の大箱入りシューが迫力でした。長野は松本でも箱入りシューがお土産の定番。これも県民性?
蛇行する飯田線には下山ダッシュなる地元の風習があって、市街地を挟んで最短距離にある下山村駅と伊那上郷駅の間約2㎞を、乗り遅れた学生などが走りに走って同じ電車に飛び乗る芸当を演じるとか。今日も誰かが走っていたかもしれないね。

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考える人とはとは

何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長
松村 正樹

著者プロフィール

若菜晃子

1968年神戸市生まれ。編集者。学習院大学文学部国文学科卒業後、山と溪谷社入社。『wandel』編集長、『山と溪谷』副編集長を経て独立。山や自然、旅に関する雑誌、書籍を編集、執筆。著書に『東京近郊ミニハイク』(小学館)、『東京周辺ヒルトップ散歩』(河出書房新社)、『徒歩旅行』(暮しの手帖社)、『地元菓子』『石井桃子のことば』(新潮社)、『東京甘味食堂』(本の雑誌社)、『街と山のあいだ』(アノニマ・スタジオ)他。『mürren』編集・発行人。

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