「エッセイ」一覧
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カンボジアと日本、「出会う」という架……
今でも目を閉じれば、昨日のことのようによみがえる風景がある。土埃に霞んだ赤土の道、所狭しと並ぶ果物や魚の匂い、そして裸足で駆けまわる子どもたち。15年前、私が初……
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なのに俺はアメリカへゆくのだ(1)
そもそも俺はアメリカに憧れなど持っていなかった。太平洋戦争における日本の敗戦が完全に見えていたにもかかわらず広島と長崎を原子爆弾の実験場にし、その後は世界がな……
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四十六 反省と後悔
小林先生には、人口に膾炙(かいしゃ)した名言がいくつもある。「批評するとは自己を語る事である、他人の作品をダシに使って自己を語る事である」(「アシルと亀の子Ⅱ……
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心臓へたっちゃってますけど大丈夫 その6
DAY 12 術後八日目 ペースメーカーに繋がれていた青いコードの束がついに抜かれ、体外式ペースメーカーが外された。お腹から飛び出していたコードはとても邪魔だったの……
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四十五 科学技術と道義心
毎年八月になると、小林先生と湯川秀樹さんとの対談「人間の進歩について」(新潮社刊「小林秀雄全作品」第16集所収)を思い出す。湯川さんは京大教授を務めた理論物理学……
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そしてアメリカへ
大学3年の12月にギター部を退いた俺は、その後の1年を動物心理学者としての修行に邁進し、カナリアが短調と長調の区別が出来ることを示す研究を卒論としてまとめた。研……
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『珈琲屋』という生き方
「“伝説”とか“レジェンド”とか言われると、ちょっとねえ……」 「大坊珈琲店」店主の大坊勝次さんが、決まりが悪そうに下を向き、自分の手をじっと見ている。 ご本人はそう……
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四十四 素読という鍛錬
小林先生は、鍛錬ということもよく言われた。天才には必要ないだろうが、僕のような凡人には鍛錬が要る、何事も鍛錬しなければだめなのだと言って、音楽、絵画、骨董と、……
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心臓へたっちゃってますけど大丈夫 その5
DAY6 ICUから一般病棟へ 看護師さんたちに両脇を抱えられ、一気にベッドから立ち上がった。管やコードが束になって体からぶら下がっているというのに、予想以上に体は動……
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四十三 歌会のこと
前回お話しした「小林秀雄に学ぶ塾」は、「小林秀雄に学ぶ塾」である、「小林秀雄を学ぶ塾」ではない。つまり、小林秀雄についての文学的知識をあれこれ提供する塾ではな……
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羊ひっくり返しご飯
1993年、中東和平を話し合いで達成しようという合意が米国の仲介で成立し、調印式が米ホワイトハウスで行われた。中庭に特設された壇上で、イスラエル・ラビン首相とPLO……
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大学の講義で学んだこと
大学では最初の2年半はギター部、後の1年半は(実は事情があって2年になったが)研究室で過ごした僕であったが、そうは言っても大学生だったのでたまには講義に出た。た……
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四十二 上手に質問する
茂木健一郎さんに勧められ、七年前から「小林秀雄に学ぶ塾」を続けている。その塾で昨年五月、同人雑誌『好・信・楽』を出し始め、それが先月、創刊一周年になった。創刊……
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心臓へたっちゃってますけど大丈夫 その4
DAY 6 手術翌日の朝 「村井さん! 起きて~!」という声ではっと目が覚める。誰かが私の左手を握っている。目を開けると、エンジ色のシャツを着た女性が、私に呼びかけ……
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銃撃・略奪・チグリス川の鯉
2003年3月のイラク戦争で、私が泊まったバグダッドの宿は「サフィール」という小さなホテルだった。サフィールは英語でいえばアンバサダー、大使という意味だ。アンバサ……
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14 少年読書回想
もう30年以上もまえのことになるが、新宿ゴールデン街の酒場で飲んでいたら、同行の友人が、カウンターのとなりに坐った男となにかぼそぼそと話しはじめた。話のようすで……
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四十一 ホテルオークラの結界
今年も三島由紀夫賞、山本周五郎賞が決った。三島賞は古谷田奈月さんの「無限の玄」、山本賞は小川哲さんの「ゲームの王国」で、贈呈式は六月二十二日、ホテルオークラで……
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綾滝にて
丸太でできた小橋を渡り、足もとから目を上げて沢沿いの新緑の木々を見ると、その奥に白い滝が見えた。おや、あんなところに滝がある。まるで滝に呼ばれたかのような気さ……
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世界一うまい羊肉
アラブ世界で「肉」といえば、それはヒツジ肉である。 豚肉はイスラム教でタブーとされていて、食べることはおろか、触ることも許されない。私が住んでいたエジプトで……
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心臓へたっちゃってますけど大丈夫 その3
(前回の記事へ) DAY4 インフォームドコンセント 入院4日目。手術に向けて、慌ただしくなってきた。朝の9時過ぎに、白いユニフォームを着た、とても礼儀正しい青年が病……
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研究室というところ
生物心理学のゼミに入った俺は、秋葉原に通い詰めて偽アップルIIを作り、それで小鳥の条件付け実験を制御できるようにした。カナリアを使って長調と短調の聞き分けができ……
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四十 現代の迷信
ここ十年余り、小林先生について定期的に話してほしいという声を方々からかけてもらい、それが年々多くなってよろこんでいる。先月は、霞が関の若い人たちから「小林先生……
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01 まえがき
田んぼと畑と名ばかりの小川に囲まれた、田舎臭いだけの町の借家に生まれた私は、家の周りで何も考えずに虫を追い回し、川で魚をすくい、カエルの合唱に耳を澄ませて過ご……
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素敵な大人とはなんだろう
ラジオなどを通してニュースにかかわる仕事をしていることもあり、とりわけこの1カ月、あまりに慌ただしく、揺さぶられる情報がふりかかってくる日々だった。セクハラ問……
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MAIL MAGAZINE
とは
はじめまして。2021年2月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、金寿煥と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただきありがとうございます。
「考える人」との縁は、2002年の雑誌創刊まで遡ります。その前年、入社以来所属していた写真週刊誌が休刊となり、社内における進路があやふやとなっていた私は、2002年1月に部署異動を命じられ、創刊スタッフとして「考える人」の編集に携わることになりました。とはいえ、まだまだ駆け出しの入社3年目。「考える」どころか、右も左もわかりません。慌ただしく立ち働く諸先輩方の邪魔にならぬよう、ただただ気配を殺していました。
どうして自分が「考える人」なんだろう――。
手持ち無沙汰であった以上に、居心地の悪さを感じたのは、「考える人」というその“屋号”です。口はばったいというか、柄じゃないというか。どう見ても「1勝9敗」で名前負け。そんな自分にはたして何ができるというのだろうか――手を動かす前に、そんなことばかり考えていたように記憶しています。
それから19年が経ち、何の因果か編集長に就任。それなりに経験を積んだとはいえ、まだまだ「考える人」という四文字に重みを感じる自分がいます。
それだけ大きな“屋号”なのでしょう。この19年でどれだけ時代が変化しても、創刊時に標榜した「"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という編集理念は色褪せないどころか、ますますその必要性を増しているように感じています。相手にとって不足なし。胸を借りるつもりで、その任にあたりたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
「考える人」編集長
金寿煥
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