「思い出すこと」一覧
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バスタオル男の恐怖
吉祥寺の不動産屋で外国人(日本語を話さない人)に間違えられた俺だが、その後めでたく俺を住まわせてくれるアパートを見つけることができた。研究員としての勤務先は上……
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帰ってきた”異邦人”
俺の学位論文の審査は、1989年の2月に行われた。日本では昭和が終わり平成が始まったばかりだったが、アメリカの大学院生にとってはほとんど関係のないことだった。キン……
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電話しないでって言ったでしょ!?
東京滞在四日目。出版されたばかりの訳本(『黄金州の殺人鬼―凶悪犯を追いつめた執念の捜査録』)のプロモーションイベントも、この日が最後だった。編集者と待ち合わせ……
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黄色人種としての自覚
俺が住んでいた大学院生用のアパートの近所には、食材を買える店は何もなかった。自動車を買ったのはメリーランド大学に来て3年目で、それまでは、リュックを背負い、自……
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義父、倒れる
夏の盛りの八月中旬、その日は突然訪れた。いつものように子どもたちを送り出し、締め切り迫る原稿を必死に書いていたそのとき、義母から入電したのである。しかし、その……
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最終回 時間をかけるということ
これまでにも何度か書いてきたように、人生いかに生きるべきか、これが、六十年にわたって展開された小林先生の文筆活動の根本テーマであった。だが、それは、けっして先……
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面倒くさい女
たぶん他人からすれば些細なできごとに対して過剰に気に病むようになってしまった私は、そんな些細なできごとで誰かを傷つけることがないように、常に必要のない配慮をす……
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スーザンを探して
前回は、トム・ロビンズの小説をスーザンに貸したところまで語った。トム・ロビンズの小説は日本ではほとんど知られていないが、少なくとも2つは翻訳されている。「カウ……
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五十九 日本の風景
前々々回、小林先生が奈良の大和三山を愛でて、「『万葉』の歌人等は、あの山の線や色合いや質量に従って、自分達の感覚や思想を調整したであろう」と書いていたことと、……
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人生も翻訳のように
本来であれば四月の末に仕上がっているはずだった訳書の仕上がりが遅れてしまい、ようやく入稿することができたのが七月の初めごろだった。最後は必死の作業でなりふり構……
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不機嫌なスーザンと仲良くなるには
ボブの研究室で1年半が過ぎた頃だった。トムは相変わらず小さないたずらを周囲に仕掛けながらも、着実に研究を進めていた。僕も英語がまあまあ通じるようになり、小鳥の……
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五十八 「ひろみ」にて
天ぷらの「ひろみ」は、JR鎌倉駅の鶴岡八幡宮側出口を出て小町通りに入り、すこし行った左手にある。今では雑誌、テレビ、ラジオ等で何度も紹介され、地元はもちろん全……
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土砂降りの雨の朝
土砂降りの雨が降っていたので、夫を車で駅まで送り、次は息子たちを送り出さねばと急いで家に戻っているときのことだ。国道の真ん中に、大きな亀がゆっくりと歩いている……
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五十七 常識について
小林先生のことを聞かせてほしいという声を方々からかけてもらい、北は仙台から西は広島まで、十指に余る会場を定期的にお訪ねしているが、広島の場合は毎回、世話役のY……
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そして俺の指導教員、ボブ・ドゥーリング ……
さて、ボブのスケベ話を続けよう。ボブは年に1度、集中講義のためデンマークの大学に行っていた。以下は、ある日デンマークの同僚(ラーセン〔男性〕)とボブが夜中に急……
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ごめんね、藁科さん
私の心のなかに長い間住み続けている少女がいる。いつも静かに佇んでいる。名字は藁科(わらしな)さんで、下の名前はどうしても思い出せない。柔らかそうな美しい栗色の髪……
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そして俺の指導教員、ボブ・ドゥーリング ……
これまでメリーランド大学における俺の恩師たち(中にはハチャメチャなのもいたが)を紹介してきたわけだが、そろそろ俺の指導教員、ボブ・ドゥーリングについても紹介し……
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五十六 小林先生と「萬葉集」
平成の世から令和の世になった。新元号「令和」は、「萬葉集」の巻第五に見える「梅花の歌三十二首并(あは)せて序」のなかの「序」の一節が出典だという。 ――于時初春令……
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五十五 頭の良し悪しとは
小林先生は、会うといきなり、言おうとすることの結論を、結論だけを、ポンと言われることがよくあった。あの日もそうだった。お宅を訪ねて応接間に通された私に、あの日……
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シーガル先生の呪い
俺のいたメリーランド大学心理学研究科では、社会心理学か産業心理学かどちらかを履修せねばならなかった。社会心理学のほうが少しは基礎的であろうと思い、そちらを履修……
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五十四 学習と学問のちがい
今年もまもなく、入試の時節に句切りがつくようだ。受験戦争に勝利を収め、四月からは大学生となる諸君にまずお祝いを申し上げ、そのうえで訊いてみたい、これまで諸君が……
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アフリカ砂ヘビの脳
俺はメリーランド大学カレッジパーク校に大学院生として1983年の夏から5年半ほど留学していた。最初の3年ほど、非常によく勉強した。浪人時代、代々木ゼミナール原宿校……
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研究室での暮らし
米国メリーランド大学の大学院生の暮らしは概ね地味である。講義はきちんと履修せねばならない。1科目でもDがつくと放校処分である。実は俺は2年目の講義でDを喰らって……
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五十三 我慢だよ、我慢だよ
今年も、先生の命日が近くなった。先生が亡くなったのは、昭和五十八年(一九八三)三月一日だった。以来、毎年、祥月しょうつき命日にお墓参りをされる先生の長女、白洲……
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MAIL MAGAZINE
とは
はじめまして。2021年2月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、金寿煥と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただきありがとうございます。
「考える人」との縁は、2002年の雑誌創刊まで遡ります。その前年、入社以来所属していた写真週刊誌が休刊となり、社内における進路があやふやとなっていた私は、2002年1月に部署異動を命じられ、創刊スタッフとして「考える人」の編集に携わることになりました。とはいえ、まだまだ駆け出しの入社3年目。「考える」どころか、右も左もわかりません。慌ただしく立ち働く諸先輩方の邪魔にならぬよう、ただただ気配を殺していました。
どうして自分が「考える人」なんだろう――。
手持ち無沙汰であった以上に、居心地の悪さを感じたのは、「考える人」というその“屋号”です。口はばったいというか、柄じゃないというか。どう見ても「1勝9敗」で名前負け。そんな自分にはたして何ができるというのだろうか――手を動かす前に、そんなことばかり考えていたように記憶しています。
それから19年が経ち、何の因果か編集長に就任。それなりに経験を積んだとはいえ、まだまだ「考える人」という四文字に重みを感じる自分がいます。
それだけ大きな“屋号”なのでしょう。この19年でどれだけ時代が変化しても、創刊時に標榜した「"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という編集理念は色褪せないどころか、ますますその必要性を増しているように感じています。相手にとって不足なし。胸を借りるつもりで、その任にあたりたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
「考える人」編集長
金寿煥

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